第66話 拘束
「ならば、【シールドアタック】」
突進系のスキルは、止まっている相手には有利なスキルだ。避けられないので、強力な攻撃を一方的に当てることが出来る。
ジャラジャラと巻き付いている鎖が、次々解けていく。
それに伴い、行く手を阻んでいる盾にひびが入り始めて限界に近かった。
「今です!」
「おっけー、おねぇさんに任せなさい!!」
ゼマはガッディアが鎖付きの盾と格闘をしている間に、彼の後ろへと回っていた。気付かれないためか、かなり距離を置いていた。
しかし、彼女はその距離からでも戦闘に参加できる。
アイアンロッドを強く握りしめて魔力を大量に流し込む。
すると、大盾に進行を邪魔されているガッディアに向かって、ロッドが伸びていく。
そしてそれは、彼の体に巻き付きはじめる。固定できるように何周もしていた。
【伸縮自在】はある程度なら伸びる方向を操作することが出来る。それを利用して、ゼマはガッディアを拘束しようとしたのだ。
鎧魔人となった彼は3メートル近いことに加えて、横幅もそれなりにある。動けないように手足を固定するために、相当な長さになるまで伸ばさなければいけない。
さらに、伸ばしすぎると、耐久力が落ちてしまう。
「これが狙いかっ。だが!」
ゼマが彼を拘束したことで、突進は停止させることに成功していた。しかし、スキルの発動が終わったことにより、次の行動をとることが出来る。
両腕にも巻きついているそれを、腕を横に動かす力で解こうとしていた。
すると「ギシギシ」とアイアンロッドから異常な音がし始める。武器の耐久値に早くも限界が来ているのだ。
「ララク、長くモチそうにない!」
「分かりました。もうすぐできます」
ララクは動けなくなったガッディアの前で、スキルを発動していた。その前に出していた【シールドクリエイト・ハード】と【チェインホールド】はすでに解いてある。
「【ウェポンクリエイト・ハード】」
このスキルで作り出すものは、巨大すぎるものだと時間がかかるものがある。さらに、それを動かすためにも時間がかかる。
だから、ララクはゼマに時間稼ぎを頼んだのだ。
「そ、それは!?」
ララクが創製した武器を見て、ガッディアは表情には変化がないが、明らかに動揺していた。それもそのはずだ。
彼が作り出したのは、ガッディアが今まさに持っているバトルアックスなのだから。
「スリーズ【ウェイトダウン】」
そのバトルアックスを両手で持ったが、すぐに地面へと落としそうになる。その斧はララクの身長よりも大きい。
重さも自分の体重を超えている。
普通はそんなものを持つことは不可能に近いが、重量を下げるスキルを発動してなんとか扱えるように工夫している。
「あなたの防御力は凄まじいですけど、これを受けても無傷ですみますかね?」
「それは、非常にまずそうだ。っく、っぐぅぅう」
ガッディアは危険な立場に立たされていることを知って、さらに力を込めてアイアンロッドから抜け出そうとする。
すると、鉄で出来た棒にヒビが入り始めていた。
このままでは、これが壊れるのは時間の問題だ。
ガッディアが必死で抗っているなか、その仲間であるデフェロットもその状況を空から確認していた。
ララクが作り出した【グランドウォール】で彼も足止めをされていた。しかし、彼の邪魔をしたのは5枚の土壁だけなので、すぐに妨害を抜けて自由に空を飛行できるようになっている。
高度がかなり上がっているとはいえ、滑空をすればすぐにガッディアの元へと追いつくはずだ。
「狙いはガッディアだったのか。今行くぜっ! 【ターボライド】」
デフェロットは頭を下向きにして、足の裏を天に向ける。そして、足裏から放出させる爆風を利用して、地上の仲間の元へと飛行していく。
「ララク、そのでっけぇ斧はお前には似合わねぇぜ!」
彼が狙うのは、今まさに攻撃しようとしているララクだ。ゆっくりとガッディアに近づいている最中だった。
逆に言えば、隙だらけとも言える。
接近した瞬間に攻撃しようと、双剣をすでに構えている。構えからして、【クロススラッシュ・竜巻炎風】を繰り出そうとしているのだろう。
だが、デフェロットの動きを邪魔していたのはララクだ。その彼が、自分を狙いに来る相手に気がつかないわけはなかった。




