第3話 お買い物!
コーチャス家が治めている領地内で一番大きな市場に着きました。
「リリー! アルト!」
「「はいはい、ティシーお嬢様。」」
初めてのお買い物なんですからワクワクするなって言う方が無理な話なんですよ。色んなお店が様々な物を売ってるから早く見て回りたいんです。
「おとうさま、いーい?」
「はは、ティシーはもう待ちきれないんだね。約束はきちんと守るんだよ?」
「うん!」
「よしよし、はい、お小遣いだよ。無くしそうだったらリリーかアルトに預けておくといいね。」
「だいじょーぶ! なくさないもん!」
「はは、ティシーは可愛いねえ。気をつけて行っておいで。
リリーとアルト、ティシーをよろしく頼む。」
「「お任せください、マール様。」」
さあ、出発ですよ。お父様との約束もきちんと守ります。
「リリー、アルト、いくよー。」
ユリ姉様たちに行ってきます、って手を振ったら行ってらっしゃい、って振り返してくれました。
「リリー、アルト、よろしくね?」
「勿論ですよ、ティシーお嬢様はいい子ですな。」
「お任せくださいな、ティシーお嬢様。
お金は無くすと困りますからこのお財布に入れてくださいな。」
アルトはよしよし、って頭を撫でてくれて、リリーは片手を上に伸ばした白い猫が綺麗な翼を背中に広げた刺繍を施されたピンクのお財布をくれました。
「わあ、かわいー! これってリリーのてづくりでしょ? ありがとう!」
精霊さんがリリーが丁寧に作ってくれたんだよ、って教えてくれました。これは自慢したくなってきました。お買い物するお店の人に見せてあげましょう。
お財布には紐がついていて、リリーが首にかけてくれました。なるほど、これなら手も塞がらないし無くしません。
「みてみて、アルト。リリーのてづくり。」
「おお、可愛い財布ですな。リリーさんは刺繍が上手なんですね。」
よし、ちゃんとリリーのことも褒めましたね。アルトはリリーが好きみたいですから、今日は一緒に回れてアピールするチャンスですからね。お父様、気が利きますね。グッジョブです。
ティーもリリーにアピールしなきゃですね。
「リリー、アルトがししゅーじょうずだね、だって!」
「まあ、ありがとうございます。アルトさん。」
「いえいえ! 本当に上手だと思います! ティシーお嬢様が羨ましいくらいですよ、はい。」
「まあまあ、アルトさんは口がお上手なんですね。ふふふ。」
「いや、そのー、あはは...」
あーあ、リリーはなかなか手強いですからねえ。ティーも頑張らないといけませんね。
「ティー、おとうさまとやくそくしたから、リリーとアルトとはなれちゃいけないの。だからふたりとおててつなぐ!」
よしよし、子供を真ん中に男女で挟んで手を繋ぐと、
「リリーがおかーさんで、アルトがおとーさんみたいだね! なかよし、なかよし。」
お、二人で顔を見合わせて笑ってますね。やりました、今度は成功です。
精霊さんがヒューヒュー、って囃してますよ。
おっ、いいものを発見しました。
「あ、ふーせん! ティーもふくらます!」
子供って風船で喜ぶってイメージありますよね。6歳ならまだまだ興味示しますよね?
二人を引っ張って走っちゃいます。ダーッシュ!
「こんにちは! ふくらませるふーせんください。」
「こんにちは。おや? マール様んとこのリリーさんとアルトさんじゃないか。
もしかして、下のお嬢様かい?」
「うん! はじめまして、ティシェール・コーチャスです。
ふたりといっしょにいちばをまわるの!」
「そうかい、そうしてると親子みたいだねえ。」
これを聞いてリリーはそうなんですよねえ、なんて言ってて、アルトはボンッて赤くなっちゃいました。分かりやすいですねえ。
お店のおばちゃんもニヤニヤしてますよ。
「今日はね、みんなでピクニックだから、あとでふーせんでふたりとあそぶの! ふたりはなかよしさんなの。」
そうかいそうかい、って浮かぶ風船をおまけしてくれました。おばちゃんいい人! 頑張ってね、って応援してるよ、って精霊さんが言ってます。
お財布も自慢したし、バイバイ、って手を振って次のお店にレッツゴーですね。
二人っきりにできないですけど、子供ならではの方法ですよね。
天使が手伝ってくれればリリーもおとせるはず!