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【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!  作者: 高見南 純平
第1部 追放からの旅立ち

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第76話 鍛冶屋

 ジンドの街、北東部。

 鍛冶屋や道具屋など、冒険者に関するお店が比較的多い場所である。


 そして町のど真ん中に、どこからともなく瞬間移動してきた者たちがいた。


「まさか、こんなに早くここに戻ってくるなんてね」


 見たことのある街の景観を見渡すゼマ。その背中には、壊れかけのアイアンロッドが収められていた。


「あまり鍛冶屋には詳しくないので、知っているところがいいなって思いまして」


 ゼマの装備を強化する最適な場所として選んだのは、【クェイグの店】という鍛冶屋兼武器屋だ。


 彼はここに何度か来たことがあり、一度だけ店主と話したことがある。


 少し前のことだが、魔狼島の時の情報収集の際に訪れたことのあるお店だ。


「ふーん、なんか見たことはあるけど。あれ、ここで買ったんだっけ?」


 ゼマは記憶を呼び起こす。が、はっきりとは思い出せない。ソロ時代は自由に国内を移動していたためか、記憶があいまいなようだ。


「とりあえず、中に入りましょうか」


 そう言ってララクたちは、鍛冶屋に入っていく。扉は重く硬い。


 中に入ると、平和な町中から、急に殺伐とした雰囲気に早変わりする。

 こういった雰囲気が好きな冒険者も中にはいる。


 ララクも武器自体は好きなので、鍛冶屋は嫌いではなかった。彼の特性上、利用する機会はあまりないが。


(っあ、ケルベアサイズ、売れてる)


 前に訪れた際、ケルベアスの素材を使って作成されたケルベアサイズという大鎌が展示されていた。

 ララクはそれを、【ウェポンクリエイト・ハード】で作り出したことがある。


 どうやら、購入者が見つかったようだ。


「ん? どこかで見たことのある顔だな」


 奥にいる白髭の店主が葉巻を吸いながら、こちらに話しかけてくる。


「どうも、魔狼島の時はお世話になりました」


 そのキーワードを聞いて、店主はすぐにピンと来たようだ。


「あー、あん時の坊主か。クエストは上手くいったのか?」


「えーと、まぁ、そうですね。詳しくは言えませんが、館長は喜んでくれました」


 クエスト【魔狼を探してくれ】を思い出す。

 クエストは成功したが、島の性質を保つために、むやみに公表しないようにしていた。

 なので少し濁して伝えた。


「そうか。そういえば最近、館長が上機嫌だって噂になってたな。

 んで、今日はどうした? また、クエストか?」


「いえ、今回は客として来させていただきました」


「っま、頼むのは私だけど」


 ゼマはかなり年上の店主に対しても、相変わらずのテンションで「はぁーい」と手を振る。


 店主はそれを奇妙に思いながらも、仕事の話だと分かって葉巻の火を消した。


「そうか、注文か。見るところ、その武器か?」


 背中に刺してあるアイアンロッドに視線を移した。長年鍛冶屋をやっているだけあって、話が早い。


「っそ。壊れかけちゃっててさ、強化して欲しんだよね」


 ゼマはアイアンロッドを抜くと、カウンターに「ドンっ」と乱暴に置いた。これぐらいでは、まだ壊れないようだ。


「ちと、拝見するぞ。って、俺が作ったやつじゃねぇか」


 それを手に取るやいなや、呆れた様子でゼマにそう言った。


「っあ、やっぱり? でも、すぐに分かるなんて、良い腕してるね。結構、長持ちしたし」


 どうやら、彼女がアイアンロッドを購入した場所は、ここのようだった。


「自分の作ったもんぐらい分かるに決まってる。他の店の武器よりは、直しやすい。だが、強化っていったよな?」


「っそ、修復じゃなくて威力と頑丈さを上げてほしんだよね。できそうかな?」


「そりゃおめぇ、出来ねぇってことはねぇ。が、素材は必要だな。聞くが、どれぐらいの相手を想定してるんだ? それによって素材も変わる」


 鍛冶屋はやみくもに武器を強化するわけではない。

 一番は、その冒険者にあった武器を作ること。

 それはなにも、威力だけの話ではない。


 用途、予算、相性、など様々な要素を話し合って作っていく。


「そうねぇ、レベル70ってとこ? あーでも、1人で倒す必要はないから、60前後ってところかな」


 ゼマは最近戦闘を行ったシームルグのレベルを思い出す。しかし、すぐにもうソロではないので、あのレベルの相手と対等に戦う必要はないと考えた。


 だが、生半可な物では、このように壊れる危険性がある。


「な、70だと? 随分、強い相手を見据えてるんだな。お前たち、そんな強いのか?」


 はなっから疑ってかかっているわけではないが、レベル70というのは熟練冒険者でも倒すのは困難な相手だ。

 そう簡単には信じられないだろう。


「私はともかく、この子はチョー強いよ」


 隣にいたララクの方に腕を回す。ララクのほうが身長は少し低いので、彼女は少しだけ背中を丸くしていた。


「いえ、ゼマさんだって凄いじゃないですか」


「いや、あんたの方が凄いって」


「そんな、ヒーラーとしてゼマさんの事、尊敬してますから」


 お互いがお互いの実力を認め合っているので、謙遜しあっては褒めあうという、謎の状況に陥っていた。


 このままでは収集がつかなそうだったので、店主が口を挟む。


「わかったわかった。お前たちがそれを望んでるなら、作ってやるよ。けど、それぐらいとなると、かなりガラッと変えて強化する必要がある」


「つまり、モンスターの素材とかを組み込むとか、ですか?」


「普通はそうだな。けど、これはもともと純鉄で出来てる。モンスターの素材よりは、鉱物のほうが相性がいい。

 見たところ、これにスキル付与してるな?」


 店主はロッドを隅々まで眺めていた。

 そこで、これに【伸縮自在】が付与されていることに気がついたようだ。


「そんなことも分かるんですか? 見た目は変わらないのに」


 ララクの言うように、スキルを発動していない状態のアイアンロッドはいたって正常に見える。(ヒビを除いて)


「まぁ、勘だがな。鉄の声が聞こえんだよ」


 まるで我が子のようにアイアンロッドを撫でる。武器なので壊れるのは仕方ないことだ。しかし、出来るだけ長持ちできるようにしてあげたいのだろう。


「す、凄いですね」


 それが何らかのスキルの効果なのか、本当に勘なのかはララクには分からない。しかし、鍛冶屋として腕は間違いない事はすでに十分すぎるほど伝わってきていた。


「当然のことだ。それで、魔力を流し込むなら、それに順応できる鉱物が良い。そうだな、魔晶石でも使うか」


「魔晶石、ってなんだっけ?」


 武器の強化をろくにしてこなかったので、鉱物系にはゼマは疎い。クエストも、おそらく討伐系ばかりやってきたのだろう。

 彼女が薬草採取や、穴掘りをしているイメージは浮かばない。


「魔晶石は、魔力を持った水晶のことですよ」


「あー、あれね。知ってる知ってる」


 完全に知ったかぶりであった。


 魔晶石は人間などと同じように魔力を持っている鉱物だ。中にはスキルを内蔵されてある水晶もあるとかないとか。


「坊主の言う通りだ。純度の高い魔晶石なら、硬度も問題ねぇ。が、そんなに簡単に見つけるもんでもねぇけぇどな。

 うちにも在庫はあるが、あいにく高純度の魔晶石は今はない」


 クェイグのお店は品ぞろえも豊富ではあるが、常に武器に使える素材が潤沢とは限らない。鉱山に出かけるにもモンスターに遭遇する危険性がある。

 なので、冒険者を雇うかクエストを頼むことが多い。


 しかし、それは需要の多い鉱物やモンスター素材の場合だ。

 特注品の場合は、要となる物は冒険者自身が用意することが多い。


「なるほど。ちなみになんですけど、それが見つかる可能性のある場所って分かりますか?」


「そうだなぁ、首都から少し行ったとこにある魔鉱山なら、あるかもしれんな。かなり遠いがな」


 それを聞いて、ゼマとララクは顔を見合わせて、少しだけほほ笑む。


「それなら大丈夫! てか、タイミングばっちりだね。さっきまでいたばかりだし」


「ですね。じゃあその魔鉱山に行ってみましょう」


 2人の会話は、店主にはちんぷんかんぷんだった。希少スキルである【テレポート】のことを詳しくは知らないだろう。

 知っていたとしても、彼が所持しているとは考えないだろう。


「よく分かんないが、気をつけろよ。死んだら元も子もないからな」


「りょうかいです」


「大丈夫だよ」


 2人は武器の強化方針を決定すると、店主に別れを言って目的地を目指すのだった。

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