第10話 おともだちをゲット!
いやあ、何故か入学式の開場である講堂にいた精霊さんたちがティーが入った途端に寄ってきてくれたんですよね。
驚いて何かあったのか、と聞いてみたら入学式の長いお話の間の退屈を紛らわしてくれるなんて嬉しいことを言ってくれました。ついでに制服が似合ってると言われたのはとても嬉しかったです。
お話をしてくれる方々には申し訳ないですが、入学式で眠気が襲って来なかったことはないんですよね。
現在時刻は午前9:40。講堂の入口で配られた表によるとティーは1年Bクラス。並べられた椅子の半数以上が埋まってますし、早いところ座りましょう。
「こんにちは、ここすわっていーい?」
前寄りのはじっこが空いてたので、その周りのお喋りしてる女の子たちに聞いてみました。もしかしたらお友達が席を外してるだけかもしれませんもんね。
「いーよー。」
「よろしくねー。」
元気よく返事を返してくれました。仲よくなれそうですね。
「あ......。」
ん? あれ、懐かしい。小さな声が横から聞こえて見てみると瞳の黒い女の子が立っていました。
この世界には日本人のような黒い髪や瞳の人ってなかなかいないみたいなんですよね。久しぶりに見ましたね。
ティーを見て驚いている、ということはこの子の席を盗っちゃいました?
「もしかして、ここあなたのせき?」
「あ、うん...。」
おかしいですね。周りの子たちが座っていいって言ってたんですけどね。知り合いっぽいのに。
この子が来た途端に賑やかなお喋りが一瞬止まりましたし。
とりあえずティーは移動した方がいいですかね。周りに知り合いがいないのは心細いはずです。
「ごめんね。それならティーはべつのとこにいくよ。」
「だっ、だいじょうぶ。」
慌てて止められました。なぜでしょう?
「いーの?」
「うん...。」
少しほっとしているようにも見えるのですが。
別の空いてる席に行っちゃいましたね。あまり仲がよくないんですかね?
気になります。
ん? 忌み子? へえ、ハーフは瞳が黒くなるんですか。精霊さんはやっぱり物知りさんですねえ。ティーももっと勉強しなきゃです。
それにしても、ハーフが皆黒い瞳になるってなんででしょうね?
あ、この世界にはエルフとか、獣人とか、ヴァンパイアとかいるんですよ。使い魔とかもいますし。とことんファンタジーですよね。
それで、あの子がハーフで黒い瞳なんですね。
あれ? それだけですか?
なるほど、この子たちはそれだけで蔑ろに扱う大人たちの真似をしちゃってるんですか?
子供って時に残酷ですねえ。悪気なんて特になくゲーム感覚で仲間外れにしたりしちゃいますからねえ。
精霊さんたちもそう思います?
ティーはあの子と友達になりたいですね。黒い瞳を見たとき、なんとなく安心したんですよ。
周りの子たちもお喋りに夢中でティーのことを見てる子はいませんし、あの子の隣の席は空いてますし、移動しましょう。
「ねえ、となりすわっていーい?」
「うん、あ...。さっきの、」
黒っていいですね~。落ち着きます、が、
お礼と挨拶は大切です。笑顔もですね。
「ありがとう。ティシェール・コーチャスっていうの。よろしくね。」
「うん。えっと、ニーナ・フレスト。」
やっぱり話すのは少し苦手みたいですね。
どうしたら仲よくなれますかね。
考えていたら袖をチョイチョイって引っ張られました。どうしたんでしょう?
「あの、なんでこっちきたの?」
あー、それは気になりますよね。席を譲ったのに態々移動してきたんですもんね。
「おともだちになろうとおもって。」
「おともだち...? なんで?」
驚いてますねえ。一番はやっぱりその黒い瞳なんですよねえ。
「そのめ、くろいから。」
「め...?」
あわわ、警戒させちゃいました。言葉が足りませんでした。
「うん、ニーナちゃんのめがすき。」
「すき...? ほんと?」
また驚いてますねえ。昨日から驚かれてばっかりです。
「うん! おともだちになってくれる?」
「うん。おともだち!」
やりました、ニーナちゃんも表情が和らぎましたし、また友達が増えましたよ。ここの席はBクラスの範囲ですから、クラスメイトの友達をゲットです。
この調子でじゃんじゃん友達増やしますよー! そしてユリ姉様に紹介するんです。
ティーは懐かしさを抑えられませんでした。ニーナは黒髪...ではないですが、黒目で日本人! って感じしますよね。
ニーナはきっと健気な子になるんだと思います。というかそうしたいんです!
※ ちょっと第1話を一部変更しました。内容は変わってませんが、今後予告などなしに編集することがあると思います。




