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第十二話 城が私の家

 冒険者の登録ってどうやってやると思う?

 水晶に手をかざして魔力を計り、血を一滴たらすとか?

 この世界の冒険者登録は、それはそれは……役所だった。

「ではこちらの用紙に生年月日、お名前、性別、住所を記載して、三番窓口にご提出ください」

 そう言って受付というプレートが書かれた窓口で説明してくれる眼鏡のお姉さんは、感情のかけらもない淡々としたトーンで案内してくれている。


「なぁアリス。冒険者登録ってこんな感じなのか?」

 小声でこそっとアリスに聞くが、アリスはそれが当然という顔をしている。

 アリスは俺からの質問に少し悩むような顔をしたが、パッと何かに気づいた表情になった。


「ハジメ様の元居た世界ではこの様な複雑な手続きは無かったのですね?」

 いや、違う。そうじゃない。むしろ日本の役所そのものなんだよ。

 電光掲示板に変わり魔力で表示されるモニター。

 受付で番号札をとって呼ばれるまで待つための長椅子。

 極めつけはこれだ。

 一番窓口受付。

 二番窓口ギルド申請。

 三番窓口新規申込。

 四番窓口各種証明書。

 五番窓口素材買取。

 六番窓口クエスト。

 七番窓口退会申請。

 これ見て役所と思わないやるいるのか?

 しかもだ。

 異世界特有な粗野な感じというか、いかにも冒険者が集いますみたいな感じが微塵も無いのだ。


「もしかして、この世界に来た俺みたいな異世界の人間って結構いるのか?」

 俺は申し込み用紙に必要事項を記入しながらアリスに問いかける。


「そこまで珍しいということはありませんね。むしろその出自が問われるのでございますよ。そういう方向けにほら」

 そういってアリスは用紙の住所のところを指さす。

 あ、確かに今の俺住所不定で冒険者でもないから無職だわ。

 俺はアリスが指さすところを見ると……。


「マジかよ。なんだこの、異世界出身の為住所なしってチェックは!?」

 そうなのだ。

 てか、異世界出身だからって住所を書かなくても、住所不定でもいいのか?

 俺の疑問にアリスが勝手に説明を続けてくれる。


「このチェックを入れておくと、登録と同時にハジメ様の戸籍が作られます。そのあと、住所が無いので格安の賃貸を紹介してくれる流れですが、今回は不要ですね!」

 なぜかアリスはキャッキャしながら、かつ少し頬を赤らめながらはしゃいでいるように見える。


「ち、賃貸に戸籍!?そんな言葉まであるのか。確実に俺の世界から来た公務員あたりが作った制度だなこりゃ。いや、今回は不要?」

「はい!だってハジメ様はこれから私と同じニブル王城で生活するんですもの」

「え!?俺城で生活するの!?!?」

「はいもちろん!!お部屋は私の隣の部屋にさせますのでご安心くださいね!」

 そういってアリスはくねくねしながら悶えている。

 住所を得られるのはうれしいが、初回住居が王城って、スゲーな。

 そうこうしていると、用紙が書き終わったので三番窓口に提出しに行くことにした。


「はい。記載内容も問題なさそうなので、こちらのお名前の横に、こちらの朱肉を使って拇印をお願いします」

 なるほど。そこまで日本っぽい感じなのか。

 さすがに印鑑の文化を根付かせるまでは、俺の先輩異世界転生者でもできなかったと見える。

 にしても、この世界、外からの文化受け入れすぎじゃないか??


「朱肉、朱肉、えっと朱肉はどれですか?」

「ですからこちらです」

 そういって指さされたのは全く朱くなかったのだ。


「これが朱肉?」

「はい。あ、異世界の方でしたね。こちら発案者が朱肉と名付けたので朱肉という名前ですが、魔素を指につけるものなので朱くはないんですよ」

 受付さんとの初めてのまともな会話な気がする。


「な、なるほど」

 呆気にとられるも、朱くない朱肉を使って拇印を捺すと、その印影は朱で表示された。


「朱いんじゃねーかよ」

「これはそういう仕組みのものなんです」

 そういって受付さんは書類をもって受付の奥に姿を消した。

 三分も待たされなかったと思う。

 受付さんは、銀色の名刺サイズの板をもって帰ってきた。


「こちらがハジメ様の冒険者カードになります。このカードは再発行する場合手数料がかかりますので紛失にはご注意ください。また、こちらのカードには冒険者ギルドで貯蓄したハジメ様の預金と紐づいているので、外での買い物の際に決済用魔道具にかざしていただければ冒険者ギルドのハジメ様の預金からお支払いいただくことが可能です」

 これは驚いた。この世界じゃタッチ決済が主流かよ。


「あれ。でもそれだとこのカードで決済を俺以外ができちゃうことになりますか?」

「そのご心配は無用です。登録いただいている拇印の方の手で持っていただく場合にのみ決済できますので」

 はいはい。指紋認証も完備ですか。さすがにもう驚かねーぞ。


「あーでも……」

「でも?」

「野党などに手を切り落とされて使われれば、できないこともないのでお気を付けを」

 そりゃ驚くわ!ちょっとバイオレンスが過ぎるわこの世界。


「お、おおう。わかりました。ひとまず気を付けて身に着けるようにします」

「それがよろしいかと思います。では、ハジメ様次にですが、現在ご住所が無いのでこちらの物件から」

 そう受付さんが言いかけたタイミングでアリスが割って入ってきた。


「それは大丈夫です!ハジメ様は私と同じ家に住みますので!!」

 アリスさんアグレッシブっすね。


「そうですか。それでしたら住所に入れておきますので、現在のご住所をお教え願いますか?」

「はい」

 そういって被っていたフードを脱ぐと、アリスは言った。


「ニブル王城です!!」

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