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ティーには秘密があります。  作者: 伊藤 深雪
ティーと学園の友達に先生 の章
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第7話 油断大敵です。

驚きました。ユリ姉様は学園中の有名人だったみたいです。天才と謳われるほどに優秀なのだとか。

やけに名乗るごとに驚かれるな、と思ったら公爵であることだけでなくユリ姉様の妹という部分も大きかったようです。

お姉さん子の妹であるティーとしては誇らしいですね。鼻が伸びて天狗になっちゃいそうです。


「ユリ・コーチャスさんの妹さんと同室なんて、会ってお話したりできるかしら? お友達とかになれたらどうしよう! 皆に自慢しなきゃ!」


「......。」


ティーがユリ姉様の妹と知って喜びまくっているのがこの部屋での年長さん、高等部1年生のアリア・クリンスさん。

相変わらず無言だけど、アリアさんの前だからか先程よりも表情の変化が大きい中等部1年生のフィーナ・カルオットさん。

名前はアリアさんが教えてくれました。慣れてきたら話して貰えるだろうとのことです。早く仲よくなりたいです。

今はアリアさんの様子に呆れているみたいですね。


「ユリねえさまが、あしたにゅうがくしきのあとにあそびにくるっていってました。」


アリアさんの瞳がキラキラです。フィーナさんも驚いてるみたいです。


「きゃー、本当!? どうしよう、なに着よう。ユリ・コーチャスさんはどんな服を着るのかしら? フィー、一緒に服選んでよ。」


「......う、うん。」


は、初めて声を聞きました! 感動です! 驚いて気が緩んでたかららしいですが一歩前進しました!


「声も綺麗です...。」


嬉しくて素で呟いてしまいましたけど、アリアさんの声で聞こえなかったみたいです。よかったです。

油断してました。危ない危ない、油断大敵ですね。


「フィーナさんはこえもきれいなんですね。」


「......。」


これは、あっ、喋っちゃった...、って顔ですか?

それから、ちょっと照れてますね。


「そうでしょう、そうでしょう? こんな短時間でフィーが喋るなんてさすがユリ・コーチャスさんの妹!」


しばらく精霊さんたちのように瞳をキラキラ輝かせていたアリアさんだったのですが、ふと少し冷静になったみたいです。


「でも、初対面でフィーのこと全く怖がらないなんて珍しいわね? 先生ですらたまに扱いに困ってるのに。」


「そうなんですか? フィーナさんもあきれたり、おどろいたり、ちょっとてれたり、してますよね?」


フィーナさんの方を向いて問いかけてみると、また驚いてますね。そんなに気づける人が少ないんでしょうか?

あ、でもちょっと嬉しそうにしてます? ちょっとだけでも仲よくなれましたかね?小さく頷いてくれた気もしますし。今までにはなかったアクションです。


「あら、わかるの? 凄い凄い! やっぱりユリ・コーチャスさんの妹だからかしら。私も最初は全然分からなかったのに。」


ユリ姉様が凄いってことがわかって嬉しいんですけど、もうそろそろティーの名前で呼んで欲しいところです。少ーしだけ寂しいです。


「......ティ、シェール。」


が、頑張ってます! フィーナさんがティーのために頑張って名前を呼んでくれました!

どうしよう、すっごく嬉しいですー!


「はい! ティーはティシェールです!」


飛びついちゃいました! 腕にぎゅーってしちゃいました!

でも、どうしよう、フィーナさんの体が緊張で強張ってます。


「ごごごめんなさい! ティー、軽率でした!」


急いで離れましたけど大丈夫でしょうか?


「......。」


固まってます。ど、どうしましょう。


「だ、いじょうぶ、でしょうか...?」


アリアさんに助けを求めたんですが、アリアさんも驚いてました。


「フィー...?」


「......。アリア。」


アリアさんがふう、と緊張がとけたように息をつきました。


「頑張ったのねえ。

凄いわねえ、さすがユリ・コーチャスさんの――」


「アリア、ティシェール。」


「え? あっ。」


ま、またっ! 名前を呼んでくれました!

もう飛びついたりしませんよ? でもうずうずしちゃいます。

アリアさんが短く何か言ってるんですけど頭に入りません。


手招き! フィーナさんがティーのこと手招きしてます?

これは行かなければ! 驚かせないように、なるべく急いで。気持ちが逸ります。


「フィーナさん?」


うぅ~、うずうずが止まりません。


「......、よしよし。」


な、撫でられましたよ!? フィーナさんが緊張しながらですけど、ティーの頭を撫でてます! うずうずが、治まりました、けど。


「ふ...、ふにゅ~…。」


ついに口に出しちゃいました! だって抑えられなかったんですよ!

でも、フィーナさんの口元がちょっとだけ、ちょびぃっとだけ緩みました。

控えめですけど、笑ったって思っていいですよね? ティーも笑っていいですよね?


「ティシェール、ちゃん? その、ごめんね?」


あ、アリアさんのことほんとちょっとですけど忘れてました。ごめんなさい、アリアさん。


「大丈夫です。お陰でフィーナさんに名前呼んでもらえましたもん。

寧ろお礼を言いたくなるくらいです。」


「そっか、それは良かった、んだけど。

ティシェール、ちゃん?」


「ティシーでいいですよ? 皆そう呼びます。」


こう、ぐっと一気に仲よくなれましたよね?


「あ、うん、ティシー。

なんか、随分しっかり喋るのね、っていうか。

雰囲気が変わったような気がする、っていうか。」


もしかしなくても、素でベラベラ喋ってましたか? なんかサーって音が聞こえました。今度は冷や汗が全く止まりません。


「......。あー、えっと。

き、きのせーだと、おもうよ? ティー、ろくさいだ、もん。」


今回の人生で最大級に気が緩んでました! 油断大敵って思ったばっかりだったはずなのに。こんなんで誤魔化せるわけないですし、どうしましょう。

ティーに危機が! どうしよう、次の展開考えてないんですけど!?

このままじゃ、ユリ姉様にもばれちゃう...のはまだ早い気がするのに。

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