第九話 唯一神ロキ
俺の目の前には第二王女がいる。
落ち着いた物腰と、気品があるしぐさ一つ一つがこの女性が王女様なのだなと実感させる。
だが気になることがある。
王女のそば仕え?のメイドさんたちが、少々顔を赤らめながら俺に対する視線を注いでいる。
考えられることは、俺という純和風な顔立ちが物珍しいか、実は俺の恰好か顔にこの世界で言うところの盛大な欠点があって見てられないわという感じの共感性羞恥のようなものを感じているかだろう。
さてさて俺はいったい何を言われるのやら。
「聞きそびれておりました」
お姫さん、アリスの声は独特で幼いようなそれでいて色気のあるような声だ。
「貴方のお名前を聞いておりませんでした」
「俺は、国村 一。ハジメでいい」
「そうですか。ハジメ、いえ、ハジメ様」
……様!?
「ハジメ様。失礼いたしました。この度はうちの衛兵がご迷惑をおかけしてしまい」
「ちょ、ちょっと待ってください。なんだか牢屋にいたときと雰囲気が違うような」
すぐにマルクが割って入ってくる。
「第二王女!得体のしれないそんな男に言葉が過ぎます!」
「黙りなさい。貴方にはわからないのですか?この方の、ハジメ様のどことなく感じるカリスマ性、そしてこの容姿」
容姿?
「加えて、この理不尽な状態で、精神に異常をきたしてもおかしくない状況でも凛々しくされるこの胆力。きっとこのお方がこの国を救う勇者様なのですわ」
「第二王女!決してそのようなことは」
確かに、なんかの耐性でもあるのかってぐらい俺の心は落ち着いているな。
「つかぬ事をお伺いしますが、ハジメ様はなぜ城下であのような事態に?本来であれば私自らお迎えに上がりたかったのですが」
なんかこの姫様様子がおかしくないか?まるで俺に惚れましたとでも言わんばかりの言動に聞こえるのだが。
「それが俺自身もわからないんです。気づいたら牢屋の中と言いますか」
俺は、まぁ仕方ないと、俺のここまでの経緯を全て話してみることにした。
地球という別の世界で焼かれかけたこと。
ロキという悪魔のような幼女神に好き勝手弄ばれた挙句この世界に落とされたこと。
とりあえず体が丈夫ということなどなど。
「……まさか」
アリスの顔が困惑する。
「それではハジメ様は勇者ではないということですね?」
「多分違うと思いますけど……」
俺にもわからないんだ。
勘弁してくれ。
「そうですか。まさかハジメ様がロキ様の御遣い様でいらっしゃったとは」
ん?ミツカイとはなんだろう。
「すいません。そのミツ、カイ?ってのは何ですか?」
「ロキ様から何か、使命のようなことはいただいてはおりませんか?」
「いや、特に。ロキを楽しませる為に、右往左往して生きろとだけ」
するとアリスはパッと顔を明るくして言う。
「やはり使命を持ってらっしゃったのですね!!」
「いやだからそんなものは無いと」
「いえそんなことことはありません。ロキ様が右往左往して生きろというのですから、それはこの世界の民を右往左往して救うことを願われているに違いません」
そんな拡大解釈聞いたことねーよ。
「ちなみに、アリス様。この世界の神様ってもしかして?」
「もちろんロキ様を唯一神として信仰しております。まさか御遣いさまから、信仰の有無を試験されるだなんて光栄です」
おっと。これは何を言ってもいい方にとられるやつか?
そこでふとハジメは気になることを思い出す。
「すみません。ちょっと俺のステータスを確認したいので、あまり人には見せたくないので退出してもよろしいですか?」
「それでしたら」
そういうとアリスはマルク、メイドに向かって手を横に振ると、マルクもメイドも部屋を後にした。
人払いってことですか。
マルクは、俺が神の御遣い判定されたことで、自身が処罰されるのではないかという心配から魂が抜けたような足取りでアリスの私室を後にした。
今はアリスの私室に俺とアリスだけの二人しかいない。
どうやら神のミツカイとやらは、何よりも優先されるほど立場らしい。
「いや、アリス様。そうではなくてですね。俺が退出するので」
「いけません!、わたしのような一介の王女に敬語も敬称も不要です!ですのでアリスとお呼びくださいませ」
話聞かねーなこの王女様は。
「いや、他の人に見せたくないから俺が退出を」
「ダメ、でしょうか……?」
くっ。その美貌でそれはやめてくれ。
「わかりました。いや、分かった。わかったからアリス。俺はこれで退出を」
「では早速ハジメ様のステータスを確認しましょう!」
あーもう誰か話の通じるやつを連れてきてくれ。
そうして俺のステータス確認が始まった。




