孤高のシグナル
通路をひとつ開けた
窓際一番後ろの席
そこに片肘ついて、外を眺める彼
大きな瞳と、そこに被さる長い睫毛
長く細い指と、綺麗な黒髪
その彼の完璧な容姿
学校の女の子達はきっと、彼に憧れているだろう
私もその一人
好きになったきっかけなんて、忘れた
ただ気付いたら、心の中に彼がいた
だからって別に特別な何かを求めているわけじゃない
彼の気持ちが欲しいわけじゃない
ただ、見ているだけでいい
彼からすれば、気持ち悪いかもしれない
同じクラスってだけで、まともな会話もしたことのないこんな平々凡々な女
今だって、ただ隣の席ってだけで
彼にとったらなんてことない時間かもしれない
でも私にとったら、貴女を近くで独り占めできる
幸せな時間
「……―、好き」
誰にも聞こえない、小さな声で呟いた
その音は、教室の静寂に紛れるように
消えていった