第十一話 亡霊は神様
翌朝俺は国王との謁見に呼ばれた。
イメージしていた大広間のようなところでの謁見ではなく、応接室のようなところに通されたのが不思議だった。
しばらく部屋で待っていると、ドアが国王が入ってきた。
「座ったままでいい。楽にしてくれ」
思っていた国王の見た目ではなく、だいぶカジュアルな服装の国王が現れたのだった。
ついで、アリスをもっと大人にして老けさせたような、女の魅力の最盛期みたいな女性が伴って入ってきて、それに続く形でアリスと見たことのない女性が入ってきた。
四人とも俺の目の前の席に座り、これから謁見とやらが始まるらしい。
「まずはこうして時間をくれたこと感謝する。わがニブル国国王のトールだ。よろしく頼む」
おいおいロキに続いてこっちはトールですか。
つい立ち上がって挨拶してしまう。
「はっ、初めまして。国村 一と申します」
最敬礼でお辞儀をするジャパニーズスタイルがこの世界で通用するだろうか。
「そう固くならないでくれ。話はアリスから聞いている。紹介しよう、私の横にいるこの世界一美しい女性が私の妻のルーナだ」
ん?なんか雲行きが怪しい紹介だな。
「そしてその隣がこの世界で一番の愛嬌を持っているエレン、第一王女だ」
ほう。
「最後に、アリス、はもう顔見知りだな。この世界で一番の知性を持っている第二王女だ」
これはあれか?目に入れても痛くない俺の家族いいだろっていう自慢か?
それとも、この謁見の場でも惚気るようなパパ感あふれるパフォーマンスか?
「ご丁寧にありがとうございます」
ふとアリスに目を向けると、若干あきれた顔をしているが、他の女性陣2名は照れているように見える。
まんざらでもないのかよ。
「ではこれでお互い心の氷も溶けただろう。本題に入ろう」
急にマジな顔はやめてくれ。ギャップでかっこよく見えちまう。
「はい。よろしくお願いします」
「つかぬ事を聞くが、この謁見のこと、ロキ様へ伝えたりはしているか?」
「いえ、特には」
「そうか。実はな」
そういって国王は語りだすのだが、どこか少しおびえている様子も見て取れる。
「昨夜私は執務室で書類に目を通していたのだが、ふと見覚えのない書類に目が留まってな。白紙だったのだが拾い上げると、赤い文字で、冒険者を認めろ。と浮き上がってきてな」
ん?するってーとこれは、国王様にロキがよろしくない方法で神託とやらを投げたな?
俺の顔は引きつり始める。
「……は、はい」
「その後、驚いた私は、疲れているのだろうと寝ることにしたのだが、寝室の奥に綺麗な金髪の少女が見えるのだ。そしてその少女は私に一言。認めるよな?とだけ言って消えてしまったのだ」
あのクソ幼女。これじゃただのホラー体験じゃねーか。
「そ、それは恐ろしい体験をしましたね」
取り繕う方も楽じゃないのだ。
周りの女性陣は体を震わせて恐怖を見せている。
「そして今日の朝、ハジメ君が冒険者をしたいと言うが御遣い様である身で冒険者は危険だから国で保護してほしいとアリスに言われてな。私は全身の毛穴が開く思いだったぞ」
アリスは目を大きく見開き呆気に取られている。どうやらこのことは朝話したらしく、国王である父はさぞ驚いたそうな。
「そこで気づいたのだ。あれは死んだ冒険者の亡霊などではなく、ロキ様からの神託だったのではないかとな」
ロキよ。お前亡霊認定されてるぞ。
「すみません。確かに昨日謁見のことはロキ……さまに話してはいませんが、悪魔幼じょ……ロキ様からお声がけがありまして、冒険者をするのは危険だからと保護してくださるかもしれないという旨を伝えました」
「やはりそうだったか。これはロキ様に悪いことをしてしまった。ロキ様を亡霊と勘違いしてしまうなど。ではハジメ君。君は冒険者になりたいのかね?」
「ありていに言えばそうです。ご存じかと思いますが俺はこの世界の人間ではありません。せっかくこの世界に来れたのだから冒険者をしてみたいと思っています」
「やむを得んな。しかし冒険するにしても危険が付きまとうどうしたものか」
すると高く手を挙げたアリスが大声で進言してくる。
「お父様!それでは私が同行いたします!」
おう!?
「いやいやアリス、さすがに俺の冒険者生活にアリスを連れて行く方が危険だ」
「ハジメ様、お気遣いは無用ですわ。私こう見えてSランク冒険者ですもの」
いやいやいやいやそうはならんだろ。
王族がSランク冒険者ってどこの世界のラノベだよ。
「しかしなぁ、アリスにもしものことがあれば私は、私は」
国王はおよよよという音が聞こえそうな仕草で涙を流す。
「心配ございませんわお父様。きっとロキ様のご加護が私とハジメ様を導いてくださるはずです」
これもう国レベルで常に監視される展開じゃん。
「仕方ない。アリスの同行を条件にハジメ君の冒険者登録を許可しよう」
きゃーっと喜ぶアリスの姿が見えるが俺としてはこんなのでいいのだろうかと思ってしまう。
冒険者の始まりにSランク冒険者が俺をお守してくるって、なんか冒険の醍醐味がなぁ。
『ハジメ!なんでそうなんのよ!てか何よこの女!これじゃハジメが苦労しないじゃないのぉぉぉお!!』
まさかのロキのカットインだが俺にしか聞こえていないようだ。
「うるせーよ。頭の中で騒ぐな!」
「ハジメ君もしや、今ロキ様からのお声が届いているのか??」
国王ははっとした顔で俺に問いかけてくる。
「そうみたいです、どうも俺の冒険者を許可してくれたのを大儀だったと言っているみたいです」
『んなわけあるかぁ!ちょっと受話器変わりなさいよ』
俺は電話じゃねーよ、受話器ってあれか?俺の耳でもちぎって渡せってか!?
「そうかそうか。きっとロキ様のご加護なのだなぁ」
目の前で手を合わせる国王の姿が印象的だった。
『くっ。覚えてなさいよハジメ』
そういって声はしなくなったが、何を覚えていろと言うのだ。
こうして俺は、何とか冒険者になる許可を得ることに成功したのだった。




