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【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!  作者: 高見南 純平
第1部 追放からの旅立ち

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第8話 次のクエスト

 ケルベアス討伐の数日後。

 ララクは冒険者ギルドにやってきていた。


 ここには、数多くのクエストがあるので、それを探しに多くの冒険者がやってくる。

 見た目は木造の大きな酒場だ。

 酒や軽食も提供している。

 ここで冒険者同士、交流を深めることもよくある話だ。


 ララクがギルドに入ると、いつも通り冒険者パーティーがたむろしていた。テーブルで和気あいあいと喋る者たちや、次のクエストについて話し合う者たちなど、様々だ。


 ギルドの奥にはカウンターがあり、そこでクエストの受付をしてくれる。


「お帰りなさい。ララク」


 そこにいた受付嬢が、ララクに向かってはにかむ。ララクは100個のパーティーに加入していた際に、ここを何度も訪れている。なので、彼女とは少し顔なじみだった。彼より少しだけ年齢は上だ。


「どうも。クエスト、成功しました」


 ララクは腰に巻いていた布袋から、綺麗に切り取ったゴブリンの角をカウンターのテーブルに置いた。

 彼は今日、初めて1人でクエストを行った。ゴブリンは低級モンスターなので、何の問題もなくクリアすることが出来た。


 クエストを成功した証として、倒したモンスターの一部を提出するのが基本だ。他には、依頼人と接触する場合は、依頼書にサインをして貰う方法もある。


「まぁ、凄い! 本当にゴブリンを倒せたのね。お姉さん、嬉しい」


 自分の事のように彼女は喜んでくれた。ゴブリンは低級のモンスターだが、数が多いとベテラン冒険者でも手を焼く存在だ。なので、パーティーを抜けてソロになったララクに倒せるか疑問だったのだ。


「初めて1人で達成できました。1人でもなんとかなりそうです」


「それならよかった。はい、これが報酬。今回は独り占めね」


 硬貨が入った袋を受付嬢はララクに手渡す。ゴブリン退治は安い仕事だが、繁殖期ということでいくらか上乗せされている。

 これをパーティーで分けるとなると、1人分は少ない。が、ソロの彼には十分なお金だった。


「ありがとうごいます。また、クエスト受けるつもりなので、また来ます」


「そっか。頑張ってね」


 軽く挨拶をしてララクはカウンターを後にする。

 その後向かったのは、ギルドの端にあるクエストボートの前だった。ここには、依頼書が壁に貼られており、これを見て何のクエストを行うか冒険者は判断する。


 その多くはモンスター討伐だが、薬草の採取など、その内容は多岐にわたる。


(ゴブリン退治はもういいから、強そうなモンスターを選ぼう。何がいるだろう)


 今の時期はゴブリン退治が多く貼られている。他にも、大鬼のオークや魔兎アルミラージなどの討伐依頼がある。しかし、どれもケルベアスと比べると見劣りするレベルだ。


(あ、このモンスターは確か)


 ララクが目をつけたのは、「シーサペント」というモンスターの討伐依頼だった。依頼主は、ここから少し離れたところにある港町の漁師だ。



【シーサーペントを追い払ってくれ!】


 船を狙うあいつが、ついにこの辺りに現れちまった! あいつは船ばかり狙う狡猾な野郎だ。港に潜んで、船員と釣った魚を奪いに来やがる。

 こいつのせいで、一向に船が出せねぇんだ!

 倒してくれとは言わないが、船が出せるように追い払ってほしい!


        依頼主・港街バルミューの漁師



(シーサーペントは、相当手強かったはず。うん、これにしよう)


 ララクはこのシーサーペントと戦ったことはないが、モンスター図鑑でその存在は知っている。

 沈船、という二つ名があり、いくつもの船を沈没させては、漁師たちを困らせている。海に住んでいるので、そういった相手に有効的なスキルを持っていないと、手も足も出ないだろう。


 ボードからその依頼書を剥がし、再びカウンターに向かう。


「すいません。今度はこれを受けようかと」


 そっとクエスト依頼書を差し出す。


「あら、もう決めたの? ……っえ、本当にこれやるの?」


 依頼書を確認した受付嬢は、目を見開いて驚いていた。


「ダメ、ですか?」


 それに対してララクは真顔で答える。


「ダメじゃないけど、シーサーペントってレベル50は超えてるのが普通なのよ。そんな相手をあなたが倒せるとは……」


 彼女からすれば、ゴブリンしか退治したことがない少年が、無謀にも難易度の高いクエストを受ける、ということだ。心配するのは当然か。


「あーそういうことですか。大丈夫です。ボク、ケルベアスを倒したので」


 自分の実力を伝えようと、ララクははっきりとそう答える。しかし、これが引き金となり、少しだけギルド内が騒がしくなる。


「え、ララクがケルベアスを??」


 受付嬢はすぐには信じはしなかった。彼女は、これまで他のパーティーの端っこにいたララクを長い事見てきた。だからこそ、真のことだとは思えなかったのだろう。


 そしてそれは、この話を聞いていた他の冒険者たちも一緒だった。


「おいおい、聞いたかよ今の」


「ケルベアスを倒しただって、あいつが?」


 ギルド内はすぐにララクのことで盛り上がっていた。18歳の、しかも見るからに貧弱そうな少年が、森の主を倒したとは信じがたいようだ。


 それはララクの耳にも届いていたが、さほど気にはしていなかった。何故なら、ケルベアスを倒したことは紛れもない事実なのだから。


「あの、ダメなら他のを選びますけど」


「え、あ、いや、受けるのは自由だけど。その、本当にいいのね?」


 真っすぐ自分を見てくるララクに圧倒されて、受付嬢は強く否定できない様子だった。


「はい。お願いします」


 揺らぐことのないララクを見て、諦めたのか覚悟を決めたのか受付嬢は依頼書に受注印を押した。

 これで正式に、シーサーペントの討伐がララクに依頼された形となった。

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