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第十五話 人が埋まってるよ!!!

 ずっと疑問だったことがある。

 紛争地帯って言うぐらいなのだから、近くの町や村は被害が出ていてもおかしくないはずなのに、不思議とこの国は全くその気配がない。

 かといってクエストに馬車みたいなので行くにしたって日帰りは無理だろうという矛盾が俺の中に残っていた。

 翌朝アリスと城を出発すると、どういうわけか冒険者ギルドに向かうことになった。

 何か開始手続きでもあるのか?

「あらおはようアリス」

「エルマ、おはよう。今ゲート空いてる?」

「空いてるわよ、この時間だし、行くのってどこだったっけ?」

「ミッドよ」

「それなら、ちょっと待って確認するわ」

 そういってエルマは手元の端末で調べている。


「問題無いわね、二階のゲートから飛べるわ。今なら待ちなしよ」

「ありがとエルマ!じゃあ行ってくるね」

「はーい行ってらっしゃーい」

 本当に幼馴染なんだなぁと思う。

 俺も挨拶ぐらいはしておいた方がいいのかな。


「エルマさん」

「っひゃい!!」

 ん?


「行ってきます」

「はい!ハジメ様の無事のご帰還をお待ち申し上げておりますぅ」

 顔を赤くし、もじもじしながら頭を下げてくるエルマさん。

 なんかグッときます。


「ハジメ様!いきますよ!」

「わかったわかった」

 あれ、昨日もこんなことなかったっけ?

 てか、ゲートってなんだ?


「アリスアリス」

「はい、ハジメ様ハジメ様」

 真似せんでよろしい。


「ゲートって、なんだ?」

「ゲートはですね、こことクエスト先の最寄りの拠点を瞬間移動でつなげるものになります。正式名称はどこでも……」

「待った」

「はい?」

「それ以上言われるとなんかまずいことが起きる気がするからいい。どういうものかはわかった」

「そうですか?」

 なんとかギリギリのところで踏みとどまれた気がする。

 ありがたいことに、そのゲートとやらはどっかのピンクの扉ではなく、しっかりとした異世界感あふれるものだった。

 全身用の姿見を三倍ぐらいの大きくした感じで鏡の部分はもやもやした光で満たされている。


「これって向こうからもこっちに来れるんだよね?」

「そうですよ」

「だとしたら、紛争地域とつながってるってやばくないか?」

「そこは問題無いんです。受ける側が許可していないと通れないようになっているので」

 なるほどそういうことですか。


「じゃあ行きますよハジメ様!初めての紛争地域に驚かないでくださいね!」

「何をいまさら」

 そういって初めての魔法体験をして瞬間移動した俺だが、正直なめてた。

 ちゃんと紛争地域だった。

 瓦礫がいたるところにあり、人の姿は見えないが血の跡はしっかりと残っている。

 ここで戦争があったのだなという感覚を嫌でも感じさせる光景だった。

 俺は若干の眩暈を感じながらも割と平然としていられるのは、ヘルがくれた各種耐性で精神が強化されているからだろうと思う。

 早朝から参加した俺たちは、残骸撤去をしている班の班長に挨拶し、午後までは作業内容と注意事項を説明された。

 気分が落ちるはずなのに、昼食も問題無く摂れたのは、本当にヘル様様という気分だった。

 午後に入り本格的に作業をする。

 作業はいたって簡単なのだが、確かに肉体疲労が激しい。

 何しろ大人一人より大きな瓦礫を一人で撤去して一か所に集めなければならないのだ。

 アリスはあれだけ奇行が目立っていたのに、クエストとなると全く違った。

 テキパキと作業をこなし、額に汗して働く姿をかっこいいと思ってしまうほどだった。

 俺も負けていられないなと思いつつ、それでも自身の体力には勝てず、荷物置き場まで戻って栄養剤を飲むことにした。

 バッグから栄養剤を漁っていると、ふと奥の瓦礫が目に留まった。


「あ、あああアリス!!!!!!!!」

 つい叫んでしまう。


「ハジメ様!?!?どうされました????」

 アリスが吹っ飛んできた。


「あ、ああ、あれあれあれ!」

 あまりに俺は動揺していて言葉になっていないが、俺が指さす先には、綺麗な女性の腕が瓦礫から手だけ見えている状態だったのだ。

 両手がだらりと瓦礫の隙間から伸び、腕と腕の間には剣の柄のようなものが見える。

 状況は想像に難くなかった。


「アリス!!人が埋まってっ」

 言葉が詰まってしまう。


「ハジメ様。これが冒険者の仕事の一つです。当然ですが亡くなったかた、乱暴された女性、四肢を失った負傷者。これからたくさん見ていくことになるんです。きっとあの方はもう亡くなられています。やはりハジメ様には冒険者は」

「アリス!出してあげないと!!亡くなってるかもしれない。でもあんなとこに放置されるなんてあんまりだ!!」

 きっと各種耐性の効果が追いついてきたんだろう。次第に頭がさえてくる。


「ハジメ様。そうですね。あのままではあまりに悲しいですものね。瓦礫をどけてどこかに葬り供養いたしましょう」

 俺はアリスと協力して腕を瓦礫から引き抜くことにした。

 少しおかしいが力の関係上、アリスが瓦礫を持ち上げ、俺が腕を引き抜くことになった。

 アリスが少し持ち上げた瓦礫の隙間から俺は力いっぱい腕を引っ張った。

 ずるっと抜け出した腕は俺の手からすっぽ抜けて反対方向に飛んで行った。

 っ、カランカランカラン。

 ……ん?

 人間の腕は、あんな金属みたいな音がするのか?

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