第十六話 カサカサとそれはGのように
まずみんなに確認したい。
自身の身体の一部で、金属音がするところはあるか?
無いよな?
俺にもない。
「ハジメ様!抜けました!」
「ああ、ありがとう!でも勢い余ってあっちの方に投げ」
……おっと?
「アリスさんや」
「はい」
「この世界では、剣から腕が生えたり、はたまた腕から剣が生えたりするのか?」
「ないですねそれは」
「ですよね」
「ですね」
ではあれは?
確かにおかしいとは思ったよ?
そりゃそうだ。
投げたら金属音だもん。
てか、ここまでの俺のシリアスな感情返せよ。
もうこれ、冬虫夏草みたいなもん掘り当てたみたいになってるじゃん。
俺の頭はぐるぐる回る。
すると助け出した、もとい投げ捨てた腕付きの剣はグググと動き出している。
その姿はまるで、そう、台所の天敵Gのように。
腕付きの剣は鍔の部分、と言ってもこの世界の剣はどちらかというと西洋風だから横に伸びた鍔の部分が、女性の腕なのだ。
黒いネイルがバッチリと決まったギャルかよって見た目の女性の腕なのだ。
もうこの時点で驚きより嫌悪が勝ちそうな見た目なのだが、音があるとするなら、もうこれ一択。
カサカサ。
カサカサと腕を器用に動かして、刀身を引きずりながら歩き回るのだ。
それも超高速で。
さらにはだ、その剣は一目散に俺に向かって走って?来るのだ。
「うぁぁぁぁあああああああああ」
つい叫びながら逃げてしまう。
アリスは呆気に取られているが、明らかにその光景を引いた目で見ていると思う。
ついには剣は俺を捉え、足をつかみ、服をつかみ俺の身体を登ってくるのだ。
「キモイキモイキモイ!!!!!!アリス!とって!これ取ってぇぇええええ!!!!」
俺はアリスに向かって走り出す。
「きゃぁぁあああああああ!!こっち来ないでくださいハジメ様!!!!!!」
何ということだろう。
亡くなった女性と思い瓦礫から出してみたら、まさかのキモさ満点の呪いの武器みたいな剣だなんて誰が想像できる?
結局そのネイル剣、いやネイル魔剣は俺の首にぶら下がっている状態を定位置としやがった。
前から見れば女性が後ろから抱き着いている見た目。
だけれど後ろから見たら腕から生えた剣が背中にぶら下がっている見た目。
「ぎもぢわるいぃ」
俺の背中に収まったネイル魔剣はさらに器用なことをする。
ふと俺の背中から俺の腹側に剣の部分を回すと、剣先で地面に文字を書くのだ。
「「ラグナロクって呼んで」」
「ラグナロク?」
するとラグナロクは地面に丸をガリガリと書いた。
「あれそれって神々の黄昏じゃなかったっけ?てか、やっぱりキモイ」
自己紹介する剣ってなによ。
結局ラグナロクは俺の背中から離れず、残りの仕事の間も、帰るときも、ゲートをくぐるときもずっと俺の背中にへばりついていた。
知ってるよ?
他のクエスト参加者がずっと俺を引いた目で見ていたこと。
ほんとむき身の刀身が俺の背中に刺さるんじゃないかと何度ひやひやしたか。
ギルドに戻ると、俺とアリスは六番窓口で結果報告をすることにした。
心なしか、朝ピッタリ俺にくっついていて、なんなら俺の手を引いていたアリスが人一人分ぐらい俺から離れてる気がするけど。
「おじさーん。報告しにきたんだけどー」
「おー小僧。死なずに帰ってき、おぁあ!?!?!」
ルードは俺の背中を見て目を白黒させている。
そりゃそうなるよね。




