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【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!  作者: 高見南 純平
第1部 追放からの旅立ち

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第17話 図書館にて

 街の中でも一際大きな建物だった。5階まであるので見上げるほど背は高く、さらに地下にも部屋が続いている。

 ここはキンド図書館・本館だ。

 街に住むご老人から学生、さらにはモンスターなどについて調べにくる冒険者まで、様々な人たちが利用する歴史ある場所だ。


(館長、いるといいけど)


 特にアポを取っていたわけではなかったが、常駐していると考えて、ギルドを後にしたその足でやってきていた。


 大きな扉を開けると、ララクの目に大量の本棚が映り込む。まだ1階だというのに、凄まじい広さだ。

 しっかりと管理しているようで、汚れなどは特になく綺麗に本が敷き詰められている。


 脇には椅子がいくつか置いてあり、絵本を読み聞かせしている家族や、新聞を読んでいる老人などが多くいた。今は昼すぎなので、若者はそれほど多くなかった。学生ならまだ学校に行っている時間だ。


 中央は通路になっており、真っすぐ行くと総合カウンターと貸し出しコーナーが用意されていた。


 通路を歩いていると、係員や利用者がちらちらとこちらを見てくる。ララクは対モンスター用に軽装備を取り付けているので、少しだけ目立っていた。


「あの、このクエストを受けに来た者なんですけど」


 総合カウンターにいる係員に、魔狼島の書かれた依頼書を見せる。


「えーと、クエストですか……。あ、依頼主は館長ですね。少々お待ちください」


 最初は動揺していたものの、内容を理解したようですぐに館長を呼びに行ってくれた。ここは冒険者が情報収集にくることはあっても、クエストを出すことはほとんどない。本を集めるのは、冒険者の役目ではないから。

 ごくまれにだが、帰ってこない本を探して欲しい、といったクエストが申請されることはあった。


 しばらくすると奥の部屋から館長と思わしき人物がやってきた。ゆったりとしたスーツを着たふくよかな体形の老人だった。白いひげを携えており、表情は柔らかい。


「おーーー、キミがこのクエストを受けてくれたのか。いやー、嬉しい限りだ! 最近はまるっきり引き受けてくれる人がいなくてね」


 受付嬢の予想通り、彼は大いに喜んでいた。ひ弱そうな見た目のララクだが、館長はあまり気にせずに歓迎している。

 よっぽど嬉しかったのか、図書館の館長のくせに声が大きく、注目を集めていた。


「館長、お静かに」


 案の定、受付にいた職員に注意を受ける。


「すまんすまん。キミ、ここじゃなんだから、会議室に移動しよう」


「分かりました」


 館長はララクを連れて、地下にある会議室に向かっていく。


「何もないが、とりあえず座ってくれ」


「はい、広いですね」


 会議室には長テーブルが1つと、10個ほどの椅子が並べられていた。2人が話すにしては広すぎるが、館長の声が上にまで届かない場所はここしかなかった。


「いやー、改めてクエストを引き受けてくれてありがとう」


 上機嫌の館長はララクの対面に座ると、さっそくクエストの話に移った。


「私はこの館長をしているということもあって、大抵のことは知りつくしているつもりだ。モンスターのこともな。

 しかし、そんな私でも詳しい情報を知らない存在がいる」


「……それが、今回の魔狼ですね」


「あーそうだ。魔狼の目撃情報は無人島でいくつかあるんだが、間近で見た者はいないのだ。島から微かに獣が見えたり、遠吠えが聞こえたり、と不確かなものばかりだ。

 そして、冒険者に頼んで調査してもらったが、特に進展はなかった。

 クエストにも書いたが、調査にいったまま戻ってこないものもいた」


 このクエストは不確定要素があるのと同時に、謎の失踪を遂げたものがいる、という危険要素もあった。


「でも、戻ってこないものがいる、ってことは魔狼に出会ってしまい捕食されたかもしれない、ということでもありますよね」


 ララクはクエスト内容を見た時から気になったことを述べた。


「おー、キミは話が早いなぁ。そうなんだ、ただいないのであれば私も諦めるが、可能性はまだ残っているのだ。もし本当に存在するのであれば、強力なモンスターに違いないはず。

 モンスター図鑑にも載っていない、謎の魔狼。

 ぜひ、調べて欲しい」


 魔狼の情報は、この図書館の本をすべて閲覧したとしても得ることはない幻のようなものだ。それに館長は取りつかれているのかもしれない。


「はい、ぜひ協力させてください。ボクも気になっているので」


「よく言ってくれた! 期待して待っているぞ」


 館長は立ち上がると、ララクの元へとやってきてその手を掴んだ。しわしわの腕が、幼い彼の手を包む。祖父と孫であってもおかしくはない年齢の2人だが、好奇心の塊の2人はいつの間にか意気投合していた。


「まずは、どの無人島が魔狼島なのかを見つけないといけませんね」


「この近辺には多くの島が存在する。全部を調べるのは大変だろう。道中、危険なモンスターにも出くわすだろう。しかし、きっと大丈夫だ!

 キミは私の若いころ……には全く似ていないが、同じ目をしている気がする!」


「は、はぁ。でも、腕には自信があるので」


 館長のテンションにはララクも少し圧倒されていたが、期待されることは初めてだったので、実は内心喜んでいたのだった。

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