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左遷された辺境ギルド長は、戦わないのに最強でした  作者: アズマユージ


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第十四話 不器用な歓迎会

 その日の夕方。


 ギルド近くの酒場の一角で、マックスは腕を組んで唸っていた。


「……やっぱりあれだな。

メンバーが増えた時には、歓迎会を開くべきだよな」


 隣で酒を拭いていた店主が、怪訝そうに眉を上げる。


「歓迎会?」


 マックスは胸を張る。


「遂に、天衝のレゾナンスにも、アタッカーが加入することになったんだ」

「名前は、ヴァレリアって言うんだけどさ」


「ほう」


 店主はにやりと笑った。


「珍しいな。お前がそんなこと言い出すとは」

「と言うか、彼女は難しいぜ」


「わかってるよ!うるせえな」


 マックスは照れ隠しに鼻を鳴らす。


「いつまでもギスギスしてるのは好きじゃねえんだよ」


 それは本音だった。


 強い。必要な戦力だ。それは認めている。

 だが、それだけで一緒にやっていけるほど、パーティは単純じゃない。


「だからよ。ちゃんと、区切りをつける」


 そう言って、マックスは立ち上がった。


 その頃、ギルドの一室。


「歓迎会、ですか?」


 ヴァレリアは短く聞き返した。


 向かいには、カイとセリーヌが並んでいる。


「マックスさんの提案です」


 セリーヌが補足する。


「私は……遠慮させてもらう」


 即答だった。


「にぎやかなのは、苦手だ」


「でしょうね」


 カイは苦笑する。


「ですが、あなたが断ると、マックスさんが悲しみますよ」


 ヴァレリアは黙った。


 カイは続ける。


「参加して、何も話さずに帰っても構いません」


「……」


「マックスさんなりに、歩み寄ろうとしている。それだけは、受け取ってあげてください」


 少しの沈黙。


「……じゃあ、短時間なら」


 ヴァレリアは、そう答えた。


 カイは小さく頷く。


「決まりですね」


 その夜。


 酒場の一角には、天衝のレゾナンスの面々が揃っていた。


 マックス、グレン、リリア、エルナ。

 そしてヴァレリア。


 さらに――


「……なぜ、あなたが?」


 カイが首を傾げる。


「事務仕事は終わりましたので」


 セリーヌは、にこやかに答えた。


「それに、歓迎会でしょう?私だって歓迎してもらってもいいじゃないですか」

「わざわざカイさんを追いかけて中央から来たんですよ」


 意味深なセリフに、カイはたじたじになった。


 にやりと笑いながら、マックスが言った。


「セリーヌさんなら大歓迎だろ?」


 そんなこんなで、カイとセリーヌ、そしてヴァレリアの歓迎会は始まったのだった。


 最初の空気は、正直に言って重かった。


 酒は並んでいるが、誰も手を付けない。


 沈黙に耐えきれず、マックスが声を上げる。


「……えーと、そのだな!」


 全員の視線が集まる。


「今日は!あれだ!」


「歓迎会だ!」


 間。


「以上!」


 グレンが吹き出した。


「雑だな」


「うるせえ!」


 リリアが、くすっと笑う。


「では……私が乾杯の音頭を取らせていただきます」


 何故かエルナが、ジョッキを持って立ち上がった。


「えー、まずはカイさん、

はるばる中央からこの辺境ギルドへようこそ」


「そして、セリーヌさん、

唐変木の相手は苦労が絶えないと思いますが、頑張ってください」


「最後に、ヴァレリアさん、

ようこそ天衝のレゾナンスへ!

待ちに待ったアタッカー、期待しています!

怪我をしたら、私の回復魔法ですぐに治療しますので、存分に戦ってください。

一緒に強くなって行きましょうね!」


「では皆さん、ご唱和ください、カンパイ!」


「「「「「「カンパ~イ!!!」」」」」


 一気に空気が緩んだ。


 酒が進み、料理が減り、会話がぽつぽつと生まれる。


 ヴァレリアは端の席で、静かに杯を傾けていた。


 その様子を見て、マックスが少し迷ってから声をかける。


「……飲めるのか?」


「問題ない」


「……そうか」


 それだけで、会話は途切れた。


 だが、少しして。


「お前さ」


 マックスがぽつりと言う。


「……お前、まわりの評判、気になんねーのか?」


 ヴァレリアは、少し考えた。


「慣れている」


「だろうな」


 マックスは苦笑する。


「俺もだ」


 意外そうな視線。


「突っ走る、考えなし、怖いってよ」


「……」


「守るために前に出てるだけなんだけどな」


 酒を一口飲む。


「結果だけ見て、勝手に決めつけられる」


 ヴァレリアは、じっとマックスを見ていた。


 しばらくして、口を開く。


「……私も」


 ぽつり。


「独断専行だと、よく言われた」


「だろ?」


「口に出してから動け、と」


「分かる」


 マックスは、少しだけ笑った。


「……似たもん同士かもな」


 ヴァレリアは、少し考えたあと。


「……そうかもしれない」


 それから、ぽつぽつと語り始めた。


 過去のパーティのこと。

 間に合わなかった説明。

 救えた場面と、残った誤解。


 だが――


「……だから……」


 言葉が、途切れた。


 次の瞬間。


 ヴァレリアは、机に額を預けた。


「……?」


 グレンが覗き込む。


「……寝たな」


「は?」


 マックスが目を見開く。


 完全に、眠っていた。


 しかも、ぐっすり。


 セリーヌが微笑む。


「緊張が解けたのでしょう」


 リリアが、そっと上着をかける。


「……お疲れだったんですね」


 マックスは、しばらく黙っていたが。


「……まあ」


 小さく呟いた。


「悪い奴じゃ、なさそうだ」


 グレンが肩をすくめる。


「今さらだな」


 酒場の灯りは、柔らかく揺れていた。


 不器用で、ちぐはぐで。


 それでも。


 この夜は、確かに一歩前に進んでいた。

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