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【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!  作者: 高見南 純平
第1部 追放からの旅立ち

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第61話 初ダメージ

「【シールドアタック】」


 鎧魔人へと変化したガッディアは、大盾を前に突き出して姿勢を低くした。

 彼が今なっている種族は、鎧と一体化した魔人である。

 詳しいことはいまだ解明されていなく、学者によると鎧は人間の皮膚のようなものだという。つまり、鎧も体の一部なのだ。


 魔人とついているが、魔法系のスキルはあまり獲得するケースは少ない。


 純粋な物理攻撃で、相手を叩き潰すことを得意としている。


 彼の放ったスキル【シールドアタック】は、突進系統のスキルだ。盾を前に構え、相手に向かってスライドしていく。

 走るというよりは、魔力によって体が自動的に動き出す、という表現が合っているかもしれない。


 平原の大地をすり減らしながら、巨体の鎧が襲い掛かる。


 標的はゼマのようだ。


「【刺突】」


 咄嗟にゼマは、突きを発動する。伸びたアイアンロッドは、ガッディアの盾にヒットする。しかし、彼女の突きでは【シールドアタック】の勢いを殺せなかった。


 アイアンロッドがみるみる元の形へと縮んでいく。そして、通常サイズに戻ると、その衝撃はどこにも逃げずにゼマへと向かっていく。


「と、とまりなさいよ!」


 アイアンロッドはつっかえ棒のようになっており、ゼマはどんどんと後方へと引き連れられていく。踏ん張って耐えようとするが、ガッディアは止まる気配がない。表情が読めないので、淡々と仕事をこなしている様子が余計に恐怖を与える。


「すまんな。これも勝負なのでな」


 さらに前傾姿勢となったガッディアは加速していく。そして、アイアンロッドでは抑え込めないでいた。

 このままではアイアンロッドが壊れる危険性があると思ったゼマは、一瞬だけ棒の先を大盾から離した。

 そのタイミングで横に避けようと考えたが、ガッディアの突進速度を見誤った。


「っぐぅ、わぁぁぁぁ」


 容赦ないタックルがゼマにぶつかる。


「や、やりすぎたか?」


 手ごたえは感じたのだが、逆にありすぎて心配になるガッディア。衝撃は凄まじく、ゼマの体は宙へと放り出された。


「ゼマさん!」


 助けに入ろうとしたララクだが、彼にはそんな余裕はない。いまだ、デフェロットは上空を悠々と旋回しており、フリーな状態だ。


「おらおらぁ、【エアスラッシュ・乱舞】」


 これは【エアスラッシュ】と【強斬乱舞】という斬撃を一度に何度も放つスキルを組み合わせたものだ。

 通常は、何の力も加わっていない単純な斬撃系統のスキルだ。


 しかし、これをそもそも他の系統の力が加わった剣で発動すると、その力が【エアスラッシュ】にも付与されるのだ。


 炎、そして風の刃が、雨のように空から無数に降ってくる。


「【強斬乱舞】」


 ララクはそれを同系統のスキルで対応する。彼も【剣適性】の恩恵で、達人的な剣速でこれを発動できる。

 全て綺麗に捌くが、ゴールデンソードに目をやると、信じられないぐらい刃こぼれを起こしていた。


 そしてそんなララクに、地面からの追撃が迫る。


「【ギガクエイク】」


 このスキルを発動したのは、ガッディアだ。ゼマを吹っ飛ばした彼は、離れた位置からララクを攻撃することにしたのだ。

 おそらく、ゼマを狙ったのはこのための布石だ。


 鎧魔人となったガッディアは、バトルアックスを振り上げる。そもそもの身長が高く、バトルアックス自体も2メートル近いので、かなり高所から振り下ろすこととなった。

 その一撃は凄まじく、地面にヒットすると周辺を揺らした。


「ちょっ、こっちまで振動が来たんだけど」


「お、恐ろしいですね」


 観戦していたジュタとレニナにも、戦いの激しさが伝わってくる。普段は温厚なガッディアだが、無表情で繰り出される彼の攻撃は、2人にも危機感を感じさせるほどのプレッシャーがあった。


 【ギガクエイク】は地割れを発生させて、下から攻撃をするスキルだ。


 強烈な攻撃によって発生した地割れは、標的のララクへと向かっていく。


「っく、挟み撃ちか」


 ララクは地上にいるのは危険だと、空中に跳んで回避する。が、空中にはデフェロットが待ち受けている。


「隙ありだぜ! 【クロススラッシュ・竜巻炎風】っ!」


 デフェロットは一気にララクへと近づくと、双剣を同時に振り下ろす。このスキルは双剣専用といってもいい限定的なものだ。

 2つの斬撃系の武器を、切っ先が重なるように斬りつけるスキルだ。

 もともとは威力と速度を魔力で強化した単純なスキルだが、風と炎の力が加わり、赤き炎を宿した竜巻が出現した。魔剣の力も加わり、その大きさはいとも簡単にララクを飲み込むほどだった。


(また竜巻か。でも、これは間に合わないっ!)


 つい最近戦ったシームルグを思い出した。豪翼を利用して驚異的な風を操っていたが、デフェロットはそれを剣で行っている。

 レベルはララクとさほど変わらず、シームルグの70という数字に比べればまだまだ低い。

 だが、種族やパッシブスキルの影響、さらに戦い方によっては、それ以上の力を発揮することがある。


 デフェロットはまさにそれだ。

 人間の持つ武器スキルと、魔人の持つ膨大で濃密な魔力を使って、ララクを翻弄している。


 デフェロットの放った【クロススラッシュ・竜巻炎風】をララクは【スピントルネード】のようなもので止めようと考えた。

 しかし、2人の距離が近く、スキルを発動している余裕がなかった。


「ぐぅっ!」


 ララクは剣を構えて攻撃に備えるが、無情にも彼の体は炎の渦に飲み込まれていった。


 竜巻の中に入ったララクの体は見えなくなったが、2つの系統の力で体に相当なダメージを受けているはずだ。


 ララクは今まで、【追放エナジー】を得てからダメージを受けたことがなかった。一度、火傷を負ったが、あれは自らのスキルによってだ。


 つまり、彼に初めて傷をつけたのは、デフェロットということになる。

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