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【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!  作者: 高見南 純平
第1部 追放からの旅立ち

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第54話

(っあ、ボクも部屋に行こう)


 思いがけず昔の仲間に出会ったので、ついそっちに気を取られてまだ部屋に入っていなかった。


 ララクも2階に上がって、指定された部屋に入っていく。


 中はそれなりに広く、2つのベッドが離れた位置に設置されていた。女性であるゼマと同じ部屋なわけだが、お互いに気にはしていなかった。


 すでにキャンプで夜を共に過ごしている。その際に近くで寝ていたりしたので、今更気にする方がかえって不自然に思えたようだ。


 冒険者の多くは、宿代の節約もあって男女ともに同じ部屋で寝ることも多い。一緒に旅をするパーティーなら、自然とそうなることが多い。

 ちなみにレニナは「デフェロットと一緒に寝るなんて嫌だ」と主張して、わざわざもう1部屋借りている。


「ん~。身体能力は強化されてても、山登りは疲れるなぁ~」


 丸くなりがちだった背中を伸ばしていく。体力は全体的に底上げされているが、疲れないわけではない。ゼマに体の疲れを癒してくれる【フィジカルヒーリング】をかけて貰えばよかったと、少し後悔していた。


 ゼマが帰ってくるまで少し横になろうと、鎧を外してベッドに寝転がった。


 表情には出ていなかったが旅の疲れが押し寄せていたようで、すぐにララクは眠りに落ちることとなる。


 数十分ほど浅い眠りにつくのだが、彼は自然と目を覚ますのではなく、大きな物音で目を覚ますことになる。


 「ドンドン」「ドンドン」と乱暴に、ララクの寝ている部屋のドアが叩かれている。最初はこれに気がつかなかったが、しばらくしてララクは目を覚ます。


 すると、扉の奥からさっき聞いたばかりの声が聞こえてくる。


「おいララク! いるんだろ? ちょっと面かせや」


 借金取りのような物言いで、部屋にいるララクに喋りかけてきたのは、さきほど会ったばかりのデフェロットだ。


 さっきは、顔を見合わせるのも嫌がっていたはずだが、何故か彼のほうからララクを訪ねてきた。


「で、デフェロットさん?」


 彼の声に気がつくとララクの目はパッチリと開ききる。慌ててベッドから降りて、ドアを開けに行く。


「どうしたんですか?」


「おいララク、俺と勝負しろ」


 唐突にデフェロットはそう言ってきた。

 ララクは寝起きということもあって、そのシンプルな言葉の意味を理解しがたいようだ。


「勝負、ですか? なんで急に?」


「俺は以前より遥かに強くなった。だから、お前を倒して俺は次へと進む。

 見たくもねぇ顔に出会っちまったと思ったが、よく考えたら絶好の機会だ。

 あの時の屈辱、ここで晴らしてやるよ」


 ケルベアスとの戦闘で瀕死になったデフェロットを、追放したララクに助けられた。そしてその後、パーティーに誘うもすぐに断られた。

 そのことが相当、彼の怒りを買ってしまったようだ。


「よく分かりませんけど、戦うことは大丈夫です。でも、あんまり手加減できないですよ?」


 ララクは別れた時点でのデフェロットのスキルを全て所持している状態だ。しかも、それは【追放エナジー】の同じスキルは強化されている、という効果で大幅に性能が上がっている。

 そのため、論理的に考えてデフェロットが自分に勝てるとは思えないようだ。


「その態度、頭にくるぜ。だが、それも今のうちだ。とっとと表に出ろ」


 勝負、というよりはほとんど喧嘩を吹っ掛けられているに近い。常に眉間にしわを寄せて、ララクを挑発している。


「ちょ、ちょっと落ち着いてください。ボクだけでは決めかねます。もう1人の意見も聞かないと」


「もう、1人だと? 誰もいねぇじゃねぇか」


 デフェロットの位置からでも中の様子は伺えたが、ララク以外に人は見えない。なので、誰のことを言っているか分からなかった。


「あの、もう1人仲間がいまして。実はパーティーを組んだんです」


 久しぶりの再会だったので、デフェロットは彼がパーティーを募集していたことも仲間が増えたことも知らない。


「お前に仲間? 俺の誘いを蹴っといて、誰か入れたって言うのか!?」


 ララクに怒らせる気はなかったが、デフェロットは些細なことでキレてしまう。


「ヒーラーなんですけど。凄い方でして、その人とここまで来たんです」


「ヒーラー、かぁ。おい、そいつはどこいる?」


 すぐに会わせろと、恫喝し続けるデフェロット。だが、やはりこういった態度に慣れているララクなので、あまり怯えたりはしていなかった。


「……ここに、いるけど?」


 デフェロットは後ろから声をかけられた。


「お前が?」


 振り返るとそこには、バスタオルで頭を乾かしているゼマがいた。丁度、風呂から上がったようだ。


「っそ。私がララクの仲間。あんたは?」


「俺はデフェロット。こいつとは、一応だがパーティーだった」


「ふーん、昔の仲間ね」


 2人の間に微妙な空気が流れ出す。初対面ということもあって、お互いが探り探りといった感じだ。


 そんな時に、別の部屋からガッディアとジュタが慌ててやってくる。デフェロットが大声を出していることに気がついて様子を見に来たようだ。


「おい騒がしいぞ」


「ど、どうしちゃったんですか? 急に部屋を飛び出して」


 ララクの部屋の前に続々と人が集まり出す。レニナはお昼寝中だ。


「ねぇあんた、ここじゃなんだし、下で話聞くよ。なんか、私に用があるんでしょう?」


 そう言って階段を上ったばかりだったゼマは、ロビーへと引き返していく。


 デフェロットは「っち」といつもの癖で舌打ちをしながら、彼女についていく。ララクやガッディアは訳も分からず、デフェロットの真意を知ろうとロビーへ向かう。

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