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左遷された辺境ギルド長は、戦わないのに最強でした  作者: アズマユージ


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第四十四話 アルトリウスの証言

 アルトリウスは、円卓の空席へ案内された。


 冒険者用の重厚な防具である金色のアーマープレートに身を包み、ゆっくりと席に着いた。


 口を開かずとも、その存在感は圧倒的だった。


 中央所属Aランク。


 銀牙リーダー、アルトリウス。


 その名だけで、この場にいる者の多くが力量を理解している。


 中央ギルド長が口を開いた。


「出席に感謝する」


 アルトリウスは簡潔に答える。


「必要と聞いたので来た」


 余計な言葉はない。


 椅子に腰掛ける所作にも、無駄がない。


 秘書室長が議事を再開する。


「では確認します」


「銀牙が本件へ関与した経緯について」


「説明をお願いします」


 アルトリウスは即答した。


「要請を受けたからだ」


 簡潔で無駄がない。


 総務局長が視線を向ける。


「正式依頼ではありませんね」


「承知している」


「それでも動いた理由は」


 一拍。


「必要と判断したからだ」


 曖昧な言い方にも聞こえる。


 だが、その場にいる誰もが理解していた。


 彼が軽い理由で動く人物ではないことを。


 秘書室長が続ける。


「当該案件の危険度について、どの程度の認識でしたか」


「極めて高い」


 即答だった。


「単独パーティでの対応は無謀だ」


「高レベルの複数パーティでの連携が必要だった」


 総務局長が確認する。


「国家級案件の可能性があると?」


「可能性はあった」


 断定はしない。


 だが軽視もしない。


 中央ギルド長が問う。


「現地指揮について」


「辺境ギルド長の指揮に入った理由は」


 アルトリウスは迷わなかった。


「最も勝率が高いと判断した」


 会議室が静まる。


「彼の判断は正確で合理的だ」


「役割分担も的確」


「判断が迅速で無駄がない」


 一拍。


「戦力を最大限に活用するには、それが最適だった」


 淡々とした評価だった。


 だが、それが最も重い。


 中央所属Aランクの評価としては、十分すぎるほどだった。


 総務局長が言う。


「中央の指揮系統ではなく、辺境の指揮に従った」


「問題があるとは思わなかったか」


「戦いの際には、中央も辺境も関係ない」


 即答だった。


「現場では、最適な布陣を採用するのみ」


「それだけだ」


 感情はない。


 ただの事実。


 秘書室長が確認する。


「防衛装置への対応について」


「破壊ではなく停止を選択した判断をどう評価しますか」


「妥当だな」


 短い言葉。


「破壊は出来なくはなかった」


「だがそうなると、復旧は困難になる」


「国力の著しい低下につながりかねなかった」


 合理的な説明だった。


 中央の論理とも矛盾しない。


 中央ギルド長が静かに問う。


「あなたの立場から見て」


「本件の指揮に問題はあったか」


 一瞬だけ、間があった。


 アルトリウスは考えているわけではない。


 言葉を選んでいるだけだった。


「まったく問題はなかった」


 はっきりと言った。


「むしろ」


 一拍。


「これ以上なく適切だった」


 円卓に沈黙が落ちる。


 総務局長が口を開きかける。


 だが、言葉が続かない。


 結果を否定できない以上、全面否定は難しい。


 アルトリウスは続けた。


「一点補足する」


 視線が集まる。


「今回の対応は」


「どこか一つでも判断を誤れば、被害は拡大していた」


 静かな声だった。


 だが、重かった。


「時間的余裕は少なかった」


「戦力も必要最低限」


「その状況で被害を出さなかった」


 一拍。


「これ以上を望むのは、戦場を知らぬ者の言葉だ」


 庇っているわけではない。


 ただ評価している。


 それだけだった。


 中央ギルド長が指を組む。


「銀牙としての見解は理解した」


 短い言葉。


 感情は見えない。


 だが、議論の前提が変わったことは明らかだった。


 単なる手続き違反として処理するには、結果が重すぎる。


 秘書室長が資料へ視線を落とす。


「確認事項は以上です」


 総務局長が言う。


「手続き上の問題は依然として残ります」


 正論だった。


 誰も否定できない。


 中央ギルド長が頷く。


「議論は尽くしたということでいいな」


 一拍。


「では、会議を終了する」


 ギルド長の宣言により、会議はお開きとなった。


 カイは何も言わず立ち上がって礼をした。


 セリーヌも同様だった。


 アルトリウスは椅子から立ち上がる。


「では、私はこれで失礼する」


 それだけ言った。


 発言は多くない。


 だが十分だった。


 中央の論理は否定していない。


 だが、現場の判断を軽視もしていない。


 その均衡が、この場を難しくしていた。


 中央ギルド長は最後に言った。


「本件の結果は、追って沙汰する」


 結論は出さない。


 だが、軽くも扱わない。


 それだけは明確だった。


 円卓の上に残された資料。


 そこに記された名。


 カイ・アークライト。


 その名は、すでに無視できないものになっていた。

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