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【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!  作者: 高見南 純平
第1部 追放からの旅立ち

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第74話 帰路

「そうだ、最後にもう1つ質問をしてもいいか?」


 もう夜も遅くなってきていたので、そろそろララクを宿に帰そうと思ったようだ。


「もちろん」


「先の戦いのことだ。キミの動きは見事だった。俺たちの動きを完璧に読み、先手を打っていた。あの【テレポート】の使い方には驚いたよ。まさか、こちら側も対象内だったとは」


 試合が大きく動いたのは、ララクが【グランドウォール】でデフェロットたちを分断してからだ。そして、【テレポート】を巧みに使って相手の意表を突いた。


「どうも。そこまで言われると、なんだか照れますね」


 軽く髪を触りながら、目をキョロっと動かした。もしかすると、経験上褒められ慣れていないのかもしれない。


「だが、キミならもっと何か出来たはずだ。例えば、【分身】を使う、とかな」


 隣に座っているララクへと顔を向ける。冷めた表情というわけではないが、真顔に近かったので少々威圧感があった。

 彼の言った言葉自体が、ララクには突き刺さるようで、一瞬だけ唾を飲み込み黙っていた。


「……【分身】ですか」


「ああ。あれがあれば、一気に数的優位を作れたはずだ。何故それをしなかったのか、気になったものでな」


 ララクが初めて【追放エナジー】を使用して戦ったケルベアスとの戦闘。彼は3つの頭を同時に切断するために、【分身】を使用して3人に増えていた。

 このスキルは希少かつ強力な物のため、ガッディアは鮮明に記憶していたようだ。


「何故、ですか。魔力消費が激しいですし、操作しなければいけないので意外と使いこなすのが難しくて。まだ、練度が足りないかなって」


 彼の言った言葉に嘘はない。パッシブスキルである【嘘鼻】が発動していない。

 だが、この事をガッディアは知らないはずだが、彼の説明に納得がいっていない様子だった。


「本当にそれだけか?」


「……適わないですね。今回の戦いは2対2でした。なので、それを使ってしまうとルール違反かなって」


 ララクは嘘をつくとすぐに判明するが、隠し事をしたところで何のスキルも発動はしない。彼が表に出していない感情は、思いのほか多いのかもしれない。


「合点がいったよ。まぁ、キミがそう感じるのも分からなくはないが」


「でも、それを使ったとして、戦況が優位に変わるかどうかは、今となっては分かりません。ボク的には、ゼマさんと上手く連携出来たので、満足ではあるんですけど」


 結局、ハンドレッドは疾風怒濤に勝利した。結果が全てというわけではないが、これを喜ぶことは勝者の当然の権利だ。


「ララク。これから言う事は、俺の戯言だと思って聞いてくれ。少し、説教じみたことを言う」


「……はい」


 いつになく声の低いガッディアを見て、ララクは背筋を伸ばす。何を言われるのかに心当たりはなかったが、自然と緊張感が押し寄せる。


「キミのその力を、羨ましい、ずるい、と思う連中がこれから数多く現れるだろう。かくいう私も、若者の成長速度を羨んでばかりだ。

 だがな、そんなことは気にしなくていい。

 キミは全力で戦えばいいだけだ。

 何故なら、その力はキミが諦めずにここまで歩んできた証なんだからな」


 隠れスキルを得るための獲得条件の達成度は、ララクの場合は消えることは決してない。すでに100回も追放されているのは紛れもない事実だ。

 不名誉、と捉えるものもいるかもしれない。

 他のパーティーに迷惑をかけてきたかもしれない。


 だが、途中で夢を諦めずに進んできたことで、ララクがこうして成長できたことは、彼にとって誇れることだろう。


「……全力で、戦う。このスキルたちは、もうボクの力ってことなんですもんね」


 ララクは手にある紋章に視線を移す。

 自分では全力を出し切っていたつもりでも、無意識的に力をセーブしてきた可能性はなくはない。

 それに、まだ全てのスキルを使いこなして、組み合わせたわけではない。


「ああ。それに今回、改めて感じたよ。キミは人のことをよく覚えている。だから、スキルを使いこなすことが出来ている。

 正直、俺が同じスキルを得たとしても、かなり悪戦苦闘することだろう。

 素直に尊敬しているよ」


 一回り以上も年の離れている冒険者ではあるが、ガッディアは彼のことを正当に評価していた。

 きっと、それを言葉にして伝えたほうが、彼にとって為になると判断したのだろう。


「ありがとうございます。今は素直に受け取っておきます。自分ができることを、全力でやりたいと思います」


 ララクは静かに燃える熱を胸に、ガッディアに宣言をする。一朝一夕で使いこなすことは出来ないだろう。これから様々な出来事を通じて、彼はより冒険者として成長していくことだろう。


「その意気さ。すまんな、時間をとってしまった」


「いえ、非常にありがたかったです。っあ、そうだ。これ、お礼ってわけではないんですけど」


 ララクは亜空間を作り出す【ポケットゲート】のスキルを発動した。黒と紫色の小さな渦のようなそれには、モンスター図鑑や旅の道具などが収納されている。


 これも希少スキルではあるので、しれっと使ったことにガッディアは少し驚いていた。


 そこからララクは、ある石を取り出した。


「それは、なんだい?」


「市場で買ったリンク石です」


「なぜ、それを?」


 持ってはいないが、ガッディアは知識としてそれを知っていた。一見、四角い石板状の石にしか見えないので、リンク石かどうかは分からなかったようだ。


「もともとはパーティー用に買ったんですけど、良かったら貰っていただけませんか? もしガッディアさんに危険がせまったら、これに魔力を流し込んでみてください。

 【テレポート】を使って、すぐに駆け付けます。全力で」


 リンク石を差し出すと、遠慮しそうになりながらガッディアはそれを受け取った。先程ララクに助言した手前、この提案を断るわけにもいかなかった。素直にご厚意として受け取ることにした。


「キミが来てくれるのであれば、安心して戦えるな。しかし、キミの冒険を邪魔するのは俺としては避けたいことだ。だから、いざという時のために使わせてもらうよ」


「はい、遠慮なくどうぞ」


 リンク石を受け取ってしまったガッディアは、ベンチから立ち上がる。帰ろうとする意思がララクに伝わり、彼も立ち上がる。


「それと、迷惑じゃなければ【テレポート】で送ってきましょうか? もう、だいぶ魔力は回復したので、往復できると思います」


 今日の団体戦で、ララクはすでに大量の魔力を消費してスキルを発動していた。戦闘終了時でも、まだ余力は残っていた。しかし、【テレポート】は効果が強力すぎる分、燃費は良くない。


「そうか。いや、今回はいいさ。少しモンスターと戦いながら、帰るとするよ。俺も俺なりに強くなりたいとは思っている。

 死なないためにな」


 戦いで死なないために戦う、矛盾しているように思えるが、それをするのが冒険者の性というやつだ。

 疾風怒濤とは目標の違いで道はそれることになったが、冒険者としての成長を諦めたわけではない。


「分かりました。お気をつけて」


「ああ。そっちも、良い旅になることを祈っているよ」


 2人はお互いに軽く手を振りながら、その場を後にした。


 ガッディアはこのまま、ジンドの街に帰るために山を下りるつもりだ。途中で、野宿をすることになるだろう。

 1人での山登りは非常に危険だ。おちおち眠りにもつけないだろう。


 しかし今は、そんな状況を望んでいた。


 危険なくして危険には立ち向かえない。


 彼の目標は安定だが、そのためにはこれからも戦い続ける必要がある。


「ふぅ、俺も日々精進しなければな。パパ、頑張るぞ~」


 街にいる家族の元を目指し、守護戦士ガッディアは首都を去っていくのだった。


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