第1章 神は存在するのか?
漫画描いているのですが、世界観の設定用に文章にも起こそうと思って執筆してみました。
ポク、ポク、ポク――。
木魚の音とお経が、錦江湾から吹く海風に乗って流れてくる。
梅雨のじめじめした空気が制服の中まで入り込み、汗のせいで肌に張り付くシャツが気持ち悪かった。
肌着を着れば少しはマシになるけど、それはそれで暑くなる。
結局どっちを選んでも不快なのは、十一歳の僕にもわかる。
そんなことを考えながら、僕は台所でお焼香に来てくれた人達に出す湯呑みを洗っていた。
「隼人くん、まだ小学六年生なのに大変だったね」
後ろから声をかけられ、振り返ると、知らないおばさんが立っていた。
四十代くらいだろうか。目は少し赤く、悲しそうな顔をしている。たぶん亡くなった母さんの知り合いだろう。
田舎の葬式というのは不思議なもので、噂を聞きつけて、どこからともなく人が集まってくる。
「お母さんが亡くなって辛かったね。洗い物は代わるから、仏様の所に行ってあげて」
僕は何も答えなかった。
辛かったからじゃない。
知らない人たちのお焼香をずっと眺めているのが嫌だったからだ。
仕方なく時間を潰したくて外へ出る。
すると参列者たちのひそひそ話が聞こえてきた。
聞こえないように話しているはずなのに、そういう声ほどなぜか耳に入る。
「かわいそうにね。まだ十一歳なんでしょう?」
「こんな小さいうちにお母さんを亡くすなんて……」
母さんが亡くなった時、確かに悲しくて泣きもした。
だけど、どこか実感がなかった。
死んだということは理解している。
それなのに、本当にいなくなった気がしないのだ。
まだ数日しか経っていないのに、今は悲しさよりも退屈だなという気持ちの方が強かった。
薄情なもんだな、と自分でも思う。
葬式が終わり、学校へ行くようになると、今度はクラスの人の憐れみや同情を感じるようになり、気を使われるのが面倒になって、なんとなく距離を置くようになった。
思ったより落ち込まなかったけど、母さんの死が、僕を変えたことだけは確かだった。
具体的に何が変わったのかは、自分でもよくわからない。
ただ、今まで気にもしなかったことに疑問を感じるようになったのだ。
人はなぜ生まれ、なぜ死ぬのか。
世界はどうやってできたのか。
宇宙はどうやってできたのか。
クラスメイトが球遊びや鬼ごっこをしている時も、ゲームの話で盛り上がっている時も。
僕はそんなことばかり考えていた。
子供なのにそんなことを考えるようになったのは、ある意味不幸なのかもしれないと思った。
そして一番の謎。
神は存在するのか?
気になったら調べずにはいられなかった。
家に帰るとパソコンを開き、本やネットで答えを探した。
宇宙の始まりについて調べると、いろいろな説が出てきた。
神話では、世界は「カオス(混沌)」から生まれたという話が多いらしい。
科学の世界では、量子の揺らぎという難しい言葉が出てくる。
理解はできないけど、完全な無というものは存在しないらしい。
何もないように見えても、そこには小さな揺らぎがあり、物質と反物質が生まれては消えているという。
正直よくわからなかった。
でも、どこか神話のカオスに似ている気がした。
さらに調べていくうちに、僕たちのいる宇宙ができる確率は、とてつもなく低いということがわかった。
物理学で有名な教授が言っていた。
我々が存在できる宇宙ができる確率は、『百の百乗分の一』だと。
百の後ろにゼロが百個並ぶような数字らしい。
全然ピンとこないから調べてみると、宝くじの一等が二十八回連続で当たるくらいらしい。
一等でも当たらないのにね。
僕は思った。
そんなバカみたいに低い確率を信じるくらいなら。
神様がいるって考えた方が、よっぽどまともなんじゃないかと。
続きが気になる人がいるかはわかりませんが、リクエストがあれば執筆したいと思います。




