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【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!  作者: 高見南 純平
第1部 追放からの旅立ち

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第14話 ネガティブ&ポジティブ

 スキルを色々と組み合わせたので、どっと疲れが押し寄せる。しかし、彼はゆうゆうと空を飛んでおり、まだまだ余裕な様子だった。


 余裕がないのは、この3人組だ


「た、倒しやがった!」


「む、惨いニャ」


「や、やりすぎだよ」


 ゴブリンを【フレイムショット】で火あぶりにした時のように、少々オーバーキルだった。漁師が行う、捌くところまでやってしまったのだから。


「これで無事に、船を出せるかな」


 漁師たちが海へ出られるようになったことを確認し安堵する。クエスト完了なのは間違いなかった。


 彼は【空中浮遊】で砂浜へと戻って降り立った。

 するとそこで、自分の手にある紋章が点滅していることが分かった。

 ただ光っているだけではレベルアップだが、点滅していればスキルを獲得したということだ。


「ボクに、スキル?」


 自分のスキルを持ったことがないので喜びたい気持ちと、もう特にいらないかな、という複雑な気持ちがララクの中に芽生える。

 しかし、紋章が知らせたのは新スキルの獲得ではあるのだが、通常とは少し違っていた。


 ララクは紋章を押して情報を確認する。


 名前  ララク・ストリーン

 種族  人間

 レベル 45→48


 新スキル

【フレイムネット】

 獲得条件……【ストロングネット】【耐久値強化】【フレイムフォース】を組み合わせる

 効果……炎耐性と炎系統の力が宿った網を展開する。



「もしかして、複合スキルか。これ」


 ララクの言った通り、これは先ほどの戦いで組み合わせたスキルが1つになったいうことだ。通常の複合スキルは【ウィンドスラッシュ】のように、元となるスキルを所持していれば自動で獲得できる。


 しかし、今回のように紋章では判断できない特殊な組み合わせの場合は、その限りではなかった。斬撃と風が相性が良い事は紋章も理解したようだが、網と炎を組み合わせるのは計算外ということだ。

 獲得条件と書いてあるが、つまるところ【フレイムネット】はララクが組み合わせたことによって誕生した、オリジナルの複合スキルということだ。


(つまり、スキル一覧の中にない相性のいい組み合わせがまだ存在するのか。スキルはいっぱいあるわけだし、組み合わせのしがいがさらに出てきた!)


 スキルが作り出されるシステムを把握したララクは、高揚が抑えきれずにかすかに微笑んでいることに気がついていなかった。

 彼は好奇心の塊だ。

 けれど、昔の自分では知りえることなど僅かでしかなかった。

 だが、今のララクには管理できないほどのスキルと力が備わっている。


 そんな上機嫌のララクだったが、それを見ていたダブランファミリーは若干怯えていた。


「おいあいつ、とんでもなく強くなってるじゃねぇか。おれ様たち、目ぇつけられてねぇといいが」


「仕返しされるニャ」


「こ、怖いこと言わないでよ!」


 大怪獣ともいえるシーサペントをあっさり倒してしまったので、驚きと同時に恐怖を覚えてしまっているようだ。

 彼らは、冒険者ギルドで挑発的な態度をとっていた。

 それで、恨みを買ったのではないかと心配なのだ。

 そもそも、彼らはララクを追放している。


 急に小物感が倍増したダブランファミリーたちの元へ、声をかける者が現れた。


「あの、そこで何してるんですか?」


 首をかしげながら林にやってきたのは、さっき戦闘を終えたばかりのララクだった。


『うわぁっ!!』


 またもや3人同時に同じリアクションとるダブランファミリー。一瞬、目を離した時にララクが近づいてきたのだ。


「ずっとつけてきましたよね? 話しかけられないので、そっとしておきましたけど」


「お、お前気づいてたのか!」


「チャミたちの尾行は完璧だったニャ」


「まさか、僕の鼻で!?」


 ララクはずっと彼らがいることは気がついていたが、クエスト優先のため話かけることはなかった。トッドーリは嘘をついたことで伸びたままになっている鼻が隠れてなかったのか、と勘違いしたようだ。

 しかしもっと単純で、ダブランの巨体が尾行に向いていないだけだ。

 実はララクのいた浜辺から林を見ると、ダブランの巨体が隠れきっていなかったのだ。


「それで、ボクに何か用ですか?」


「それはだなぁ、なんでお前がそんなに変わったのか気になったんだよぉ。昔のお前なら、100%シーサペントを狩ることなんてできなかったはずだ!

 教えろ、お前に何が起きた」


 クエストが終わったこともあって、ダブランはついに真相を聞き出そうとした。ララクは隠しているわけではなかったので、こんなところまで同行しなくても良かったわけだが。


「えーともしかして、数日前に紋章から光が出ませんでした?」


「光? そういやぁ、1回あったな」


「チャミも覚えてる」


「僕も。あれが関係してるのか?」


 100回の追放というありえない条件を達成して【追放エナジー】を獲得した際、そこら中から光がやってきてララクの紋章に流れ込んだ。

 その光は、元パーティーメンバーのデフェロットたちから出たものでもあった。

 つまり、あの光は獲得できるメンバーのスキルを集めていたということだ。

 なので、このダブランファミリーたちもあの時に、紋章からスキル情報を持った光が流れていったのだ。

 あの時は不思議に思うが、何も変化はなかったので、気に留めていなかったようだ。


「うん。実はあれで、皆のスキルを貰うことが出来たんだ」


 堂々と宣言する。嘘偽りない事実なのだが、3人は受け止められずにボーっとした顔をしていた。


「スキルを、貰った、だと?」


「えぇ、前に組んでいたパーティーの人たち全員の」


「それってチャミたちのも?」


「そうなりますね。さっきの【ダメージサンダー】は、チャミングさんのでもあると思います」


「ず、ずるいよ!」


 彼らの質問にララクが答えていくと、少しづつ理解していったようだ。自分のスキルを使えるようになった、と聞いてあまりいい気持ちにはならなそうだが。


「レベルはそこまで変わってないんですけど、皆さんのおかげで強くなれました。ボクをメンバーに迎え入れてくれて、ありがとうございました」


 疾風怒濤のメンバーの時と同様、彼は屈託のない笑顔で礼を言う。


 それを聞いて、ダブランファミリーたちは一瞬言葉を失った。

 彼の笑顔を見るのが初めてということもあるが、それ以上に追放に関して恨まれていないことに驚いているようだ。

 さっきまで報復されるのではないかと考えていたが、その心配はないようだ。


「ララクよぉ、おめぇ中身も少し変わったなぁ。いや、元からそういうやつだったのか」


 彼らが知っているのは、虐げられた彼の姿だけだった。ダブランファミリーは口が悪い奴が多いので、普通に話しているだけでもララクの悪口を言っていた。

「使えない」「弱い」などと、ララクがそう言われるのは日常茶飯事だった。

 いくらララクが慣れているとはいえ、そんな輪のなかで明るくいられるはずはなかった。


「チャミの【ダメージサンダー】じゃ、あんな威力出せないニャ。羨ましいニャ」


「確かに。おれ様のスキルも使えるってことだよなぁ。レベルもさして変わらんし、いつの間にか追い抜かれてたってことか」


 2人はさっきの戦いを見て、おそらく自信を失ってしまっていた。勝気なデフェロットですら焦っていたので、無理もないかもしれない。自分の力だけではなく、多くの冒険者を一瞬でララクは飛び越したのだから。


「な、なに2人とも弱気になってるんすか! 親分のほうが、絶対にお前なんかよりずっと強い! って、あ」


 トッドーリのスキル【嘘鼻】が発動した。これにより、縮みかかっていた鼻が再び倍に伸びてしまった。

 つまり、さっきの言葉は……。


「おいトッド、おれ様が弱いって言いてぇのか」


 嘘をついたことに怒り、ダブランはトッドの体に足をかけてヘッドロックをかます。これはよくあることだった。


「ちょ、い、痛いです親分! そ、それに親分だってそういってたじゃないですかっ」


「おれ様は別に、弱いなんて言ってねぇよ。戦ってみなきゃわかんねぇしよぉ」


「そうなのニャ。チャミたちももっと強くなるかもしれないニャ」


 どうやら2人は自分のことを自分で卑下するのは良くても、他人に言われると腹がたつようだ。けれど、トッドーリの嘘で、彼らが元気になったのは間違いない。


「チャ、チャミいいこと言った! そうですよ親分、僕たちにも隠れスキルがあればいいんですよ。もともとララクより強かったんですから、それを獲得すればこんなやつ、けちょんけちょんですよ!」


 それを聞いたダブランは、トッドーリの体から離れた。「はぁ、助かった」と言って、トッドーリは短く息を吐き続ける。どうやら、苦しかったようだ。


「なるほどなぁ、確かにおれ様なら隠れスキルの1つや2つ、いやもっとあるはずだ! お前らだってきっと強くなる!」


「隠れスキルか~、チャミも欲しい!」


「とりあえず、どんな隠れスキルがあるか調べましょう!」


 ララクのことを置いて、話を進めだしていく。落ち込んでは立ち直ってと、忙しい連中だ。


「あの、話はまとまりました?」


「おうよ。今に見てろララク。ダブランファミリーはもっと進化する。その時、パーティーに入れてくれ、と言ってきてももう遅いぜ」


「ララクがいなくても、ダブランファミリーは最強ニャのだ」


「ダブランファミリーが一番なのです!」


 ハイテンションになったダブランファミリーは、さっきの落ち込みが嘘のようだった。なんだかんだで、この3人はいつもの調子を取り戻していった。


「じゃあなララク」


「バイバーイ」


「さらばだ」


 そう言って彼らは急ぎ足で港町を去っていく。しかし、ダブランの足は遅く、子分のチャミに追い抜かれていった。


「あの人たち、ほんと仲いいよなぁ。羨ましい」


 ララクは彼らの和気あいあいとした姿を見ながら、1人でクエスト成功を報告しに行くのだった。

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