表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天変の魔女  作者: 貝殻アックス
第一章-転生社畜の異世界少女生活

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/26

4話-魔法のお勉強

 目が、覚める。寝起きで意識が朦朧とする中、昨日と同じように洗面台へ。

 鏡を見れば、そこには昨日の朝とほとんど変わりのない自分の姿。……違う所と言えば、泣き腫らした痕があるぐらいだ。

 部屋に戻り、軽く横になる。脳みそが中途半端に覚醒しているせいか、無駄に冷静に昨日の自分を振り返ってしまう。

 ――レアルファさんに抱き締められて、泣き喚く自分の姿を、思い出してしまう。


「~~~~ッッ!!」


 恥ずかしさのあまり、ベッドの上で(うずくま)る。こんな、こんな歳にもなって、人前で、人前であんな!!あんな姿!!

 うがあああああ!!と悶えて数分、落ち着きを取り戻し、今日やることを決める。

 いつまでも悶えてなんていられないからね。

 さて、この世界についてもっと知識を集めたいのだが……この世界の文字は読めない。が、どうやらこの世界は転生者が結構多いらしい、と。それなら今までの日本からの転生者が本を残してくれているのでは?そう思い立ち、レアルファさんに訊いてみた。


「……ニホンゴ、の、本、ですか…?……この教会は、図書室もありますので、そこを探せばもしかしたら……あるかもしれないですね。」

「ありがとうございます!探してきます!」


 ~~~~~~~~~~


 探すこと30分。ようやく発見した。どうやら言語ごとに纏められているらしく、見た感じ他の言語よりもちょっと広めにスペースを取ってるみたいだ。

 このコーナーにある本から数冊、役に立ちそうな本を取り出す。

【[初心者向け]魔法について(日本語訳)】【最新!魔人・魔女図鑑】【美味しい食材図鑑】【魔獣の調理法】【おいしいモンスター図鑑】【魔物の可食部解説】【植物図鑑】

 …………食事周り、多くないか?

 どの本もおおよそ50年程は前の物のようだが……最新!とついてるこれだけは数年前の物だな。とりあえず、【[初心者向け]魔法について(日本語訳)】だけ今日は読んでみよう。これで魔法への知見が深まれば、とれる戦法も増える。

 本を取り出し、部屋に持ち帰る。教会内であれば持ち出し自由、と確認は取っているので問題ナシ。


 ~~~~~~~~~~


 お行儀よく、部屋の小さな机に本を置き、椅子に座って、本を開く。

 地道に、理解していこう。


 ⁅【(初心者向け)魔法について(日本語訳)】


 ~はじめに~


 魔法は一歩間違えればとても危険なものだ!

 始めて使う時、練習する時は、必ず誰かに見ていてもらおう!⁆


 まあ、そりゃそうだよなぁ。俺のイメージだけど、火球飛ばしたりとか爆発したりとかあるもんなぁ。

 そう考えつつ、ページを捲る。


 ⁅まずは魔法についての基礎知識だ。魔法には七つの属性がある。火、水、雷、土、草、光、闇。この七つだ。⁆


 成程。七つ。……この並びに草がいるの、珍しいような気がするな。よくあるのだと氷とかじゃないか?ここ。


 ⁅各属性毎にその使い方は少々異なる。

 火はそのまま火を生み出す/操るもの。

 水も同じく水を生み出す/操るもの。

 雷も同じく雷を生み出す/操るもの。⁆


 ふむふむ。ここまでは大体同じだな。


 ⁅土は生み出すことは出来ないが、周辺の土や岩を操れる。

 草は植物を操れる。動かすだけじゃなく成長させたりもできる。⁆


 成程。ここからが変わるのか。……草、使いづらくないか?


 ⁅光は辺りを照らし、熱気を持つ。

 闇は辺りを暗闇に包み、冷気を持つ。⁆


 成程?ただ明るいだけ、暗いだけじゃない、と。

 ―と、そこで、隅に明らかに後から書き加えられた、筆跡の違う注釈のようなものが目に入る。


 ⁅(日本人向け)※属性、と付いてはいるが、某ゲームみたいなわかりやすい相性は基本無いと思ってもらっていいぞ!草も植物が水分豊富なら燃えにくいし、火も火勢が強ければ水を蒸発させる!この世界の物理法則は魔法、魔力がある以外俺らの世界とあんまり変わらん!⁆


 ……成程。魔法の世界も、純粋な相性ゲーじゃない、ってことか。それでも光と闇は相殺しそうだがな。

 ページを捲る。


 ⁅魔法には適性があり、人によって得意な属性は違う。魔法そのものに適性が無い場合や、逆に複数の属性に適性がある者もいる。……冒険者で複数属性を扱う魔法使いといえば、有名なのは『《雷雨》のティアナ』だろう。そして単一の属性で有名な魔法使いであれば、『《水流》のリアン』だろう。一例として出したが、正直あのレベルの技量に辿り着くのは才能ありきの至難の業だ。目指すのであれば頑張ってくれ。⁆


 ……有名な冒険者とかもいるのか……気になるな。どこかで調べたりできないのかな?


 ⁅さて……少しだけ中級者向けの話をしよう。

 魔法は、それぞれの属性に含まれる性質の一部をより際立たせて使うこともできるんだ。

 特に解り易いのは光と闇かな。

 光魔法の熱の部分を強めに出したり、逆に光だけ出してただの目くらましにしたり。

 闇魔法の冷気の部分だけを強めに出したり、逆に闇の部分だけ出してただ視界を奪うだけにしたり。

 初心者にも解り易く、かつあくまで一例として出しただけだから、他にも色々な応用はあるけれど……

 まあ、要は発想力とかの問題だ。ただ、これを実用的な領域まで使いこなすには、特訓だけでなく、残念ながら適性も必要だ。適性がない属性の魔法は、どんな凄腕でも基本的には初心者程度のことしかできない。⁆


 成程……魔法は発想力……

 ――と、ページを捲ったところで、締めの言葉と共に⁅次巻(中級編)に続く⁆と書かれていた。


「適性、か……」


 魔法の適性。そういえばギルドでの検査の時になんか言ってたきがするな。


「えっと、容秘紙は……あった。」


 部屋の棚に仕舞いっぱなしにしていた容秘紙を取り出す。開いて中を見れば、名前の欄には『稲生葵斗』の字。魔法の適性は皆無。


「……?検査の時には水特化、他も一応ある、みたいなことを言っていたような……?もしかして……」


 容秘紙を持ち、先日手伝ってもらって魔力を流した時の感覚をイメージする。自分の身体から何かが出るような感覚の後、紙が淡く光る。容秘紙に書かれた名前が変わり、各項目が書き換わっていく。

 名前も、年齢も性別も、身長も体重も、胸囲腹囲腰囲も、髪色も目の色も手足のサイズも、そして魔力と魔法属性適性も。次々と書き換わっていく項目に、呆然とする。

 そして、能力〖変身〗を残し、容秘紙の記載項目の他全てが書き換わる。


「……全部、変わった。能力以外の全部……」


 男の頃の写真なんて残しているわけもなく、これで『稲生葵斗』が居た物的証拠はこの世界から消滅した。


「……まあ、別に」


 それを嘆く理由もなければ、嘆く人もいない。別に、問題は無い。それよりも、


「魔法適性、は……」


 各属性毎に、ゲージのように表示されている。色付きが長い程、適性がある……のか?

 その見方でいいのなら……


「水がかなり高いな……他もそこそこにあるように見えるけど……どうなんだろ……」


 他属性は大体横並びの中、水のゲージだけが倍ぐらいの長さになっている。少なくとも水の魔法だけは適性が高い、ということだろう。他はわからないが。


「水……水かぁ~…………」


 どうせなら火とかの方がかっこよくてよかったなぁ、などと思いつつ、使い方を考えてみる。


「水……う~ん……?」


 いまいち思いつかない。これを戦いに活かせるのか……?


「水……水鉄砲…………ウォーターカッター的な……?」


 しかしあれはかなり水圧がないとできないはず。となると……


「相手の顔に水の球を被せて窒息……」


 ……は、ちょっと邪悪か。かといって戦闘での有効な使い方は……


「……ダメだ!思いつかない!」


 ベッドにダイブし脱力する。気付けばもう夕方……外が暗くなりつつある。

 今日は本を返したら、明日に備えて早めに寝てしまおう。明日は初めて依頼を受けに行くからな。うん。


 そうして、今日の俺は早めに眠りに就いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ