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【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!  作者: 高見南 純平
第1部 追放からの旅立ち

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第31話 空からの襲撃

 「バザッバザッ」と風を切る轟音が響き渡っていく。

 そして、ララクとゼマが空を見上げた瞬間、奴は飛来してきた。


「ゼマさん!」


「あっぶな!」


 ララクの合図で、2人は咄嗟に後ろへとジャンプしてそれを回避した。


 空から現れたそれは、超高速でベヒーモスの体に落下してきたのだ。

 強靭で鋭利な爪が、すでにベヒーモスの心臓を貫いていた。


 一瞬のうちに、あの巨大なモンスターを絶命させてしまったのだ。


 大きさはベヒーモスとさほど変わらないが、翼があるぶんこちらの方が迫力があった。


「こいつが冒険者狩り、シームルグね」


「そのようです」


 2人は討伐対象であるその大怪鳥を注意深く観察していた。


 そして、あちらもまた狩場にやってきた冒険者をギロッとした目玉で睨んでいた。


 大怪鳥シームルグは、全体的に白い羽毛で覆われているが、ところどころに黄金色の部分がある。

 まるで誰かの手によって装飾されているかのような神々しい見た目をしている。


 容姿は煌びやかだが、気性は荒い。食事など関係なく、冒険者を狙うという変わった特性をしている。

 一説によると「シームルグの先祖に当たるモンスターが冒険者によって乱獲されたから、その恨みで執拗に狙ってくる」とされている。

 が、真偽は直接聞いてみない限り分からないだろう。


「シュロロロラァァァ」


 牙のようなものなどはないが、その代わりに標的を痛めつける長い嘴が特徴的だった。


 足元にあるエサに目もくれず、冒険者であるララクたちに狙いを定めていた。


「【サーチング】」


 敵が仕掛けてくる前に、相手の分析を開始するララク。



 名前  不明

 種族  シームルグ

 レベル 70


 アクションスキル 一覧

【フェザーウィンド】【スピントルネード】【ウィングトルネード】【ソニックバード】【ウィンドカッター】【トルネードバード】【スピードアップ】【トルネードブレス】【ヘルクロー】


 パッシブスキル 一覧

【飛行能力上昇】【俊敏性上昇】【風系統効果上昇】【自然治癒能力上昇】【攻撃力上昇】【防御力上昇】


「レベル70か。相手にとって不足なし、ってところかな」


 今までで一番の高レベルモンスターだった。冒険者を今まで倒してきたということは、その分の経験値を得ているということだ。


 ララクはどう戦おうかと考えていた矢先だった。

 すでに、ゼマは動き出していた。


「よぉし、じゃあ戦闘開始ね!」


 ベヒーモス戦の時と同様、先陣をきるゼマ。

 棒高跳びの姿勢をしており、頭の位置が高いシームルグに攻撃するもりだった。


「ちょっと、考えなしに突っ込むなんてっ」


 作戦を練らずに特攻するゼマに注意喚起するが、やはり彼女は聞く耳を持たなかった。


「先手必勝!」


 気合いを入れて、棒を利用して再び宙へと飛び上がる。


 すると、巨大なシームルグの瞳と、細身なゼマの目が同じ位置になり、目線がぶつかり合った。


「【スイングインパクト】」


 出し惜しみをする気はないようで、初手からスキルを発動して打撃を強化した。

 ゼマの持つロッドは、シームルグの嘴の付け根辺りに向かっていく。


 しかし、アイアンロッドはシームルグにヒットすることはなかった。


「シュロロロオロロ」


 剛翼を大きく広げたシームルグは、そのまま飛び立ち、高速でゼマの攻撃を避けた。その際に巻き起こった風圧で、無防備なゼマの体が吹っ飛ばされる。


「っち、さすがにさっきみたいにはいかないか」


 ベヒーモスは猪突猛進という言葉がピッタリのモンスターだが、シームルグは頭が良い。無理に相手の戦いに付き合う気はないようだ。


 さらにシームルグの反撃は終わらなかった。

 広げ切った翼を使って、スキルを発動する。


 すると、翼によって巻き起こっている突風に魔力が注がれていく。風系統スキルによくみられる、半透明な緑色のオーラによって風が視認できるようになった。


 その凄まじい突風は、山にある木々や草葉を揺らし、最後にはゼマを強襲していく。


「っく、【ウィングウィンド】ってとこか」


 空中で回避のできなかったゼマは、それをまともに食らってしまう。

 鳥類系統のモンスターが使用することの多いスキルで、翼の力が加わるので威力が高かった。いわば、剣ではなく翼で放つ【ウィンドスラッシュ】のようなものだった。


 シームルグの翼は巨大なので、その分だけ風の範囲と威力が上昇していく仕様になっている。


 突風にさらわれたゼマの体は、そのまま地面へと転がり落ちていく。しかし、上手く受け身は出来たようで、致命傷にはならなかった。

 だが、ゼマの体には無数の擦り傷ができていた。

 風で肌が切られたのだ。


「ゼマさんっ、大丈夫ですか?」


「いったぁ。いちいち心配しなくていいから。【クイックヒーリング】」


 ゼマは追撃に備えてすぐに立ち上がり、回復スキルを使用した。

 このスキルは、【ヒーリング】よりは回復力が少ないが、回復速度が優れている。といっても、ゼマはパッシブスキル【回復力上昇】を持っているので、ララクが使用する場合の【ヒーリング】と同じかそれ以上の回復力を持っていた。


 なので回復速度と回復量、どちらにも優れた万能回復スキルと言えるだろう。


 【クイックヒーリング】の効果により、みるみるそこら中にあった擦り傷が癒えていく。

 スキルを喰らったというのに、すでに万全の状態に戻っていた。


(凄い。これがヒーラーの力)


 ララクは自分で回復する場合は、もっと時間が掛かってしまうことを知っていたので、一瞬で傷をなかったことにしてしまったことに驚いた。


「ララク、なんとなくわかったと思うけど、私の戦い方はヒット&ヒール。傷ついたってすぐに戦闘復帰できるの」


 服などに汚れはついているものの、彼女自体はこの山に訪れていた時とまったく同じ状態だった。もしかすると、少しだけ元気になっているぐらいかもしれない。


「なるほど。多少の無茶は必要経費、ってところですか」


「そういうこと。ほら、敵がくるよ。作戦を考えてんのかもしれないけど、まずは戦ってみないとでしょ」


「分かりました。今は、ゼマさんの戦い方に付き合います。でも、様子見が終わったらボクの作戦を聞いてもらいますよ」


「はいはい、リーダー」


 冒険者パーティーのリーダーとして主導権を握られすぎてはいけない、と感じたララクはどうにかしてゼマに言うことを聞かせたいようだ。


 作戦を練って、様々なスキルで対応するララクと、当たって砕けろの精神で戦うゼマとでは根本的に考え方が違っていた。

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