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【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!  作者: 高見南 純平
第1部 追放からの旅立ち

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第96話 怒り

 病室に、空虚な沈黙が流れていった。


 その言葉を聞いて、一気にカリーエの顔が青ざめていく。そしてすぐに、ゼマが言った悲報を否定する。


「そ、そんなわけないだろう。あの師匠が、死ぬはずない!」


 彼女は半ば怒りながら、ゼマに強く当たる。ゼマのことが信じられないというよりは、その内容自体を彼女は飲み込めていない様子だった。

 老いていたとはいえ、彼女の知っている師匠は、屈強な山の男だ。そう簡単に倒れることすらない。


「アイアンデーモンに取り込まれて、私たちが倒した。そして、塵となって消えたよ。どうすることもできなかった」


 ゼマはただただ、事実だけを述べていた。いつもの明るさは微塵も感じなく、酷く冷えている。


 その淡々さが、今のカリーエには癪だった。


 横でゼマの様子を見守っていたララクは、カリーエが怒りを露わにしているのを見て、冷や汗をかいていた。

 何故、ゼマがそのような態度をとっているのか、彼にはまるで理解できなかった。


「アイアンデーモンに? 嘘はよしてくれ。私は不覚をとったけど、師匠が敵の気配に気がつかないわけがない」


 カリーエたちがあの魔鉱山に足を踏み入れたのは、1度や2度ではない。山仕事専門で活動していた【ストーンズ】にとって、今回もただの日常でしかない。そのはずだった。


「……あんたの師匠は、その悪魔を受け入れたんだよ。おそらく、あんたを襲ったのも師匠の仕業だ」


 さらに信じがたい事実を、ゼマはカリーエに伝える。


「……っく」


 ララクは何も言えない自分に腹をたてながら、下唇を強く噛み締めた。事細かに説明するゼマを止めようとも思った。しかし、カリーエのディバソンに対する信頼は厚い。だからこそ、事実を伝えるしか、彼女を説得できないのではないかとも考えていたのだ。


「は、はぁ? さっきから何を言っているんだ。そ、そんなはずは……」


 口では否定をしているカリーエだったが、微かに心当たりがある様子だった。それは、自分がアイアンデーモンに取り込まれた、ということだ。


 そもそも、ディバソンとはぐれること自体、あまりない事だ。そこに、背後からアイアンデーモンが襲ってきた、ということになる。

 アイアンデーモン自体の知能は低いので、気配を消すのは苦手としている。音などですぐに標的にバレることがほとんどだ。

 しかし、裏でディバソンのような司令塔がいたとすれば別だ。


「あの人は言ってたよ。あんたが、自分を超えた時、置いてかれるのが怖かったって」


 ゼマはディバソンが語った思いをそのまま伝えていく。彼女はその思いに共感することは出来なかった。しかし、カリーエには伝えるべきだと、そう判断したのだ。


「……!?」


 カリーエがその台詞を聞くと、彼女の中で急にゼマの言った内容が信憑性を増していった。何故なら、「超えたい」というキーワードは、初対面であるゼマが知っているはずはない。かつてパーティーを組んでいたララクならともかく、ゼマが知りえる情報ではない。

 しかし、もし師匠本人と出会っているのであれば、納得がいくことだ。


 ゼマの語り口調も相まって、カリーエの心に、ようやく彼女の言葉が届きだしていた。だが、それを容易に受け止めることなど、出来るはずもなかった。


「ほ、本当に師匠がそんなことを?」


 カリーエは視線をララクに移す。彼女は、彼に全てを否定して欲しかった。けれどそれと同時に、事の真相を知りたい、という気持ちにも駆られだした。

 今までの師匠像と、全く正反対の行動をしていることに、彼女は混乱している。だから、そのもやっとした思考を、整理したかった。


「……はい」


 ララクはようやく事実を認めた自分を情けなく思った。真っすぐ話し続けたゼマの澄んだ態度が、異様に眩しく思えた。

 もう遅いかもしれないが、少しでも強い心を持てるようにと、ララクも事のあらましをカリーエに伝えることにした。


「ディバソンさんは、老いていくことに悩んでいたみたいです。それで、弟子が自分の前から去っていくことが怖かった。

 だから、傀儡にして永遠に自分の傍を離れないようにしたんです」


 おそらく、ハンドレッドの2人があの場に居合わせていなければ、そうなったはずだ。カリーエもあのまま悪魔に取り込まれ、他の冒険者たちも飲み込まれていただろう。

 そして、その被害は拡大していき、魔鉱山はアイアンデーモンに占領された可能性もあっただろう。

 それが、あの時のディバソンの願いだったのだから。


「私が、私が師匠を置いていくはずないだろう! どうして、どうして……!」


 カリーエは握りこぶしを、ベッドに強く叩きつけた。彼女はもはや、何に激怒していいのか、自分でも分かっていなかった。


 おかしなことを言ってきたゼマか、寄生されてしまった自分自身か、それとも誤った判断をした師匠か。

 彼女は、信じる信じないをとっくに通り越していた。

 混乱、怒り、嘆き、様々な感情が彼女を一斉に襲う。

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