風と炎と恋のお話
それから、3日間。パーティーの準備で忙しいシルベと外交のため様々な人と会わなければいけないレシェナが2人で会う機会は1度しかなかった。
その間、暇な時間を見つけてはレシェナはシルベの書庫に入り浸り本をよみあさっていた。
もちろん今も。
ガタン
物音が聞こえ、レシェナが顔をあげると入口に2人の男女が立っていた。おそらく兄妹だろう。赤い髪に上等な服、さらに城に出入りしていること2人はファイアリアの貴族なのだろう。
「なんで、なんでなのよ…。」
女の子のほうがレシェナを睨んでつぶやいた。
「なんでシルベの書庫に女がいるのよっ!!!」
女の子はそう叫んだ。そしてツカツカとレシェナに近寄ってくるとまっすぐレシェナを見据えて言った。
「シルベの婚約者はわたしよ!!!」
そしてそのまま去っていってしまった。
話が読めずポカンとしているレシェナと取り残された男の子。
「えっと、お初にお目にかかります。そして妹の非礼をお許しください。シルベの幼なじみのルキと言います。」
「レシェナです。敬語、やめてくれると嬉しいです。あたしもそうするから。」
それなら、と敬語をやめると改めてルキは謝った。
「いいよ、別に。あの子にもあの子で何かあるんだろうし。それにルキがあたしに何かしたわけでもないしね。」
ざっくりとレシェナは言った。
それを聞いたルキは一瞬ポカンとしたもののそのあと吹き出した。
「ごめんごめん。面白いね。さすが、シルベが心を許しただけあるね。」
「というわけで、俺と妹のエリナは先王からの宰相の子供で小さいときからシルベの遊び相手として城に出入りしてたんだよ。で、エリナはシルベが好きなわけ。」
こともなさげにルキが言った。それはもうあっさりと。
「なるほどね。じゃあ、あたしはシルベに近づかない方がいいのかな?」
レシェナが言うとルキはまた笑ってそのあと真顔になって言った。
「それは違うだろ。大事なのはシルベの気持ちなんだから。」
そして、必要な本をもって行ってしまった。
「ここの合鍵、シルベからもらったの俺とお前だけなんだぜ?」
という捨てゼリフとともに。
ー翌日。
レシェナは珍しくシルベとともに庭でお茶を楽しんでいた。しかし、レシェナはどことなく浮かれない顔をしていた。そして、レシェナは思い切って口を開いた。
「ねぇ、あたしなんか特別扱いしてていいの?」
「えっ?」
シルベは何を言ってるのか、と困惑した。
「だって、書庫の鍵とか時間とか。エリナさんはいいの?」
「え?エリナ?」
なぜレシェナがエリナを知っているのかわからないシルベはさらに混乱している。
「だって、エリナさんはシルベと結婚するんでしょ?」
「違うよ!!!俺が好きなのはレシェナだよっ!!!!!」
1拍あいたあとシルベは大声で叫んだ。
「えっと…。」
レシェナは混乱していた。
一方、シルベの顔は真っ赤だった。
「あー、うん。忘れて。忘れていいからっ!」
そう言ってシルベは席を立ってレシェナに背を向けた。
「待って!!!」
次に叫んだのはレシェナだった。
「あたしも、好きだよ。」
そう言ってレシェナはシルベにキスをした。
「…っ。」
ニコニコと笑うレシェナにさらに真っ赤なシルベ。
風の少女と炎の少年はもう一度ゆっくりと唇を合わせた。