第十四話 最悪な朝チュン
その夜はなんだか眠かった。
初めてギルドに登録して、ルードと小競り合いをして、翌日のクエストに向けて栄養ドリンクを買い込み、アリスに引きずられるように街を案内された。
風呂まで入って通された部屋は本当にアリスの部屋の隣だった。
王様よ、本当にいいのか?これで。
ベッドに横になると天井の高さを改めて感じる。
「あー俺。本当に異世界に来たんだなぁ。そういえばあの時俺火葬される途中だったとか、冷静になるとほんと笑えねーわ」
『アタシは笑えたわよ。もう本当に爆笑って感じだったわ』
「またお前か」
『またとはご挨拶ね。アタシのおかげで冒険者になれたんだから感謝しなさいよ』
「何が感謝だ。お前、国王にホラー体験させてどうすんだよ」
『あれは本当にムカついたわ。なんならこの世界ごと消してやろうかと思ってデリートボタン押しかけたぐらいよ』
「そんなことで世界消してたらいくつあっても足りないだろうが」
『そん時はそん時よ』
やっぱりロキは神話のロキそのものなんだなぁと思う。
問題児以外の何者でもない。
『ハジメ、アンタ明日残骸撤去なんでしょ?せいぜい死なないように気をつけなさい』
「ルードが言うには死ぬようなクエストじゃないみたいな感じだったぞ?」
『ふん。わかってないわね。紛争地帯は紛争地帯なのよ?野党だってたくさんいるし、魔道具で作られた不発弾だってたくさんあるわ』
「心配してくれてんのか?」
『なっ!?なんでアタシがアンタの心配しなきゃいけないのよ!?!?』
「だって今、死なないように気をつけろって」
『言ってない』
「いや、言っただろ」
『言ってないったら言ってない!!ふん。もういいわじゃあね!!!!』
なんだこの癇癪おこした彼女みたいな反応は。
そう言い残してロキの声は聞こえなくなった。
なんだかぼーっとするなぁ。
やっぱり俺の身体は思ったより疲れがたまったらしい。
そんな眠気を無理やり覚ますようにドアがノックされる。
「ハジメ様、今少しよろしいでしょうか?」
「あ、ああ。いいぞ」
「夜分に殿方の部屋へ失礼いたします」
「では入りますね」
そういうがなぜか入ってこない。
これはあれか?男子の部屋に入る直前で気恥ずかしくなってしまったという感じか?
「ぐっ、ぐぐぐ」
なんか女の子から出てこないような力を入れるような声が。
少しずつ開いていくドアの隙間から、米俵でも担いでいるのか?というほどの大量の本を積み重ねて抱えたアリスの姿が見えた。
「ひっ……」
つい俺から出たこともない声が出てしまう。
一瞬でも男女のそういうのを期待した俺を誰が責められよう。
「これを、お渡し、したくって!!!」
ドンっではなくズンッという音を響かせて床に本が置かれる。
「これ、は?」
「はぁはぁ。これはですね。この世界の、常識などの本と、明日のクエスト先までの地図と情報と、私のプロフィールと、魔導書と、剣術指南書と、エトセトラです」
なんか変なの混ざってなかったか?
「なぁアリス、今変なのが混ざってた気が」
「それでですね、ひとまず明日に向けて明日のクエストに関することだけご説明させていただきたいなと思いまして」
話聞いてねーよ。
「今じゃないと、ダメ、か?」
俺はもう寝たいのだ。
「ダメですよ。冒険者にとって情報は命なのですから」
「本当に、今じゃないとダメなのか?」
「……!まさかハジメ様、こんな勉強よりまず私のことを知りたいと?いけませんハジメ様!!!でも、、確かにベッドもありますし、手取り足取り教えて差し上げることもやぶさかでは」
「あーーーー!ストップストップ!!!!そういうのいいから。マジで。わかった。その情報、クエストについて教えてくれ!」
「あら、残念です」
そういうアリスの小悪魔のような表情は確かに惹かれるものがあったが、落ちたら本当に社会的に落とされるんだろうなという感覚が俺の首筋の冷や汗になって流れた。
それから数時間、アリスにみっちりと起きている紛争とその渦中となる戦場の現状と、どの国とどの国の紛争なのか等を事細かく教わった。
だが、眠気が強い俺は話半分で聞いていて、気づくと寝落ちしてしまっていた。
きっと話されたことの一割も頭に入ってないと思う。
翌朝目が覚めると、隣にはなんとなく予想はしていたがアリスが寝ていた。
もちろんお互い着衣に乱れはないが、人生初の朝チュンは最悪の気分だ。
こんなテンションで今日のクエスト大丈夫なんだろうか。




