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【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!  作者: 高見南 純平
第1部 追放からの旅立ち

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第40話 疾風怒濤、到着

 ここはパーリア国 首都サーザーである。

 国内で人口が一番なのはもちろん、冒険者とギルドも数多く存在している。

 少し街を歩けば、鎧や武器を持った冒険者たちとすれ違うことだろう。


 仕事を探しに、地方から上京してくる者も多い。昨今では国内だけではなく、隣国からも移住者や旅行者が入国してきている。


 今日もまた、新たな者たちがこの都にやってきていた。


 しかし、彼らの目的は、少し他の冒険者と比べると変化球と言えるだろう。


「やっとついたな」


「はぁ、結構時間かかっちまったぜ」


「もう疲れて死にそうなんだけど~」


 3人の冒険者たちが、南東の入り口で立ち止まっていた。

 都には背の高い建造物も多いので、上を見上げて景色を楽しんでいた。約1名、顔がどんよりとしていて、それどころではなさそうだった。


「おい、レニナ。てめぇは【空中浮遊】でほとんど浮いてたじゃねぇか。

 何が疲れた、だぁ。言うとしたら、俺か重装備担いで歩いてきたガッディアだろうが」


 冒険者パーティー【疾風怒涛】のリーダー・猛剣のデフェロットが、愚痴を言う仲間の意見を否定する。


「魔力使うだけでも疲れるんだから。あんたみたいに体力馬鹿じゃないんだよね」


「っけ、ちょっとは鍛えやがれ」


「気が向いたらね」


 狐風のレニナが、両耳を前に折れさせ、くたびれた様子で喋っていた。他の2人の足元が土で汚れているのに対して、彼女は磨いたばかりのような綺麗さだった。


「俺も疲れたわけではないが、少し腹が減ったな。情報収集もかねて、近くのギルドを訪ねてみないか?」


 2人よりも年上である守護戦士ガッディアが、現実的な提案をする。顔には出ていないが、デフェロットの言った通り、ガッディアが一番疲労を感じているはずだ。


 ここまで来るのに、山を1つ登ってきた。道中、モンスターに遭遇して戦闘もしてきた。同じ国内であっても、街から街に移動するのは、この世界では危険で困難な行為と言える。例外はいるが。


「たしかに、そろそろ飯の時間か。久しぶりに酒も飲みてぇ」


「酒臭くなるから飲まないで欲しいんだけど」


 彼女は狐人なので、鼻がきく。それに加えてパッシブで【嗅覚上昇】が発動しているので、些細な臭いですら感じ取ってしまう。


「鼻、つまんでればいいだろ」


「そんなんじゃ意味がないのよ。もともと、あんた口臭いのよ」


「あぁん? おまえ、喧嘩売ってんのか?」


「おい、みっともないから、喧嘩はやめろ」


 疲れのせいか、デフェロットとレニナはいつも以上に不機嫌だった。

 このままではまずいと、ガッディアは先導してギルドを探しに行った。


「ここがギルドだ」


 すぐに目的地は見つかった。彼らがいつも利用するジンドの街のギルドよりも、小奇麗な外観をしていた。

 扉の近くに看板が出ていて、「マウンテンウォリアー」と書かれている。


「マウンテン、ウォリアー?」


「ギルド名だな。ここはギルドの数が多く、それぞれが専門的なクエストを扱っていることが多い。

 だから、分かりやすいように名前をつけているのだ」


 ガッディアは今でこそ、家族のいるジンドの街を拠点にしているが、若いころは首都に何度かやってきたことがあった。

 ジンドの街にもいくつかギルドがあるが、名前は「図書館近くのギルド」など他の場所と合わせて言えば伝わる。

 名前を付けるか否かにルールはなく、トップであるギルドマスターによって変わる。


「山の仕事、専門ってことか」


「そうなるな。山仕事に適した人間ならば、ここしか利用しない者もいるだろう」


「山だけなんて、絶対無理」


 デフェロットたちは扉を開けて、中に入る。

 内観も綺麗で、観葉植物などが設置してあり、彩りも良かった。


 マウンテンという力強い名前のわりには、穏やかさを感じる。


「山仕事だけあって、全員タフそうだな」


 デフェロットは軽く店内を見渡すと、筋骨隆々な男たちが多いことに気がつく。レニナが臭いの話をしていないので、どうやら加齢臭などはしないようだ。


「キノコ狩りに、山道の整備。モンスター退治以外にも、山に関する仕事が沢山あるようだぞ」


 ガッディアは端にあるクエストボードに目をやる。そこでは、何人かの冒険者が、次に行くクエストを吟味している。


「とりえあず、食事しない? 私、このままじゃ餓死しそう」


「わーたっよ」


 ここも一部が酒場エリアとなっていて、食事を楽しむことができる。


 3人は空いている席に座って、注文をすることにする。


 メニューは、山菜や家畜ではない野生モンスターを使った料理が多かった。


「あー、キノコの盛り合わせと、マウンテンボアのサイコロステーキ。あと、ジンジャーエール」


「私は、油揚げのチーズ焼きと、フレッシュピラフかな。飲み物はトマトジュース」


「ゴブリンの内臓焼きと、ジャンピングラビットの骨付き肉、あとバジルトマト。飲み物は緑茶でお願いします」


 それぞれが好きなように注文をする。とりあえず頼んだだけで、まだまだ胃袋に入れるつもりだろう。


「そういえばさ、ガッディアって酒飲まないよね。弱いんだっけ?」


 ソフトドリンクを頼んだので少し疑問に感じたようだ。見た目的には、ビールジョッキが似合いそうだ。


「妻と娘が嫌がるのだ。やはり臭いがきついらしい」


「あー、奥さんと娘ちゃん、獣人なんだっけ?」


「あぁ、犬人だ」


 ここパーリア王国は、多種多様な種族が住んでいる。人口のうち半分以上は創設種族である人間と言われている。だが、もう半分近い国民は他種族ということになる。

 異種族間で結婚することも珍しくはない。


「ほらー、あんたも酒、控えてよ」


「うっせぇ。お前は俺の妻じゃねぇだろうが。気なんて遣ってたまるか」


「ふん。素直じゃない男だ。結局、ノンアルコールにしていたじゃないか」


「そんなんじゃねぇ。今日はしょうがって気分なんだよ」


 彼は口臭について言われたことを気にしたのか、ジンジャーエールを頼んでいた。ちなみにメニューの中にはジンジャーエールを使ったカクテルも色々とある。


「変に気を遣われるのも気持ち悪いんだけど」


「じゃあ、どうすりゃいいんだよ!」


 どうやらレニナは半ば冗談で言ったようで、彼が酒を頼んだのか頼んでいないのかさえ、ほとんど気にとめていなかったようだ。


 こんな調子で、疾風怒濤は口喧嘩をしながらも、無事にここまでやってきたのだった。

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