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左遷された辺境ギルド長は、戦わないのに最強でした  作者: アズマユージ


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第十一話 久しぶりの応募者は、少し変わった剣士だった

 天衝のレゾナンスのパーティメンバー募集は、正直に言って――行き詰まっていた。


 掲示板の前に立ち止まる者は、ほとんどいない。

 あの癖の強い文面を一瞥し、眉をひそめて通り過ぎる。


「……応募者来ませんね」


 セリーヌが、静かに言った。


「そうですね」


 カイは苦笑する。


 至難の依頼。僅かな報酬。危険。生還の保証なし。

 普通に考えれば、避ける理由しか書いていない。


「まあ、必要な人だけ来ればいいんですが」


「必要も不要も、応募者自体が来なければどうしようもありませんよ」


 そんな会話の最中だった。


 掲示板の前で、ひとり、足を止める影があった。


 女だ。


 ――しかし、彼女の装備を見て、セリーヌは言葉を失った。


 露出の多い戦闘装備。

 金属と革で要所だけを覆い、腹部や脚、肩はほぼ剥き出し。


 いわゆる、ビキニタイプのバトルアーマーだった。


(……え?)


 色気を誇示する意図は、感じられない。

 装飾はなく、線は実用一点張り。

 だが――どう見ても、目立つ。


 背は高めで、無駄のない体つき。

 長剣を背負い、歩き方に迷いがない。


 女は募集文を、最初から最後まで黙って読み、依頼票を一枚剥がした。


「……応募ですか?」


 セリーヌが声をかける。


 女は短く頷いた。


「ああ」


「では、面接室へどうぞ」


 面接用の机に座ったセリーヌは、姿勢を正し書類を開く。


「お名前は?」


「ヴァレリア」


「職種は?」


「剣士」


「……その装備について、お伺いしても?」


 ヴァレリアは、少し考えてから答えた。


「動きやすい。あと、魔力障壁効果」

「耐久力も防御力も高い」


 淡々とした声。


「……露出が多いとは、思いませんか?」


「?」


 本当に、分からないという顔だった。


「問題ない。必要な部位は、守っている」


 それだけだった。


 セリーヌは、内心でため息をつく。


(これは……誤解される)


 経歴欄を見る。


 所属パーティ:複数。

 在籍期間:短い。

 理由:協調性に難あり。独断専行。


「“協調性がない”と評価されていますが」


「説明がないと言われた」


 即答。


「説明は、必要だと思いませんか?」


「間に合わなかった」


 悪びれた様子はない。

 ただ、事実を述べているだけ。


 面接室の外から、騒がしい声が聞こえた。


「おいマックス、カイさんは面接中だって言われたろ!」


 グレンが嗜める声。

 その直後、足音が近づき、扉が開く。


「次の依頼――」


 マックスが顔を出し、そして固まった。


 視線が、ヴァレリアで止まる。


「……は?」


 一秒。二秒。


 顔が赤くなる。


「……な、なんだお前、その格好!」


 ヴァレリアは、首を傾げた。


「私のこと?」


「お前しかいないだろ!」


「冒険用の装備」


「いや、そうじゃなくてだな……!」


 マックスの視線は、泳ぎ続けている。


「目のやり場が……!」


「?」


 本気で理解していない。


 セリーヌは咳払いをした。


「マックスさん……面接中です」


「す、すみません!」


 マックスは慌てて下がるが、最後に言い捨てる。


「そいつ、協調性に問題あるって評判の奴だろ!

どうせ、すぐ辞めるんならとっとと帰れ!」


 ヴァレリアは、静かに立ち上がった。


 扉の前で立ち止まり、振り返る。


「不合格になったら帰る」


「……は?」


「採用してくれたらちゃんと仕事する」

「それだけ」


頃合いだと判断したセリーヌが、決まり文句を伝えた。


「結果については、明日までに決めておきます」


「では、明日また来る」


 そう言って、ヴァレリアは部屋を出て行った。


 沈黙。


「……第一印象は、正直言って最悪です」


 セリーヌが率直に言う。


「ええ」


 カイも否定しない。


「装備、態度、説明不足。

 普通なら、不採用です」


 一拍。


「ですが」


 カイは、静かに続けた。


「嘘は言っていません」


「はい」


「装備も、理にかなっています」


 セリーヌは、目を瞬かせる。


「……採用、ですか?」


「いえ」


 カイは首を振る。


「第一次試験は合格です」


「マジかよ!」

「だってあいつの評判最悪だぜ!」


マックスが大きな声で抗議するも、カイは気にせず続けた。


「ただし、最終試験として、実戦試験をしましょう」



そして、カイは少し間を空けてから遠い目をして言った。


「他人から聞いた人の評価ほど」

「あてにならないものはありませんから」



 一方、ギルドの外。


 ヴァレリアは空を見上げていた。


 期待はしていない。

 拒絶にも慣れている。


 それでも。


「……もしかしたら」

「ここは、少し違うかもしれない」


 そう呟いて、歩き出した。


 ―これが、後に天衝のレゾナンスの不動のアタッカーとなるヴァレリアとの出会いだった。

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