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【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!  作者: 高見南 純平
第1部 追放からの旅立ち

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第43話 交渉

「実は、僕とは誰もパーティーを組んでくれなくて。1人じゃクエストなんてこなせないし。

 だから、どうしてもパーティーに入りたいんです!」


 緊張しながらも、明確に自分の意志を彼は伝えてきた。

 それを聞いて、疾風怒濤の面々は、なんとなく彼の言い分を理解し始めた。


「そういうことか。キミ、失礼だがレベルは?」


 詳しく話を聞こうと、ガッディアが質問をする。まだ入れるかどうかは決まっていないとはいえ、加入前にある程度の戦力を確認するのは常識だ。

 しかし、スキル画面に関しては、個人情報漏洩もあるので、最初は確認しないことが多い。


「16、です」


 言葉を詰まらせながらも、正直に答える。彼の年齢も、同じ数字ぐらいに見受けられる。背が低いので、もう少し下かもしれない。


「そうか、16か。それは厳しいかもしれない。俺たちはこう見えて、全員がレベル40を超えている。

 ここなら、新しく発足する新人パーティーも色々とあるんじゃないか?」


 首都サーザーは冒険者が多く、他の街から上京してくる者が多いので、自然と新パーティーの数も多い。

 16という数字は、初心者冒険者の数字だ。

 10レベル前後は、レベルアップのための必要経験値数がかなり低い。普通に生きているだけでも経験値は少量ながら貰えるので、それで自然と上昇していくものだ。


「そうなんですけど、魔法系統も武器系統のスキルも持っていない僕は、必要ないって断られてしまって」


「……お前、さすがに他のスキルは持ってるよな?」


「あれ、なんかこれってデジャブ?」


 デフェロットたちは、似たような人間と出会ったことが一度だけあった。彼は逆にレベルは高すぎるのだが、それに見合わず初級回復スキルしか所持していなかった。パッシブスキルの【回復力上昇】も持っていなかったので、ヒーラーとして使っていくには厳しかった。


 レニナは、そんな最弱ヒーラーとの出会いと、今の状況が重なって変な気分だった。


「はい。【錬金術】だけですが……」


「それは珍しいスキルじゃないか」


 ガッディアはその名前だけを聞いて、好印象を受けた。


【錬金術】

 効果……対象のものを別の形に変化させる。複数の物を組み合わせることも可能。ただし、元の性能を逸脱した物は作れない。



「確か、凄腕の錬金術師は、周囲の物やフィールドを巧みに変化させて戦うという。それ1つで汎用性が高いスキルだと、俺は感じたが」


「たぶんそれは、レベルが高くて、さらに【錬金効果上昇】のパッシブスキルを持っている方だと思います。

 僕のレベルだと、薬草を回復薬のポーションに変えるぐらいしかできなくて」


「……それならポーションを買えばいい、と仲間に入れて貰えないのだな?」


「その通りです」


 ガッディアは、ようやく彼の行動に合点が行った。

 そして、他の2人にも分かり役説明するために、結論を述べた。


「つまり、キミは成長すれば役に立つ能力を持っているが、まずそのためにはパーティーを組んでレベルアップする必要がある。

 しかし、今の時点では【錬金術】の対象物が限られていて、能力が低いと判断されている。

 故に、他のパーティーからは門前払い、ということだね?」


「おっしゃる通りです。大きいものはまだダメで。組み合わせも上手くいかなくて」


 特に若い冒険者ほど、ガッディアのように【錬金術】の可能性を知らないケースが多いだろう。逆にそのことを理解できるベテラン冒険者は、レベルが低くて加入させようとは思わないだろう。


「なーんか、あいつと似ているようで似てないね」


 レニナは、少し前までヒーラーとしてパーティーにいた少年ことを頭に思い浮かべる。


「あの子は、ヒーラーという役割のネームバリューがあったから、様々な場所に加入できたんだろう。しかし、他にスキルを覚えることが出来ず、何度も追放された。」


「そ、そんな方がいたんですね。(僕も、何度も断られたっけ)」


 ジュタは冒険者を始めてから、これまで一度もパーティーに入れなかったことを思い出していた。

 人に話しかけるのが苦手そうな彼にとって、それはかなり苦しかったはずだ。


「……ジュタ、なんとなくだがお前の言いたいことは分かったぜ。

 おい、ガッディア。こいつはレベルが上がれば、スキルが増えなくても使えるようになるんだな?」


 リーダーはデフェロットだが、知識や戦いの経験はガッディアの方が蓄積されている。錬金術師にも詳しそうなので、改めて彼に確認する。


「そのはずだ。【錬金術】はスキルの中でもっともやれることが多いと言っても過言ではない。

 もしパッシブを得れなかったとしても、レベルが上がって対象の範囲が拡大すれば、戦力にはなるはずだ」


「そうなの? あれ、あんたって意外と出世株??」


 ガッディアの話を聞く限りでは、かなり良いようにレニナは感じたようだ。デフェロットも、そう感じ始めている事だろう。


「だが、俺らの所までレベルをあげるのは面倒くせぇだろ。それまでは、足手まといってことだろうが」


 それを聞いて、ジュタの顔がさらに暗くなる。隠さずにデフェロットが言ってしまうので、気弱なジュタにはそれがグサグサと刺さっていた。


「あぁ、それが彼がパーティーを組めない原因の1つだ。だが、レベルの高いモンスターと戦えば、それだけ多くの経験値が貰える。

 レベル40程度を倒し続ければ、新人同士で組むよりも遥かに早くレベルは上がる。

 だが、お前の言った通り、それまでは彼は守る対象となる」


「……俺らはそれが煩わしくて、あいつを追い出したんだろうが。っち、なんでここまで来てあの野郎の顔を思い出さなきゃなんねぇ」


 貧乏ゆすりをしだして、分かりやすくイライラする。


「さっきも言ったが、彼とララクでは境遇が違う。

 それに忘れるな。これは交渉だ。

 この条件を飲まなければ、お前の目的は果たせない」


 話はジュタの方に流れて少し脱線したが、これは「隠れスキルの判別」をして貰うための条件なのだ。


「……あー、分かったよ。お前を【疾風怒濤】に入れてやるよぉ! いい根性してるぜ」


 弱弱しい態度をしながら、しっかりと交渉をしてきたジュタの姿に、いら立ちながらも、同時に感心さえしていた。

 おそらく、デフェロットたちが自分を探していることを知り、またのないチャンスだと思い切って声をかけたのだろう。

 ジュタには、なりふり構っていられる余裕はなかったようだ。


「ほら、手を出せ」


 デフェロットは自分の紋章を差し出す。

 慣れていないので、ジュタは慌てて自分の紋章を近づけた。


(これでようやく、契約を結べる!)


 言葉には出さず、髪で表情も読み取りにくいが、かなり喜んでいるようだ。


「デフェロット・バーンズと、えーと、ジュタ……リリカルハルナ?だっけか」


「ろ、ロロンアルファです」


「全然違うんだけど」


 物覚えの悪いデフェロットに、レニナは呆れた。しかし彼女も、正確な名前は覚えきれていない様子だった。


「あーそんなだったか。デフェロット・バーンズとジュタ・ロロンアルファのパーティー契約を結ぶ」


 ジュタは初めて、紋章同士が光の線で結ばれていくのを見ることとなる。

 ずっと憧れていたことが、彼に訪れたのだ。

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