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【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!  作者: 高見南 純平
第1部 追放からの旅立ち

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第26話 朗報

 館長と話し終えたララクは、いつも通り達成報告をするために冒険者ギルドを訪れていた。

 1人でここにくるのに慣れてきたのか、彼の表情から余裕を感じ取れる。


「あの、すみません。戻ってきました」


 いつも対応してくれる受付嬢に声をかける。他にも働いている人はいるが、ララクがギルドにやってくる日と彼女が働いている日が重なることが多かった。


「あれ、ララクじゃない。もう帰ってきたの?」


 テレポートを使用したので、魔狼のクエスト期間はそこまで長くなかった。特に、討伐ではなく調査がメインのクエストだったので、受付嬢には帰りが早すぎると感じたようだ。

 テレポートを使う冒険者は少ないので、まだララクの帰りの速度に慣れていないようだ。


「ええ。無事、終わりました。館長も納得してくれましたよ」


「え、じゃあ本当に魔狼がいたってこと?」


「えぇ、まぁ。その辺は、館長に直接聞いてみてください。クエストが本当に達成されたかどうかの確認も含めて」


 もう一度、いちから説明するのは大変だと感じたのか、詳細は話さなかった。それに、魔狼島のことが多くの人間に広まることも、あまり良くないと考えているようだ。


 今回ララクは、クエスト達成の証拠になるようなものを持ってきていなかった。図書館はギルドからそれほど遠くないので、確認しやすいと思ったからだ。


「……分かった。じゃあ、本当に魔狼島の秘密が分かったのね?」


「はい」


 ララクは受付嬢の目を真っすぐ見て、嘘偽りなく答えた。証拠を提示するのも面倒くさいので、いっそのこと【嘘鼻】を所持していることを話そうとも考えた。

 今までそうしなかったのは、そのためには【追報エナジー】のことなどを説明しなければいけなかったからだ。それに、「嘘をついたら鼻が長くなる」というのを人に話すのがこっぱずかしかったからかもしれない。


 しかし、その必要はなかった。


「うん、信じるよ。まぁ、もともと館長が納得すればいいだけのクエストだしね。今度、手続きのついでに聞いてみるね。

 お疲れ様。えーと、ちょっと待ってね」


 受付嬢は、もうララクを疑う気はないようだ。ベテランや顔なじみであれば、クエストの報告は口頭で済むこともある。もちろん、そのあと依頼者に連絡してしっかりと確認はする。


 報酬を取りに彼女はカウンターの奥にある部屋に向かった。ここには資料や報酬などが保管されている。今回のクエストはだいぶ前に契約されたものなので、探すのに時間がかかっていた。

 しばらくして奥から「あった、あった」と声が聞こえてくる。


「お待たせ。これが報酬よ」


 戻ってきた受付嬢は、カウンターに報酬金を置く。しかし、過去のクエストよりも明らかに小さく思える。


「ありがとうございます」


 一応中身を確認したが、やはり金額は少なかった。だが、ララクはそのことを口にすることはなかった。クエストの報酬金は事前に分かるが、ララクはあまり気にしていなかった。

 貰えるだけでありがたい、と考えているのだろう。

 それに、シーサペントの討伐報酬だけで当分は暮らしていける。


「あ、そうだ。実はね、ララクにいいお知らせがあるのよ」


 受付嬢は何かを思い出し、くすくすと笑いだす。


「なんでしょうか?」


「ほら、ヒーラー募集したでしょ? 1人だけなんだけど、入ってくれるかもしれない人が現れたのよ」


「え、もうですか?」


 募集のことをララクが忘れていたわけではないが、予想よりも随分と見つかるのが早かった。魔狼のクエストがスムーズに終わったので、もうしばらくかかると考えていたのだ。


「えーと、あ、今いるみたい。ゼマさーん、【ハンドレッド】のリーダーが帰ってきましたよ」


 受付嬢は、ギルド内にある酒場エリアに向かって声を出す。どうやら、そのヒーラーはララクがクエストを終えるのを待っていたようだ。


 ララクはそれを聞いて、振り返った。

 すると、1人の女性がララクに近づいてきた。


「あんたがララク、だっけ?」


 年齢は20代前半で、綺麗な赤毛をしている。服装は、白のローブをかなりアレンジしたものだった。動きやすいように丈を短くしており、前は開けてあった。短めのパンツを履いており、その下には健康的な足がスラッと伸びている。

 へそも出しており、魔法使いのよく着るローブのわりには、かなり動きやすさを重視した格好だった。

 背中には、長めの棒を携えている。彼女の武器だろう。


「あ、はい。あなたが募集を見て来てくれたヒーラーの方ですか?」


 一風変わった格好に目を奪われながらも、ララクは話を進めた。


「っそ。なんか面白そうだったからさ。私の名前は、ゼマ・ウィンビー。よろしく」


 彼女は気さくに片手を前に出した。


「よ、よろしくです」


 ララクは自分の手汗を気にしながらも、その手に触れて握手を交わした。


 イメージしていたヒーラーよりも、社交的というか距離が近いな、とララクは感じていた。


 彼女のペースにのまれそうになりながらも、新たな仲間候補 ゼマ・ウィンビーとララクは出会うのだった。

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