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第十幕

「済んだのかい?」

ルークの背後から突如ヘルは出現し声をかける

「たった今済んだところだ・・・お前が言ったとおり別れの挨拶もちゃんとした」

少し悲しそうに先ほどまで皆がいたところを見る。

「後悔してないのかい?」

「後悔・・・か、無いと言えば嘘になるな、だけど俺にはどんな犠牲を払ってもやらないといけないことがあるからさ」

そして空に向かって願いを込める。

―――皆・・・死ぬんじゃないぜ―――

その時ポツンと地面に水滴が垂れる、ヘルがその様子を見て驚く

「ルーク・・・あんた泣いてるじゃないかっ!?」

「泣いてる?・・・そうか・・・いつの間にか護りたい者が増えてたんだな・・・俺」

ルークは少し懐かしそうに村を見て、涙を一瞬にして拭い険しい眼光になる。

「ランスは何処にいる?」

「ランス?ゲーテルの近くの森にあの後はずっと潜んでるって聞いたけどけど」

「そうか・・・居場所は分かるか?」

「そりゃ分かるけど」

「お前の得意技で移動させてくれ」

「はいはい・・・どうせ強制なんでしょ?それに味方はたくさんいるに越した事ないしね」

ヘルは手を地面に置いた。

「続け続け何処までもっ!!私の影よっ!!道となれっ!!」

唱え終わった瞬間ヘルの足元に穴が空く

「出来たよっ!!」

ルークは返事も無しにその穴に飛び込こんだ・

「なっ、礼ぐらい言いなさいよね・・・。」

文句を言いつつヘルもその穴の中に入る。




森の木の影から一人の青年が出てきた、

「ここがランスのいる森か」

あたりを見回すが誰の姿も見えない、その背後の影から続くように一人の女が出てきた。

「ルークっ!!先に行くともう送ってやらないわよ!!」

ルークはヘルを一瞥すると森の奥へと足を踏み入れた。

森独特の落ち着かせる空気が程よく気持ち良く、ルークは少し寝たくなった・・・だがルークは欲求を我慢し先へ進んでいった。

森を歩くこと数分前方に人の気配がしたためルークとヘルは身構えた・・・だが歩いてきた人の輪郭が見え構えを解いた。

「デカイ魔力が現れたからもしやと思ってきてみれば・・・やっぱりティアスか」

「その名前はリーンを助け出すまでは捨てた。」

「じゃあやっぱりルーク?」

「そうだ」

「でもまあ・・・何の因果か知らないが、俺たち三人の姫様の騎士が揃うなんて何事だ?」

「ランス・・・お前はヘルから何も聞いてないのか?」

そしてルークはヘルの方を見る、ヘルは目線をずらし合わせようとしない。

「で、何のようなんだ?」

「リーンの居場所がわかった」

ランスは絶叫しそうな勢いで狂喜した。

「本当かっ!!本当なのかっ!!でその場所はっ!!」

「この近くのゲーテルだ」

その言葉にランスは言葉を失う。

「嘘だろ・・・こんな近くに・・・」

そしてランスは二人に背を向けて何処かへ走っていく。

「何処に行くんだ?」

声が聞こえたのかランスは振り返って大声で答えた。

「助けに行くに決まってるだろ!?」

二人は急いで後を追った。




ゲーテルへと入るための門の数十メートル前に隠れるように三人は伏せていた。

「ゲーテルか・・・結界が張ってあるが・・・入れそうか?」

ランスの問いにヘルは首を振った。

「私の能力の弱点は一度見たことある場所じゃないといけないってことと影がある場所じゃないと駄目

ってことと外部から結界へ入れないことだから無理ね」

「ルークお前の影なら入れるんじゃないか?」

「無理すれば入れるかもしれないが・・・戦闘を考えるとやはり温存はしておきたい」

「そして俺は・・・短距離しか移動できないから無理と・・・じゃあ作戦は一つだな」

ニヤリと笑うルークとランス

「私は戦闘は殆ど専門外なんだけどなぁ〜・・・しかもあんた達がやろうとしている事を作戦とは呼ばないわ」

と頭を抱えるヘル

そして

「強行突破だ!!」

ランスが叫ぶとともに三人は門に走っていった。

門の前に立っている六人の兵士は自分達に向かって来る怪しい者たちを視界に捕らえた。急いで緊急の笛を鳴らそうとした一人の兵士を見てランスはニヤリと笑う。

「気付くのが遅すぎだ」

ランスが皮肉気に話すと同時にランスの影が地面から浮き六本に枝分かれし六人の兵士に伸びていく。

「あの世で後悔するんだな」

言葉か終わらないうちに六本の影の先が剣の形を成し六人の兵士の首を刎ねる。

「相変わらず凄いわね・・・無詠唱魔法なんて」

ヘルが感嘆するようにランスを見る。

「凄くねえよ・・・ヘルには長距離影移動っていう凄い技があるし・・・ティアス、いやルークなんて・・・規格外品だろ?」

「ルークは・・・そうね」

その時二人は会話に入ってこないルークが回りにいないことに気付く、そしてゲーテル内で黒煙が上がりで危険を知らせるサイレンがなる。

「ルークの奴・・・派手にやってやがるな」

「私たちも行きましょう」

そしてヘルとランスは中に入っていった。




十数人もの兵士達がルークを囲んでいた。だがその囲んでいる兵士達の目には逃げたいと言う言葉が語られていた。

「ま、魔王・・・。」

一人の兵士がその名を口にすると兵士達は一歩引いた。

「組織の幹部様が何故こんなことを・・・。」

一人の兵士が呟くように言った。

「だ、だがいくらあんたとはいえこのゲーテルの守護隊長のあの方には勝てないだろ?」

恐怖を噛み殺し笑顔を作る兵士

「そうだったな・・・人魔六神じんまろくじん六之神ろくのかみが居るんだったな・・・忘れてたぜ。」

ルークは渋い顔になり舌打ちをする。

「じゃああいつが出てくる前に仕事を済ましちまうかっ!!」

そして詠唱を始めるルーク、その詠唱を止めさせようと兵士達が一気に駆け寄る、だがルークの詠唱は早かった。

「断罪の鎌」

そして取り出した鎌を無造作に振るう。すると回りにいたはずの兵士達の上半身が消える、数秒の後空から赤い液体とともに上半身が落ちてくる。それら全て今まさに襲いかかろうとするような目を見開いた状態だった。

「俺の道はいつも血だらけなんだな・・・。」

そう呟くとルークは先を急いだ。

走っているとヘルとランスに会い合流をした。三人は街を抜けると少し開けた場所に出た。

「あはは・・・こういう場所ってよく敵が罠仕掛けてて囲まれるんだよな・・・。」

ランスが頭を掻きながら言うとルークとヘルは苦笑する。

走り出そうとした時三人が同時にその場から飛び退く、次の瞬間先ほどまで居た場所に炎弾や氷弾などが降り注いだ。すかさず持っていた鎌をルークは回転させながら投げつけた。すると何も見えなかった場所から十六人の魔法使いが現れ鎌を避けた。

「ヤバイな・・・こいつら俺らと同じ近接戦闘も出来る組織の魔法使いだ」

素早い動きを見て三人は頭を抱える。

「おいルーク・・・こいつらは俺とヘルに任せて、姫様の元に行け」

ランスが突然そんなことを言ったのでルークは唖然とする、がすぐに我に返り少し考えて短く言葉を紡ぐ。

「頼む」

そのままルークは魔法使い達の脇を抜けようとする、だが相手も黙ってみているはずがなくルークに攻撃をしようと詠唱を始めようとする。ところがランスの足元から伸びた影が魔法使い達を襲い魔法使い達は詠唱を中断し避ける。

「姫様とティアスの時を隔てた再開を邪魔する奴は・・・死んでも文句は言えないぜっ!!」

ランスの気迫が勢いを増すとともにランスの影が回りの影を吸収し大きくなり始める。

「見せてやるぜ・・・本当の影の恐ろしさって奴をな」

不適に笑みを浮かべてその場に立つ姿はまるで勝利を確信しているようだった。

「あらら、それ使うんじゃ私は必要ないわね?」

ヘルはそう言うと影の中に入って消えてしまった。

ランスの影は自分と同じぐらいだった影が五十倍ほどになっていた。

「行けっ!!」

ランスの掛け声とともに影から五十体の人型の物体が現れた、その手の部分には黒い剣が持たされていた。影によって出来た五十体の人型は生まれるとともに十六人の魔法使い達に突撃して行った。

魔法使い達は慌てた素振りを見せず詠唱をし魔法を放った。炎弾、氷弾、鎌風、雷撃が続けざまに放たれ轟音が轟いた。砂煙が巻き起こり何も見えなくなった。この隙に攻撃を仕掛けようとし砂煙に五人ほど突っ込んだ。その瞬間ランスの声が当たりに響く。

「勘違いしてないか?こいつらは人じゃない・・・影だぞ?」

同時に砂煙の中で何かが動き鮮やかな血飛沫が辺りに舞う。

砂煙が晴れると首がなくなったり腕が半分ちぎれたり胸の辺りに大穴が開いている影の人型が動き回っておりそのボロボロになった黒い剣で五人の魔法使いを解体していた。

「さてと・・・後十一人、次に死ぬのは誰だろうな?」

そして影の人型はまた走り出す。



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