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左遷された辺境ギルド長は、戦わないのに最強でした  作者: アズマユージ


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第三十一話 塔の正体

 魔獣の咆哮が塔の内部を揺らしている。

 破口からは、まだ新しい個体が流れ込んでくる。


 ブロムの盾がそれを受け止め、

 アルトリウスの剣が首を断つ。


 リーネが側面を制し、

 ユリウスの炎が通路を焼く。


 クラウディアの治癒が前線を維持し、

 その隙間で天衝が敵を捌いている。


 戦闘は続いている。


 だが、カイの視線は、戦闘から外れていた。


 彼の視線の先にあるのは、


 中央の柱。


 塔の中心に立つ、あの構造物。


 床に刻まれた線は、外周からそこへと集まり、

 魔力の流れも、すべてそこへ向かっている。


 魔獣の出現間隔は一定。


 行動パターンも一定。


 意思ではない。


 反応だ。


 つまり――


(制御装置か)


 カイは柱の根元を見る。


 台座の一部だけが、わずかに脈を打っている。


 そこだ。


 外部から供給された魔力が、あそこへ集まり、

 魔獣へと分配されている。


 そしてその制御が、塔全体の防衛機構として働いている。


「いくら倒しても、魔獣が減らん」


 アルトリウスの声。


 剣を振るいながら言う。


「ええ」


 カイは柱から目を離さず答える。


「倒しても意味はありません」


「供給源が止まらない限り、無限に沸きます」


 ブロムが魔獣を弾き飛ばした。


「だったら、その供給源を壊すしか無いってことだな」


「いえ、壊しません」


 カイは即答した。


 アルトリウスが視線だけ向ける。


「何故だ?」


「この塔は、おそらく防衛施設です」


 一瞬、戦闘の音が遠く感じられた。


「古いものですが、構造は非常に高度です」


 柱を見る。


「魔獣を制御する機構が存在するということは、

本来は“敵を迎撃する装置”だった可能性が高い」


「……つまり」


 ユリウスが言う。


「誤作動を起こしてるって訳か」


「おそらく」


 カイは短く答えた。


「現在は制御が外れ、防衛対象を識別できていない」


 アルトリウスが小さく笑った。


「なら話は簡単だ」


 魔獣の首を斬り落とす。


「やはり装置を壊してしまえばいい」


「いえ」


「それでは、最善とは言えません」


 カイは頷く。


「破壊ではなく、停止が正解です」


「この塔を破壊すると、この国の防衛力をも壊してしまいます」


「それでは、本末転倒です」


「魔獣をはじめとする外敵に、辺境が蹂躙されてしまいます」


「辺境は、この国の防衛の要」


カイは柱を見たまま言う。


「ここが崩れれば、中央も安全ではいられません」


理解はするも、納得までは行かないアルトリウスは、


矢継ぎ早にカイに聞いた。


「それはわかるが、どうやって停止させる?」


「それと、停止させた後どうする?」


 一拍。


「魔力の接続回路を切りましょう」


 その言葉に、数人が柱を見る。


 台座の下部。

 そこには細い線が束になって集まっていた。


 魔力の流れがそこへ吸い込まれている。


「なるほど」


 ユリウスが呟く。


「供給を断つわけか」


「はい」


「一度停止させてから再起動します」


「恐らく、リセットすれば誤作動は修正されます」


 カイは柱を見つめたまま続ける。


「まあ、それで効果が無ければ、壊すしかありませんが」


 ブロムが笑う。


「すいぶん面倒くせえやり方だな」


「面倒ですが、一番合理的です」


 カイは振り返る。


「問題は、どうやってあそこまで行くかです」


 柱の周囲には、魔獣が集中している。


 まるで守るべき場所を知っているように。


 いや。


 実際にそうなのだろう。


 装置の中核なのだから。


 アルトリウスが魔獣を斬りながら言う。


「中央突破しかないだろうな」


「ええ」


 カイは頷いた。


「役割分担します」


 全員の視線が集まる。


「銀牙は前線を維持してください」


「入口と柱周辺の魔獣を引き受ける」


「戦線が崩れると、突破班が孤立します」


 アルトリウスは即答した。


「問題ない」


 ブロムが盾を叩く。


「任せろ」


 カイは続ける。


「突破班は天衝」


 マックスが顔を上げた。


「俺たちか」


「はい」


「マックス、ヴァレリア、グレン」


「三人で柱まで到達してください」


 ヴァレリアは短く頷いた。


 グレンが苦笑する。


「銀牙の前で大役だな」


「突破速度なら天衝の方が一枚上手です」


 カイは言う。


「マックスの盾で道を作ってください」


「ヴァレリアが最短で目の前の敵だけを攻撃」


「グレンが死角を潰して二人を援護してください」


 一拍。


「リリアは後方から魔法で三人を支援」


「エルナはいざと言う時の回復の準備」


「魔力残量が規定値を下回ったら、即座に知らせてください」


「はい!」


 エルナが頷く。


 リリアも息を整える。


 そしてカイは、銀牙に向かって言った。


「アルトリウスさん」


「決して無茶はしないでください」


「一度撤退して、再度作戦を練り直しても良いのです」


 アルトリウスが小さく息を吐いた。


「時間を掛けると、一般人への被害も増える」


「撤退は、最後の選択肢だ」


しかしカイは譲らず言った。


「それでもです」


「私が全体の戦況を見て、都度判断します」


「どんな形であれ、全員無事に帰還することが前提です」


「さあ皆さん、それぞれ持ち場に着いてください」


 剣を構える。


「銀牙、前へ」


 ブロムが盾を押し出す。


 リーネが側面を潰す。


 ユリウスの炎が通路を焼いた。


 魔獣のヘイトが彼らに集まり、天衝への注意が逸れた。


 カイが言う。


「今です」


「天衝、前へ」


 マックスが走る。


 ヴァレリアが続く。


 グレンがその前へ滑り込んだ。


 その動きを見て、リーネが小さく呟いた。


「……彼ら、この短時間で成長してるわ」


アルトリウスが魔獣を斬り伏せながら答える。


「そうだな。驚異的な成長スピードだ」


一拍。


「ギルド長の指揮のおかげだ」


 そうこうしているうちに、3人は柱の周囲に迫る。


 残り十数歩。


 その時だった。


 柱の光が、一瞬強く脈打った。


 塔が低く唸る。


 そして――


 破口から流れ込む魔獣の数が、明らかに増えた。


 ブロムが笑う。


「おいおい、やっこさん、本気出してきやがったか」


 アルトリウスの剣が閃く。


 カイは柱を見た。


(防衛機構が強化されている)


 侵入深度への反応。


 つまり。


 突破班が近づくほど、敵は増える。


「急いでください」


 カイが言う。


 マックスが叫ぶ。


「無茶言うなっての!」


 そう言いながらも、すでに塔まであと一歩のところに迫っていた。


「どこを攻撃すりゃいいんだ?」


 柱の台座。


 そこに走る接続回路。


 カイの視線が、そこに固定された。


 ここから先は、見極めだ。


 切るべき一本を、間違えれば――


 すべてが終わる。

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