第十三話 泊りがけはダメなのです
「なんだ、アリスなら早く言ってよ」
お?受付さん急に言葉が崩れたな。
むしろいいのか?相手は一応第二王女だぞ?
「だってぇ。ハジメ様の初めてのご登録だもん。少しでも楽しんでもらえたらって思うじゃない?」
あれ、アリスも気にしない感じ?
「アリスって、もしかして受付さんと知り合い?」
「エルマは私の幼馴染なんですよ!」
あーそういうやつですか。
てか、受付さんエルマさんって言うのね。
「なーにが楽しんでもらえたらよ。こっちは毎回毎回事務手続きをマニュアルに従ってやるのは肩凝るんだから」
大分パンチ効いた姉ちゃんに早変わりしたな、おい。
「ごめんごめん!でも、これでハジメ様が王城で住んだりとかわかったでしょ?」
「はいはい。じゃあニブル王城、と。書き換えといたわよ」
「ありがとエルマ!エルマだったから話が早いわ!」
「どの口が」
なんか、エルマさんの言葉が棘っぽいのはなんでだ?
「えーっと。エルマさんはアリスの幼馴染で、なんとなくなんだけど、お転婆すぎるアリスに手を焼きまくってるのがエルマさんで、合ってます……?」
「わかります!?!?この子ったらほんと手がかかって……!!この前だって、勝手にオーガの討伐受けて行ってきちゃうし。国王様からアリスのクエスト受注は私を通すようにって言われてるのに、なんでそんな勝手な……」
分かる気がする。
アリスは何と言うか、人の話聞かないもんな。
「わか、、る。気がする」
「ハジメ様。貴方話が分かりそうね。今度飲みに行きましょ!」
「ちょっとエルマ!!!ハジメ様取らないで!!!」
頼むから目の前でガールズトーク始めないでくれ。
俺はその場から逃げたい気がしてきて何とか話題を振った。
「エッ、エルマさん!!!」
「は、はい!!」
「クエストってどうやって受けるんですか!!!!」
つい大きな声になってしまった。
「ろ、六番窓口ですぅ!!」
あれ、なんかエルマさんの態度が変わったぞ?
なんか、合ってるかわからないが、キュンとしましたみたいな表情な気が。
「ハジメ様。すぐそうやって女子を誘惑するのはよくないと思います!!」
なんですと!?
「いいから行きますよ!!」
そういって俺はアリスに手を引かれ、六番窓口へ行くことになった。
見ないようにはしたけど、エルマさんが俺の背中に割と熱め視線を送っているのは気づいているけど気づかないフリをしておこう。
「えっと。ここで確認すればいいんだったな。すいませーん。クエスト受けたいんですけどー」
「はいはい。ちょっと待ってくださいねぇ」
奥から出てきたのは初老のおじさんという感じの男性だった。
「で、今日はどんなクエスト受けたいの?とりあえずランク見ないと紹介できないからこの魔道具にカードかざしてね」
これって、何なら日本より進んだ文化になってないか?
とりあえずかざさないと話が進まないって感じか。
俺はさっき受け取ったカードを魔道具にかざしてみる。
っぴろん。
なんか気の抜けた音がするが、読み取れたらしい。
「あー。ハジメさん。あんた今回が初めてだね?それだと、紹介できるのはこれくらいだなぁ」
そういって初老のおじさんは数枚の用紙を出してきた。
難易度F、紛争地帯の残骸撤去。
難易度F、薬草収集。
難易度E、ゴブリン討伐。
何と言うか、やっと冒険者らしくなってきたじゃないの!
やはり、冒険者と言えばこれしかないでしょ。
「じゃあ、ゴブリ」
「残骸撤去で!」
あ、アリスさん?
「残骸撤去でお願いします!!」
「アリスよ。俺はゴブリンがいいのだけど」
「いけませんハジメ様。ゴブリンが危険とかそういうことではないのです。ハジメ様は今回初めてのクエストです。まずはクエスト受注から完了と報酬の受取までの流れをきちんと学ぶべきです」
あれ、この子こんなまともなこと言えたっけ?
「確かに。アリスまともなことも言えたんだな」
「そんなに褒めないでください」
頬を染めるな。褒めてねーぞ。
「でも薬草もいけるんじゃないか?」
「いやいやいやそれはできませんハジメ様!だってそれは二泊三日のクエストじゃないですか!対して残骸撤去は明日だけの日帰りです!」
やっぱり最初は泊りがけとか危険があるのだろうか。
「長くなると何か危険とかあったりするのか?」
「だだ、だってですよ。二泊三日だなんて、そんな、あっ……。いけませんハジメ様、初めてのクエストで一緒のテントだなんて、ふしだらですわ!!!あ、でもハジメ様がどうしてもとおっしゃられるなら……!!!」
うん。やっぱダメだこの子。
「おじさん。残骸撤去で」
「あいよー。じゃあこの用紙にサインと拇印ね。このクエストは未達成罰則はないスポットクエストだから、うまい事現場の役に立ってきてくれ。じゃあ明日は現地集合になるから遅れないようにな」
「わかりました。他に気を付けることありますか?」
「いや、ないね。これ紛争地帯のってなってるけど、紛争自体はもう別の地域に移ってるし、工事現場の残骸撤去みたいなもんだからほとんど肉体労働だけよ」
「じゃあ、装備とか剣とか魔法とかは?」
「あるわけないだろ。必要なものは動きやすい恰好と、弁当ぐらいだ。ただ力仕事だからな。怪我と弁当は自分持ちを忘れないでくれよ。まぁこれで怪我するようなら討伐クエストなんて初日で死ぬってレベルだから、ひとまず頑張ってきてくれれば安全に帰ってこれるよ」
「そうですか。なんか期待してたものじゃないけど、初めてのクエストなんで頑張ってきます。おじさん。丁寧にありがとうございます」
「いやいや、気にしなくていい。そうそういい忘れてたけど俺はルードって言う。このギルドのギルドマスターだ。よろしく頼むよ小僧」
そういっていたずらっぽい感じに笑ったおじさんもといルードは、お前いま相手がトップだと思ってビビっただろと言わんばかりの顔をしている。
ギルドマスターが受付に出てくんなよと思ったが、なんか引いちゃいけない気がした。
「小僧ですか。わかりました。ギルドマスターのルードおじさんどうぞよろしく」
なんか男の子のこういう小競り合い。あるじゃん?
「俺におじさんと言ったのは、ハジメが初めてだよ小僧」
お互い引けない上に、額には怒りマークが出ていたと思う。
でもなんだかこのおじさん。憎めないなぁ。




