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第十八話 壁紙をガリガリしてはいけません

 ガリッ……。

 ……ガリガリッ。

 朝は気持ちの良いポルターガイストが目を覚ましてくれます。

 ハジメです。

 母さん。

 俺、気持ち悪い魔剣の伴侶ができました。

 健やかなるときも、病めるときも、後悔しかありません。

 昨夜の就寝前のことです。

「おいラグナロク。寝るときぐらい一回離れてくれ。お前が俺の背中にしがみついているせいで、うつ伏せでしか寝られないんだ」

 俺の背中の大剣が左右にブオンッブオンッと風切り音を立ててスイングしている。


「やめろ!!それすると俺の背中がちょこちょこ切れるんだ!!!猫に強力に引っ掻かれたみたいになって地味に痛てーんだよ!」

 それでもラグナロクは横スイングを辞めない。


「じゃじゃ、じゃあ、こうしよう。明日お前に合う鞘を武器屋に行って作ってもらおう。そうしたらほらお前は安全!なんならお前を抱き枕にだってできるぞ!?」

 その瞬間ラグナロクのスイングがピタッと止まる。

 心なしか、金属製の癖にふにゃふにゃになったかのようにグネグネして見える。

 俺の背中から両腕を使ってぴょんと離れると、器用に窓枠に捕まり、これが赤ん坊ならつかまり立ちすごいねーという場面だが、剣が窓枠を腕だけでよじ登っているのは恐怖しかない。

 ガリッ……。

 ガリリッ……。


「やめいやめい!お前がガリついてるのは王城の高級絨毯!!傷つけちゃ駄目なの!!」

 なんとなくシュンとするラグナロクだが、それでも気持ち悪さが勝っている。

 俺もなかなかに疲れた。

 そもそうだ。

 あの後城に戻った俺は、夕食も、風呂も一向に離れないラグナロクをくっつけたままこなさなければならなかった。

 いたるところで刀身が背中にあたり、痛てっ、うぁああと俺の悲痛な叫びが城に響いてしまったのだから。

 国王のトールも第一王女のエレンも、何なら王妃のルーナも一様に引いてたよ……。

 何が悲しくて転生数日でこんな地雷を拾わなきゃならんのだ。


「おいロキ!聞こえてんだろ?これなんだよ!?」

『あら珍しい、アンタから声をかけてくるなんてね』

「お前こいつのこと知ってたろ」

『知らないわけないでしょ?』

「じゃあ教えろよこんなメンヘラ扱いきれねーよ!」


『そりゃあアンタの豪運と+99の運が引き寄せちゃったのね。そもそもあの場でその娘を見つけられること自体がおかしいのよ』

「あん?」

『その娘はアタシが前にちょーっとお痛したときに使ってた武器でね。そのお痛ってのがアンタも知ってる神々の黄昏っていうやつなんだけど、その時せっかくだから景気づけにテキトウな人間使ってラグナロクって名前で剣にしたのよ。あの時は腕なんて生えてなかったけどね』

「それが、俺が見つけられること自体おかしいにつながるんだよ」


『強すぎたのよその娘。あまりに強すぎてちょっと気味悪かったから、アタシの管轄世界、アンタがいるところね?そこに放り込んだってわけ。ただ、アンタにわかりやすく言うなら、ゲームだと隠しアイテムぐらいのレアなのよ。一度クリアして手順踏んで条件揃えてやっと見つかるか?ってぐらいの』

「一発で見つかったんだが?」

『それがおかしいって言ってんのよ。確かにあのクエストはアンタが戦場見たら、胃の内容物吐き散らしてのたうち回って面白いかなーって思って冒険者ギルドに紛れ込ませておいたクエストだけど、アタシとしてもまさかそこにあの娘がいるなんて思わなかったわ』

「て、てめぇ……」

 つい握りこぶしに力が入ってしまう。


『でもいいじゃない。その娘、武器としては破格の戦闘能力よ。その娘振り回してれば戦場を知らないアンタでも手傷を負うことすらないでしょうね』

「そんなに、強力なのか??こんなにキモイのに!?!?」

『キモさは関係ないわ。でも気をつけなさい。その娘、聖属性の攻撃だけは弱点だから。それなりに強い聖属性攻撃を刀身の刃じゃないところで受けたら折れちゃうわよ』

「むしろ折ってしまいたいのだが……」

『アンタ、意外と人でなしね。でも戦場で折れたらさすがのその娘でも戦闘力ゼロになるわ。あとはあんた自身の強靭でツライ拷問おもちゃになるしかないわね』

「お前の方が怖えこと言ってるよ」

『いや、その方が面白い展開に……。ハジメ!ちょっと急用思い出したわ!せいぜい頑張ってアタシを楽しませなさい!じゃねっ』

「お、おい俺の話はまだ終わってない!」

 ロキからの返答はなかった。

 あのクソ幼女。忘れねーからな。

 ふと視線を感じてその方に目を向けると。


「おおっあ!!やめろ!壁紙にまでガリつくんじゃねえ!!」

 ロキとの話を聞いていたラグナロクがあたり一面の壁紙に呪いの文字を書きまくっていた。


「「折るの?」」

 これが所せましとガリつかれてる。


「折らない!折らないから!とにかく王城でガリつくのはやめてくれぇぇええ!」

 これが昨夜の出来事である。

 そして今朝なわけだが……。


 ガリッ……。

 ……ガリガリッ。

「「折らない?」」


 ガリッ……。

 ……ガリガリッ。

「「折らない?」」


 ラグナロクの地雷女子レベルが上がってしまった。

 今日は……。

 鞘作りに行こう。今すぐ。

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