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第九幕

村の端にある青々と生い茂った森のほぼ中心部分存在する泉の前にルークは座っていた。

手に持つ草がルークに吹かれることによって独特のハーモニーを森に響かせている、その音色に同調するように泉は波紋を作り出し、波紋は重なり合って泉の表面を走り回る。

不意にルークの演奏が止まる

「炎帝か・・・厄介事は嫌いなんだがな・・・。」

―――まあ、わざわざ厄介ごとに巻き込まれるように助けてしまった俺は馬鹿なんだろうがな―――

そんなことを思っているとルークの目の色が変わった。

「出て来い・・・何のつもりだヘル」

誰もいない森、だがそこから女の笑い声が聞こえる。

「フフフ・・・流石ねルーク、いえ魔王って呼んだ方がいいかしら?」

声と共に現れたのはルークより少し年上の二十代位の女だった。

「どちらでもいい、だが俺に会いに来るなんてどういうつもりだ?」

「簡単に言うと・・・組織からあなたの抹殺指令が出てるわけで」

「原因は?」

「ブルードラゴンの奇襲作戦を妨害したことと炎帝の作戦を妨害したからだって」

「ほぉ〜と言うことは、お前は俺を殺しに来たのか?」

ルークは殺気をヘルに向けて発した。

「ちょ、ちょっと早まらないでよ・・・。分かってるでしょ?私があんたに勝てないことも、私があんたの味方ってことも」

「まあな・・・で組織の内部情報を集めてきてくれたんだろうな?」

「あっ!!そうだ、朗報だよ!!お姫様の幽閉されている場所が分かったよ」

「本当かっ!!何処だっ!!何処にいるんだっ!!」

今までとうって変わりルークは目を輝かせた。

「東の『ゲーテル』っていう、組織が抑えてる国があるんだけど・・・そこの要塞」

「ふっふっふ・・・まさか組織がリーンを捕縛してたとはな・・・聞いた話だとレーデンが捕まえていたと思ったんだがな」

「私も驚いたよっ!!今までずっとレーデンの内部ばっか調べてたからね」

「つまり俺は組織に利用されてたって訳だ」

「そういうことになるんだろうね」

「ツケは倍にして返してやるぜ」

「その意気だよ」

「ありがとな」

いきなりそっけなく礼を言うルークにヘルは目を丸くする・・・そしてルークは何処かへ行こうとする。

「まさかとは思うけど・・・あんた単身でゲーテルに乗り込むつもり?」

「そのつもりだけど」

「あんたは馬鹿かっ!!ゲーテルにはあんたや私と同じ闇系統の魔法使いが五人も配備されていて、その他にも組織の魔法使いがわんさかいるんだよ」

「だからどうした?」

「どうしたって・・・どう考えてもあんた一人じゃ勝てないでしょ」

ルークは少し考え心底不思議そうに

「なんで?」

と答えた

「なんでってあんた・・・もういい・・・でも一応私もあんたと同じ姫様を守る三人の騎士の一人だから私も手伝わせてもらうよ」

ルークは少し嫌そうな顔をしながら了承した。

「じゃあ行くか・・・。」

「待って・・・あんたってホントに馬鹿だね、連中に何の挨拶もなしにいなくなっちまうのかい?」

「悪いのか?」

「悪いねっ!!急に消えちまったら誰だって心配するもんさ」

「そういうもんなのかなぁ」

「いつものあんたなら分かってるはずだよ?」

ルークは小さく「分かった」と言い影に消えていった。

「あの子も一途だねぇ・・・まぁしょうがない事なんだろうけどね」

そう言ってヘルもぼんやりと薄くなっていき消えた。




ルークが森から外に向かって歩いているとナイア達が正面から歩いてきた。

「あっ!!」

ナイアはまるで宝物でも見つけたかのように目を輝かせた。

一方ルークは漆黒に染まった瞳をあまり見せたくは無いらしく目を合わせようとしなかった。

「で・・・こんなところまで何のようだ?」

そっぽを向いたまま話し掛けるルークにシルフィが一瞬怪訝な顔を見せたがナイアがそれを抑える。

「折り入って頼みたいことがありまして」

「頼みたいこと?」

ルークは焦る心を抑えつつ最後まで話を聞くことにした。

説明が終わりルークは少し呆然とする。

何故なら自分が恐ろしい殺人者だというのに気にした様子も見せずに喋りかけてきたからだ、しかもその力を借りたいとまで言っている。

ルークは少し考え「分かった」と小さいが確かに返事をした。

その後ルークは他の生徒達も面倒だから一緒に送ると言い村の中央に集めた。

何の説明もされずに集められた生徒達はそれぞれが希望や不安を兼ね揃えた顔をしていた。

もはや代表のようになった六人はスレイスを無駄と知っていながら縄で縛り糸の切れた人形のような漆黒の黒衣の者たちを同じように縄で縛ってルークの前に立っていた。

「準備は良いみたいだな・・・こちらの呪文の準備も出来ている・・・いつでも送れるぞ」

「ではすぐに送って頂いて良いですか?」

「分かった・・・はぁっ!!」

次の瞬間そこにいるルークを除いた全ての者が暗転した影の空間の中にいた。

そしてシルフィとナイアとラウとルウとメイの頭の中にルークの声が響く。

「お前達の信じた道を進んでくれ・・・俺も俺の信じた道を進む」

気付いた時には緑色の草の上に他の生徒達と同じように横になっていた。

「ここは・・・城の中庭!?」

ナイアは気付くなり驚くように立った。

騒ぎを聞きつけたのか兵士達が周りを囲む

「賊がっ!!何処から入った!?・・・その顔・・・もしや姫様とアルマ様!?」

兵士達は二人に気付くと音よりも速く謝罪を述べた、そして一人の兵士が皇帝へ報告に行った。

数分も経たないうちに皇帝でナイアの父親でもあるゼルファーがやってきた。

「おおナイア・・・無事で何よりだ、それよりもどうやってここに入った?」

「そんなことよりも父上申し上げたいことがございます!!」

「何だそんなに改まって?」

「この国に三日後敵が攻めてきます」

「敵?敵とはどのようなものだ?」

「かなりの戦闘力を秘めた正体不明の組織の魔法使い達です」

「その情報は確かなのか?」

「信用できる情報です」

ゼルファーは少し考え一人の兵士に告げた。

「緊急の会議を収集する、至急散らばらせてある四大将軍達に連絡を取り城へ戻るように連絡をしろ」

兵士は一目散に外へ駆けて行った。

「忙しくなりそうだな」

とゼルファーは小さく呟いた

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