第31話 魔法はお預けです。
「そうだなあ、じゃあまずは火の適性があるやつ、前に出てこい。」
火といったらマリカちゃんですね。ガンガン打ちまくるぞ、なんて言っていたので魔法を使うんでしょうけど、どんな魔法からやるんでしょう?
火の適性がある子は七人いるみたいです。きっとみんな多かれ少なかれ魔法が使えるんでしょうね。
「ふうん、七人か。よし、取り敢えず火球だ。
それ、打て! 初級も初級の基礎だからな。失敗すんなよ。」
「あ、えっと、"火よ!"【火球】!」
「"火よ!"【火球】!」
「「"火よ!──。」」
わあー! すごいですすごいです! 丸い形の火が7つ並んでいます。
昨日も魔法は見て感激しましたが、沢山並んでいる不思議現象もまた格別です。
んーと、火よ! ってところが呪文、というか詠唱? ティーだったら水よ! とかでいいんですかね?
というかそれ以前に魔法を使えるんでしょうか? 詠唱は直前になんとかなるかもしれませんが、そのほかの手順はサッパリです。
もうこれは腹を括るしかありませんね。ロード先生が何て言うかちょっぴり怖い気もしますが正直に言うしかありません。
きっとあれです、ほら、聞くは一時の恥 聞かぬは一生の恥ってやつだと思うんです。
思いきってどーんといきます。
ティーの番になってからですけどね。
「取り敢えず良さそうだな。もう消していいぞ。
んじゃ、次は水の適性があるやつ出てこい。」
もうティーの番になっちゃいました...。
どーん、に決めましたからね。ちゃんと言いますよ。
...言いますから! せーの、
「あの、ロードせんせい。ティーはまほうをつかったことがないんです。どうしたらいいですか?」
ちゃんと言えました。でも、ロード先生が「ん?」とか言ってティーの顔をジロジロと見つめ始めました。どうしたらいいんでしょう?
取り敢えず、先生の方が何か言ってくれるのを待ちましょう。
「お前か? 公爵家の令嬢なのに魔法すら知らなかったって問題児は。」
ああ、やっぱりティーは問題児なんですね。
そうだろうとは思ってましたが、面と向かって言われると少しショックな気がします。
「はい、ティシェール・コーチャスです。」
「ティシェール・コーチャス。
んんん?
コーチャス、コーチャ...、あ、ユリ・コーチャス?
そうだそうだ、ユリ・コーチャスだ。」
ユリ姉様を知らない人ってこの学園にいるんでしょうか?
ティーが名乗ると必ずユリ姉様の名前が出てきます。
「ロードせんせいもユリねえさまをごぞんじなんですか?」
「あー、やっぱりユリ・コーチャスの妹か!
しかし本当に魔法を見たことがなかったのか? ユリ・コーチャスは魔法が得意だろう?」
ユリ姉様は魔法が得意なのですか。属性は聞いたら教えてくれましたけど、得意だとは言ってませんでした。恐らくティーに気を遣ってくれたんでしょうね。
そんなに気にしなくても大丈夫なんですけどねえ。寧ろもっといろんなことを教えて欲しかったです。
「ティーのまりょくがすくなかったので、えんりょしてたんだとおもいます。
ユリねえさまはとてもやさしいので。」
「へえー、仲いいんだな。」
ほんとですか!? そう見えますか! というか、聞こえますか!
嬉しいですね、ユリ姉様はティーの憧れのお姉様なのです! 少しでも近づけるように頑張りたいです。
「はい、ユリねえさまはティーのあこがれなんです! ユリねえさまもティーにやさしくしてくれます!」
ユリ姉様は完璧なお嬢様ですからね、憧れるに決まってます!
っと、ちょっと脱線しちゃいましたね。今は授業中なんですから、真面目にやらなきゃだめですね。
「ところで、はなしをもどしますけど、ティーはまほうをつかったことがないんですがどうしたらいいでしょう?」
「あー、そう言えばそんな話だったな。
どうすっか、まず、魔力が体を流れてんのは分かるか?」
うう、分からないです...。精霊さん、慰めてくれてありがとうね。ティー、頑張りますから!
「わからないです...。」
ああー、ロード先生がちょっと困り顔です。それはそうですよね、生徒はティーだけじゃないんですから。
「とりあえず、こんかいはけんがくでもいいですよ? みんなはできてるんですし...。
いざとなったら、ユリねえさまをたよってもいいですし。」
精霊さんも魔力ならわかるよー、って言ってますし、なんとかできるとは思うんです。
「そうか、悪いな。そうしてくれ、授業が終わったら少しは見れるから。」
いえいえ、ティーの方が申し訳ない気分です。でもティーの夢の実現のために、協力してもらいたいと思います。もちろん長期計画ですから、一分一秒でも早く! なんて言いません。ゆっくりじっくりやっていきます。
今日はテストが5つも返ってきました。
中々の高得点もいくつかあって(しかも、古典が一番でした!)、投稿をお休みしてまで頑張った甲斐があったな、と思いました。
自慢はこれくらいにしまして、
漸くティーが魔法に挑戦するのか! と思いきやお預けです。
うーん、魔力ってどうやったら認識できるんでしょうか? そのうち深雪の頭の中にポンッ、とわいてくると思うのでそれまでお待ち下さい。




