第十三話 最後のピース
実戦試験の翌日。
ギルドの一室に、天衝のレゾナンスの面々が集まっていた。
マックス、グレン、リリア、エルナ。
そして、少し離れた位置にヴァレリアが立っている。
空気は、重い。
昨日の依頼は成功だった。
だが、気持ちが揃ったわけではない。
「で」
最初に口を開いたのは、マックスだった。
「結局、どうすんだよ」
視線は、カイではなくヴァレリアに向いている。
「強いのは分かった。
昨日の突撃が最善だったってのも、頭では理解した」
一拍。
「でもな」
拳を握る。
「好きか嫌いかで言えば、嫌いだ」
はっきりした言葉だった。
リリアが小さく息を呑み、エルナが身をすくめる。
ヴァレリアは、何も言わない。
「やり方も、言い方も、気に食わねえ」
「勝手に突っ込むのも、正直怖い」
それでも、マックスは視線を逸らさなかった。
「……だけどよ」
声が、少しだけ落ちる。
「アタッカーがいねえままだと、またグレンに無理させちまう」
「それはもっと嫌だ」
沈黙。
グレンが、ゆっくりと頷いた。
「現実的な判断だな」
マックスは鼻を鳴らす。
「仕方ねえだろ。
俺はタンクだ。守る役だ」
「削る役がいなきゃ、前回みたいになる」
その言葉に、リリアが小さく頷く。
「……私も、詠唱に集中できました」
「昨日は、すごく」
エルナも続いた。
「回復の判断も、楽でした」
マックスは、深く息を吐いた。
「だから」
もう一度、ヴァレリアを見る。
「加入には、賛成する」
きっぱりと。
「馴れ合う気はねえし、
いきなり仲良くする気もねえ」
「それでもいいなら、だ」
ヴァレリアは、少しだけ考えた。
ほんの数秒。
「……問題ない」
短く答える。
「仕事ができれば、それでいい」
「ただ」
一拍。
視線を逸らしたまま、言った。
「善処はする」
それだけだった。
約束とも宣言とも言えない、不器用な一言。
だが。
マックスは、それを聞いて口の端を上げた。
「……上出来だ」
グレンが肩をすくめる。
「最低限はクリアだな」
場の空気が、わずかに緩む。
その様子を見届けてから、カイが口を開いた。
「では」
静かな声。
「結論を出します」
全員が、自然と姿勢を正した。
「ヴァレリアさん」
名を呼ばれ、彼女は顔を上げる。
「天衝のレゾナンスは、あなたを必要としています」
一拍。
「正式に、加入を認めます」
それだけ。
余計な言葉はない。
マックスが、ふっと息を吐いた。
「……決まりだな」
ヴァレリアは、短く頷く。
「ああ」
リリアの表情が、少し明るくなる。
エルナも、胸に手を当てて小さく安堵の息をついた。
グレンが、苦笑交じりに言う。
「やっと、形になってきたな」
カイは、心の中で頷いた。
完璧ではない。
噛み合ってもいない。
だが――足りなかったピースは、確かに埋まった。
こうして、天衝のレゾナンスは、新しい仲間を迎えた。
ここから先は、前に進むだけだ。
衝突や摩擦は、きっとまた起きるだろう。
それでも。
このメンバーなら、越えていける。
そう思えるだけの理由が、今は揃っていた。




