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第十一幕

街の中心にある要塞にルークは着いていた、途中に予想していた妨害がなかったため少し拍子抜けしていた。

「何はともあれ・・・行くか」

そしてルークは要塞の中へ入っていった。

要塞の中は全くの無人で無用心だとも思ったが同時に罠があるかもしれないという不安が現れてきた。

要塞は色々な隔壁が緊急時の為下りており下手に暴れるよりかはこのまま進もうとほぼ一直線に進んでいった。

進んでいくと少し大きめの部屋に着いた、それはまるで闘技場と呼ばれるような円形の部屋だった。その部屋の真ん中に一人の男が立っていた。男を見たルークは全身が強張り緊張した様子でごく自然に呟いた。

「六之神・・・『暴君』グラウス・・・。」

次の瞬間グラウスとルークが同時に詠唱をする。

「影よ、舞え!!」

土人形ゴーレムの豪腕」

ルークの足元から数本の影の針がグラウスを襲おうとしたが突如床から出てきた巨大な土の腕に握りつぶされてしまった。

「まだだ・・・まだこんなものでは足りないぞ魔王っ!!もっと闘争を殺意を本能を俺に感じさせてみろっ!!」

いきなり叫んだグラウスに唖然としたルークだったがグラウスの二つ名の理由を思い出したので思わず頭が痛くなった。

「そんなに戦いが好きならお仲間とやってろ・・・俺は忙しいんだっ!!」

ルークの声に答えるように握りつぶされた影が脈打ち土の腕を壊し一つに交わり螺旋状の針へと変わる。針は高速回転をしながらグラウスを襲った。

「土より石を石より岩を岩より山をっ!!」

次の瞬間部屋全体が揺れ、部屋中にひびが入り要塞が崩れた。凄まじい轟音とともに先ほどまで要塞があった所に小さい山が出来ていた。

「もう終わりか?魔王よ・・・しかし要塞に兵士がいないことを不思議に思わないとは愚か者だな」

出来上がった山の頂上に笑みを浮かべたグラウスが立っていた。

その時瓦礫の一つが動いた、と同時に濃厚な殺気と呟くような声が聞こえる。

そして現れたのは黒い球体外壁が剥がれる様に落ち、その中には小さい声で呟くルークがいた。

「貴様に一つ聞く・・・リーンと言う女の子はしっかり非難させたんだろうな?」

願うような声でルークはグラウスに聞いた。するとグラウスは笑みを浮かべながら答えた。

「兵士以外はここで全員殺す計画だ。」

その言葉を聞いた瞬間先ほどまで漂っていた殺気が消えた。そしてルークにも変化が現れた。

涙を流しながら狂うように笑っている、その光景は万人が狂人と呼ぶような光景だった。

「あはっ、あははははっ!!」

天を仰ぐように空を見上げルークの動きは止まった。

「あまりの衝撃に狂ったか・・・まあいい、狂った者など興味はない・・・ここで死ね」

冷淡な言葉とともに山が先ほどの巨大な腕のような形に変わっていく、そして拳を固めて巨大な岩の拳がルークを襲った。

「死神は歓喜し神々は逃げまとう、来い呪われし剣」

その詠唱は岩の拳が襲うまでのたった一瞬という速い詠唱だったが、グラウスにはその一言一言が鮮明に聞こえた。

そして岩の拳に黒い閃光が貫通しバラバラに崩れ落ちた。グラウスはその光景を驚きの表情で見つめた。

「何年ぶりだろうな、魔剣を使うのは・・・リーンが使うなっていった時以来使ってなかったからな・・・でももう使っても良いよなリーン」

ルークの姿は黒衣ではなくルークの家の地下にあった漆黒の鎧と逆十字のネックレスをかけた姿に変わっていた。そしてその手には黒い刀身の剣が握られていた、その黒い刀身には四つの紫の小さな玉がついていた。

「くっくっく・・・本当に面白いな・・・さあ心行くまでこの闘争を楽しもうぞっ!!」

そしてグラウスは詠唱を始める

「地底より出でよ!!大地の巨人よ!!」

そして大地に地割れが起き地底から岩の巨人が現れた。ルークは岩の巨人に向かって行き魔剣で貫こうとした、だが魔剣は固い岩の巨人に弾かれた。

「そんな剣など通用せぬわっ!!」

そう言い放ちながらグラウスは岩の巨人で攻撃を放った、その巨体に似合わない岩の巨人のタックルのスピード、ルークは避けることが出来ずまともにタックルをくらった。

軋む体中の骨の音が頭の中で反響し口からは危険な位の量の血が吐き出された、だがそれでも一命を取り留めていられたのは、漆黒の鎧のおかげのようだった。

ルークは魔剣を杖代わりにしながら立ち上がり、今まで片手で持っていた魔剣を両手で持った。魔剣自体両手剣らしく柄の部分が少し長めに出来ていた。

「見せてやるよ・・・魔剣こいつの能力を・・・。」

ハッタリだと思ったグラウスは岩の巨人に攻撃を命じこれで勝負が終わると思い背を向けた、この時のグラウスは気付かなかった。この慢心によって自分が負けることを・・・。




少し目を離した事が戦場では致命的なミスになることをグラウスは脇腹に負った大きな傷を見ながら思い出していた。

正気を取り戻した今でも何が起きたのか分からなかった、分かることといえば巨大な何かが岩の巨人を破砕し自分を掠めたことぐらいだった。

掠めただけで左の脇腹が抉られた・・・直撃をしたらと考え岩の巨人の状態を思い出し少し冷や汗が出した、そして自分にここまでの怪我を負わせた若い青年に賞賛の眼差しを送った。

ルークは無理に体を動かしたので息も絶え絶えだった、だがまだ決着は付いていなかった。体に無理矢理命令を下しグラウスに歩み寄る、ルークの心にあったのはリーンを殺したグラウスへの復讐心だけだった。

「なかなかやるな・・・魔王」

はっきりとした言葉でグラウスが喋ったのでルークは驚いた、ルークが傷つけた脇腹の傷はなくなっていた。

「馬鹿な・・・あの傷が回復しただと!?」

目を疑い驚いたルークだったが同時に自分の最後の時が来たと思った、だが次にグラウスの口から出た言葉にルークは唖然とした。

「なかなか面白かったぞ魔王よ・・・俺をここまで楽しませた褒美だ取っておけ」

そしてグラウスが指を鳴らすと同時に壊れた要塞の瓦礫が左右に分かれて片付き階段が現れる。

「この階段の入り口には物理結界が張ってある、瓦礫ぐらいでは傷つかぬほどのな」

「それはどういう・・・。」

ルークは、意味だと言葉を紡ぐはずが口がパクパクと魚のようになってしまった。

ルークの目線の先には、同い年位の女の子が立っていた。ルークの目から涙が流れていた。そして涙を拭って少し涙に濡れた目を向けてこう言った。

「少し遅れたけど・・・迎えに来たよリーン」

そしてリーンと呼ばれた女の子も目を潤ませて答えた。

「信じてたよ・・・ティアス」

だがリーンの顔が少し険しくなる、リーンの目線を負ってみると自分の手の方向にいっている事に気付き慌てて魔剣を隠した。

「こ、これは・・・。」

「ティアス、約束を破ったのね」

リーンの気迫に後ずさりするルークだったがリーンの気迫が消えていくのに気付いた。

「こんなに怪我をして・・・死んじゃったら元も子もないじゃない・・・。」

「ごめん」

数十秒沈黙が続き、その沈黙をグラウスが破った。

「良い雰囲気で申し訳ないが俺はそろそろ帰らせてもらおう・・・魔王・・・今回は負けたが次はそうはいかぬからな」

そしてグラウスは端に除けた瓦礫で巨人を作り出しそれに乗って何処かに行った。

「そうだリーン、ヘルとランスも来てるんだっ!!二人の所へ・・・うぐっ」

うめくと同時にルークは倒れこみ魔剣と漆黒の鎧は消滅し服装は黒衣に戻った。

「だ、大丈夫なの!?」

「平気だよ・・・少し休めば元気になる」

そしてリーン支えられるように二人の下へ行くと何故かランス一人がそこに座っていた、回りには襲ってきた魔法使い達の死体があった。

「あれ、ランスお前一人か?」

「ヘルは戦闘が始まるなり何処かに行っちまった。・・・それよりも俺はお前を何て呼べば良い?ティアスか?ルークか?」

「ティアスに戻る・・・放浪人ルークとしての仕事は終わった。これからはリーンを護る騎士のティアスとして生きていく」

「分かった・・・よろしくなティアス」

「ああ、改めてよろしく」

「んで少し話は変わるけど・・・これからどうする?」

「組織に借りを返すしかないだろ?」

「そう言うと思ったぜ」

二人が笑いあってると背後からヘルが現れた。

「おまたせぇ〜っ!!お姫様無事でよかったです!!」

「ヘルお前今まで何やってたんだ?」

「良くぞ聞いてくれましたっ!!闇系統の魔法使いを片っ端から不意打ちで倒してたんだよ!!」

とランスの問いにヘルは胸を張って答えたが、三人の視線が痛かったのは言うまでもない。

「そ、それよりこれからどうするか相談してたけどレーデンに行かない?」

「馬鹿言うなっ!!姫様や俺たちの国が奴等にどんな目に合わされたのか忘れたのか!!」

ランスの怒り様にビックリしたヘルだったがティアスにあんたはそれで良いの?と目で訴えた。

「俺は・・・できる事なら行きたい」

「ティアスまで何言ってんだ!?」

「ランス・・・レーデンは組織に狙われてる・・・組織に狙われた国がどうなるのか組織に入らなかったお前でも知らないはずじゃないだろ?」

「狙われてるのか?」

「ああ・・・あそこには世話になった皆がいる・・・だから行かせて欲しい」

そしてティアスは頭を下げた

「ちょ、やめろって・・・分かったから」

「リーンも良いか?」

「ティアスの思いを止めることは私には出来ませんから」

とリーンは笑って答えた。

「決まりみたいね・・・じゃあ一気にレーデンまで飛ばすけど良い?」

三人は頷いて答えた。

「続け続け何処までもっ!!私の影よっ!!道となれっ!!」

そして四人は影に吸い込まれていった。




グラウスは瓦礫の巨人を止めていた、脇腹からは血が滲み出ていた。

「土で応急処置をしたのはいいが・・・やはり完全には止まらぬか」

そして脇腹がボロボロと崩れ傷が露になる、先ほどまで脇腹の肉だったものは崩れると砂になった。

「ふぅ・・・他の奴等になんて言い訳をするか・・・。だがまさか世に存在する五つの神具以外にもあれほどの力を持った武器が存在するとは・・・魔剣と言っていたか?」

グラウスは重症にもかかわらず、珍しく考え事をしていた。

そしてそのままグラウスは目を瞑り意識を手放した。



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