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魔法の国の女王~衰退国家の女王に転生したので、最強魔法を継承して国を立て直します~  作者: 刺身


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第1話 魔法の国の女王

清水絵留沙(えるざ)は若くして亡くなった。学校ではいじめられ、元より希望のない、死だけが救いのような人生だった。彼女はバルニカ王国の国王の一人娘、エリザベートに転生した。転生した時、この体はちょうど転生前と同じ、12歳だった。


そこより前の、王女エリザベートとしての記憶はぼんやりとしかない。しかし、周囲の話によると、絵留沙が転生する4年前に、エリザベートは両親を失っていたようだった。そしてエリザベートは、唯一の王位継承者となった。そんなエリザベートは、王家に代々伝わる8つの最強の魔法を、父から継承した。


転生してから二年間は、次期国王として育てられた。魔法の使い方、内政、外交、外国語など、君主として必要な能力を徹底的に叩き込まれた。


そして今日、エリザベートは14歳になった。バルニカ王国では、14歳から正式に成人の国王として認められる。今までは摂政のヴィルヘルムが政治の中心となっていたのだが、今日の戴冠式をもってエリザベート女王の新政が始まるのだ。


(うわぁ......緊張する......)


王国の封臣達、聖職者、多数の貴族が、大聖堂に集まっている。若く美しい、厚いドレスに身を包んだ新女王は、大司教の前でひざまづいた。


大司教は、エリザベートの長い金髪の上に、王冠を静かに乗せる。エリザベートにとって、その王冠は、金の質量以上に重たく感じた。


「神よ、女王陛下を守り給え!」


大司教の言葉に続いて、喝采が湧き出した。壮大なオーケストラが大聖堂の中に鳴り響く。前世では常に誰かのいじめの標的になり、誰かの上に立った経験などなかった清水絵留沙(えるざ)は、女王エリザベートとしてこの国の頂点となったのだ。


左右に側近たちを従え、壮大な音楽と共に女王エリザベートは大聖堂を出た。


――その日の晩


リーグニッツ城にて、宴会が開かれていた。


「ヴィルヘルム!まじで緊張したー」


「エリザベート様、まだ終わってないですよ。明日の国民への演説が本番です」


「えー」


「あなたはもう女王なんですよ。この国の全国民の頂点なんですよ」


「そうは言われてもなぁ......」


エリザベートははぐらかすように、料理に手を伸ばす。


「まあ、無理もありません。私たちも全力でサポートしますよ」


「ありがとう」


「とはいえ、この国は今、様々な勢力に狙われています。海賊、南方の敵国、革命家。あなたも女王としての自覚をもって職務に......」


「はいはい、わかったってば」


前世では常に他人の下につくような人生だった。転生してからも、右も左もわからない状態で、周囲の大人達に従って生きてきた。


(人の上に立つって、どういうことなんだろう)


素朴な疑問を浮かべていると、護衛隊長のオイゲンが声をかけてきた。


「女王様。我々も今日から正式にあなたの臣下です。なんでも命じてください」


オイゲン――この国で最強と言われている男だ。


「ええ、頼もしそうね......」


(命令ってどうやって下せばいいんだろう)


エリザベートは思いつめたような顔をしながら、料理を食べた。臣下達とのその後の会話はあまり弾まなかった。不安と緊張を抱えたまま、エリザベートは翌日の演説に臨むことになったのだった。



――翌日、バルニカ王国の首都、コンステンティーエにて


ついに演説の本番が始まる。エリザベートは高台に上る。目の前の広場には、大勢の人々が集まっている。何度も台本を読んで練習したが、かなり緊張する。


警備体制は厳重だ。護衛隊長のオイゲンがそばに控え、エリザベート自身も魔法の杖を隠し持っている。台本は高台の柵の下に隠されていて、外からは見えない。


エリザベートは拡声器に口を近づける。この拡声器を通る声は、魔力で増幅される。


「皆様こんにちは。私がバルニカ王国の女王、エリザベートです」


広場にいる群衆は、エリザベートに喝采を浴びせる。


「私の父、フレデリック前国王は、無念のうちに亡くなられました」


エリザベートは緊張を押し殺し、胸を張って台本を読む。


「我が国には、民族対立、他国との対立、海賊の略奪など、様々な脅威があります」


「私は、女王としてこの国と国民を守ることを誓います!」


エリザベートは胸に手をあて、宣言した。広場からの喝采はさらに大きくなる。


「私は......」


次の言葉を言おうとしたとき、どこからか爆発音が聞こえてきた。広場はざわつき始める。


「何、今の音」


「爆発?港の方からじゃない」


(えっちょっと、どうすればいいのこれ)


若い女王エリザベートも戸惑いを隠せなかった。一人の兵士が、高台に上ってくる。


「エリザベート様!大変です!」


兵士は息を切らしながらも、声を振り絞って言った。


「南の港、東の港。二つの港に同時に、海賊が侵攻してきました!」


その言葉に、護衛隊長オイゲンはすぐに反応する。


「本当か!?兵を連れて、すぐに向かう!女王様は城にお逃げを......」


「ちょっと待って、私一人だけ安全地帯に逃げろってこと?国民のみんなが危険な目にあってるのに」


いつもはおとなしいエリザベートも、ここは食い下がった。オイゲンは早口で返す。


「これぐらいなら、私と常備軍だけで十分です。あなたが戦う必要はありません。まだ実戦経験もないでしょう」


「それでも......私は、国と国民を守るべき女王......なんでしょ?」


「あんなのはただの台本です。多少の国民の命よりあなたの命のほうが大事でしょう」


自分の命が特別扱いされるのに、なんだか拒否感を感じた。彼女にとって、自分でも大切にできない、できなかった自分の命のために、他者の命が勝手に捨てられるのは耐え難かった。


「あんたがどう思うが勝手だけど、私は戦いたいの。戦わせて。これは《《命令》》だよ」


エリザベートは初めて、女王としての命令を下した。


「......わかりました」


「私は東の方に向かうから、あなたは南の方をお願い」


エリザベートは隠していた鉄の杖を振る。エリザベートの隣に、空飛ぶホウキが出てきた。


「了解です」


「行ってくる」


エリザベートはホウキにまたがって、東の港へと飛び立った。


――東の港にて


港の弾薬庫に火が付き、爆発する。周囲の建物は倒壊し、火は街中に燃え移り、海賊達が次々と上陸する。


「野郎ども、奪え!」


海賊達は街中の建物を次から次へと物色し、金目の物を奪っていった。


「待ちなさい!」


一人の少女が、燃え盛る建物の上に降り立った。


「誰だあいつ、魔法使いか?」


海賊達はホウキを持った少女に注目する。


「私はこの国の女王、エリザベートよ」


「嘘つけ、王様がそんな一人でのこのこ出てくるか」


「ああ、どうせ虚言だ」


海賊達はその少女の言葉を信じなかった。


「あっそう。じゃあ見せてあげる」


エリザベートは杖を大きく振ると、彼女の衣装は、一瞬で変わった。アニメの魔法少女のような、ミニスカートの白と黒の派手なドレス。


「これが私の魔法礼装よ」


エリザベートが父から受け継いだ一つ目の魔法、魔法礼装。自分が最も強く魔法使いとイメージする姿に、一瞬で変身し、魔法の威力を最大化できる。


「あの魔術......こいつ本当に女王なのか?」


「うちとりゃ名が挙がるぞ!構えろ」


海賊達はエリザベートに向けて、マスケット銃を構える。


「それで私に勝つつもり?」


「ちっ、撃てぇ!」


海賊達は一斉にエリザベートに向けて発砲した。しかし、その弾は、エリザベートの体に届く前に、空中で静止した。


「なんだ!?当たってねえのか」


「私の防御魔法は、そんなんじゃ突破できないわよ」


エリザベートが父から受け継いだ二つ目の魔法、王の盾。このような防御魔法自体は一般的だが、一つ目の礼装と組み合わせることで、王を守る最大の盾となる。


「お返しするわ」


空中で静止していた弾は、海賊達の方に逆進する。


「ぎゃああぁ!」


弾は海賊達の手を貫く。


「まだまだ!」


エリザベートが父から受け継いだ四つ目の魔法、王の弾丸。魔力をエネルギーとして放出することで、敵を攻撃できる。単純だが強力な遠距離攻撃魔法だ。また、出力のコントロールがしやすく、敵を殺さずに気絶させられる。


王の弾丸、海賊達に降り注ぐ。王の弾丸に当たった海賊は、その場で意識を失った。


「ちっ、分がわりぃ。撤退だ。帰ってお頭に報告するぞ」


海賊達は港から逃げ出した。


「この国と民を傷つけたらどうなるか、覚えときなさい!」


エリザベートは声を張り上げてそう叫んだ。少しだけ、女王にふさわしい女になれたような気がしたのだった。



――海賊共和国、ニューアンカッソーにおいて


ある海賊船の水兵の男は、巨大な椅子に座っている大男に向かって膝をつく。


「申し上げます!先日のコンステンティーエ襲撃作戦ですが。二人の強力な人物によって阻まれました」


「おいおい、オイゲンのほかにも強いやつがいたのか?」


「はい、彼女はバルニカ王国の女王を名乗り、一人で東の港のほうに向かった軍団を崩壊させました」


「まさか、王族の魔法......そりゃ厄介だな」


「やはり彼女は本当に......」


「ああ、本当に使えるんだとしたらかなりのもんだ。普通は継承して五年はろくに使えないんだが。おい」


「はい!?」


「準備をしろ」

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