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左遷された辺境ギルド長は、戦わないのに最強でした  作者: アズマユージ


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第五話 不安だらけの再挑戦

 再挑戦の依頼先は、町から半日ほど離れた遺跡だった。


 地下に降りるにつれて魔力濃度が上がり、最奥には小規模ながら階層ボスが確認されている。

 難度は低め。

 だが、油断すると事故が起きる――それが、この依頼の正体だった。


 前回の失敗理由は、はっきりしている。


 リリアが敵に近づきすぎた。

 距離が近すぎて焦り、詠唱を噛み、魔法が不発になった。


 その一瞬の隙を突かれ、隊列が崩れた。


 今回は違う。


 遺跡の入口で、マックスがちらりと後ろを振り返った。


「……なあ」


 視線の先には、カイがいる。


「ギルド長まで来る必要、あったのかよ」


 カイは歩調を緩めず、静かに答えた。


「今回は、必要です」


 戦力として数えられているわけではない。

 実際、カイは前に出るつもりも、魔法を撃つつもりもなかった。


 だが――配置を変えた直後の依頼だけは、別だった。


 書類の上では正しく見える役割分担も、

 実際の緊張下で機能するかどうかは、まったく別の話だ。


 誰が無意識に前に出るか。

 誰が焦り、誰が立ち止まるか。


 それは、現場でしか分からない。


 カイは戦場を見に来たのではない。

 人の動きを、見に来ていた。


 通路を進む途中、グレンが手を挙げた。


「止まれ」


 全員が即座に足を止める。


 壁沿いを進みながら、グレンは低く言った。


「前方、広間」

「階層ボスだ。動きは鈍いが、突進力がある」


 マックスが一歩前に出かけて、止まる。


 思い出したのだ。

 自分の役割を。


「俺が前だな」


「前だが、突っ込むな」


 グレンが即座に返す。


「盾だ。動かすな」


「……分かってる」


 短いやり取り。


 リリアは、その後ろに立っていた。

 前回より、明らかに距離がある。


 それでも、不安はなかった。


 目の前に、マックスの背中がある。

 横には、グレンの気配がある。


 ――守られている。


 それだけで、胸の奥の震えが少し引いた。


「リリアさん」


 カイが、小さく声をかける。


「詠唱は、合図を待ってください」

「焦らなくていい」


「……はい」


 広間に踏み込む。


 低い唸り声とともに、階層ボスが動いた。


 マックスが盾を構える。


「来い!」


 突進。


 衝撃が走るが、マックスは踏みとどまる。

 足元に、防御の魔法陣が淡く浮かんだ。


「効いてる!」


 グレンは返事をせず、影のように回り込む。


「今だ」

「リリア、第一段階!」


 リリアは深く息を吸った。


 距離は十分。

 敵意は、こちらに向いていない。


 詠唱が、噛まない。


「――強化魔法、展開」


 淡い光が広がる。


 グレンの動きが、目に見えて鋭くなる。

 マックスの防御が、さらに安定する。


 ――噛み合っている。


 カイは、誰にも聞こえないように小さく息を吐いた。


「リリア、次です」


 落ち着いた声。


 リリアは頷く。


 距離。

 時間。

 守り。


 すべてが、揃っている。


「――火よ」


 魔力が、綺麗に集まる。


「――ファイア・ボール!」


 炎の塊が一直線に放たれ、階層ボスに直撃した。


 低い悲鳴。

 次の瞬間、巨体が崩れ落ちる。


 静寂。


 マックスが、盾を下ろした。


「……終わった、か?」


「終わったな」


 グレンが短く答える。


 リリアは、しばらく呆然としてから、はっと息を吐いた。


「……で、できました……」


 カイは戦場を見渡し、頷く。


「ええ」

「無事です」


 それだけだった。


 派手な称賛も、歓声もない。

 だが――


 誰も傷ついていない。

 失敗もしていない。


 配置が、噛み合った。


 マックスが、背中をかきながら言う。


「……前に出ねえ方が、楽だな」


 グレンは、ほんのわずかに口元を緩めた。


「だろ」


 リリアは、胸の前で拳を握りしめる。


 ――怖くなかった。


 それが、何よりの変化だった。


 カイは、その様子を少し離れた場所から見ていた。


 ――まだ、最強じゃない。


 だが。


 このパーティは、

 確実に“機能し始めている”。

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