いなくなってしまう、母を許してね?
私は龍神、水龍セシルだ。
私はとても大きな罪を犯してしまった。人間との子を孕んでしまったことだ。龍神には、人間との子を作ってはいけないという掟があった。龍神の数をあまり増やさないようにするためだ。だが私は人間に騙され、人間との子を作ってしまった。
私には緑龍マナトとの子がお腹にいた。龍神は、子を産む際に霊力を子供に引き継ぐために、霊力を使うことができなくなる。だから、いつも夫のマナトと共に居た。
でも、ある日のこと。
「すまない、セシル。俺は今から隣国の国へ行って、集まっている魔を祓って来なくてはならない。だから、密かにここで待っているか、誰かに頼ってくれ。」
夫のマナトが隣国へ行ってしまい、私は寂しくて誰かに頼ることにした。そうして、助けてもらう人を上空から探した。
「あら?あんなところに人間がいるわね。しかも、結構強い人。あの人なら、私を夫がいない寂しさから救ってくれるかしら?」
セシルは人間が好きだった。色々なものを作り、捧げ物を貰ってきたがどれもいいものだった。
「ここら辺の魔を祓ってくれたのですか、感謝します。私は今身ごもっておりますので、力が出ないのです。夫が来るまでの間、助けてはくれませんか?」
気づいたらそう尋ねていた。人間は華純徹という名前で、心良く私を家へ招いてくれた。
そうして、夫が帰って来るまで家に置いてもらうことにした。それが、間違いだったのだ。徹は私の子が生まれると、子供を人質にして私の子を産めと言われたのだ。まだ、霊力があまり使えない状態で子供を守ることができず、言うことを聞くしかなかった。
私は、最後に部屋に2人きりにしてくれと頼んで、子供の力を封印した。私の子は、とても強い力を持って生まれてしまった。それが、徹に知られれば悪用されるだろうと考えたのだ。
そして私は、好きでもない人に抱かれた。とても悔しかった。私を脅したあの男も、我が子を守れない自分を。
生まれた徹との子は可愛いと思えなかった。愛した人との子ではないのだから当たり前だ。私の命はあと1日持つか、持たないかだった。消える前に、こっそりと我が子を見に行った。とても可愛かった。ずっとそばにいたかった。でももう、無理だ。私は掟を破ってしまったのだから。遠くから私は、徹との子に渡さないように押さえ込んでいた霊力を使ってあの子にひとつの奇跡をおくった。
あの子に好きな人が出来た時に、1度だけ命に関わる傷を治すという奇跡を。
ーどうか、あなたの未来に良い人が現れますように。そして、幸せになれますように。さようなら。我が愛しき子よ。さようなら、愛しきあなた。
そうして、3歳の子が住むボロボロな部屋の前でセシルは消滅した。3歳の子は涙を流し、扉を見ていた。




