二章6.5話-穏やかな朝
――朝、窓から落ちる朝日に照らされ、ニコ・ツノイアは目覚めた。
「……寝れた…………」
前はあんなに待ってもだめだったのに。そう思いつつも、しかして久々に眠れたことへの安心感からか、全身が程よい心地よさのようなものに包まれている。今日はどうしようか。また曉熊を狩りに行ってもいいし、他の事を……
「……違うでしょ。」
余りにも穏やかな、かつての日々の朝すぎて忘れかけていた。わたしにはやるべきことがあるんだから、そのための努力をしなくちゃ。
身だしなみを整え、ギルドへ。昨日の調子なら、一度に複数匹ぶんの依頼を受けても大丈夫だろう。そう考え、部屋を出る――と、そこにはフェノスが。
「久々にちゃんと寝たのね。帰ってきてから一回も寝てなかったのに。」
「……寝たくても寝られなかっただけだし、そもそも魔女は」
「知ってるわよ。」
ニコの言葉に被せるように、フェノスは声を発する。
「必要ない、とはいってもやっぱり寝れた方がすっきりするわよね?」
「それは……まあ、そうですけど……」
「昨日まではずっと文字を読んだり出かけたり。で、昨日は多分魔法を使って戦った。そうよね?」
「……はい。」
「なら、魔力を消耗すればその回復の為に眠る――休眠状態に入ることが出来るようになる。そういうことじゃない?」
「――――」
言われてみればそうだ。昨日は戦闘で、傷の回復でも攻撃でも魔力を消耗した。それで眠れるようになった、ということは――
「魔力を使って、減ってる間は、前と同じように過ごせる……?」
「だといいわね。今日も行くの?」
「はい。今日も依頼に出ようかと。」
「そ。ま、気を付けなさいよ。あんたが死んだらまた大変なことになるかもだし。」
「……はい。」
万が一にもニコが油断することのないように、フェノスは釘を刺す。その言葉が無くとも、今後、少なくとも対モンスター線に於いて、ニコが油断することは無いが。
「朝食は食べていくの?」
「あ……えっと、大丈夫です。」
空腹感は無い。魔力で生きるこの身体は、魔力が溜まっていれば、それで生きていける。魔力は、寝ている間に十分蓄えられたらしい。
「そう。それじゃ、行ってらっしゃい。」
「はい。行ってきます。」
挨拶をし、教会を出て、ギルドへ向かって歩き出す。外の空気は少し冷えていた。
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ギルドに着く。扉を開き、中へ。かつてのように、依頼が貼り出されている場所へと向かう。
……複数狩猟の場合、危険度が上がる、らしい。曉熊の危険度は5。なら、6以上を探せばもしかしたら……
そう考え、危険度6から順に見ていく。
6……無い。7……無い。8……あった。曉熊2匹の討伐。一匹増えるだけで危険度がこんなに上がるなんて思わなかった。3匹以上になったら10なんて余裕で超えるんじゃなかろうか。
依頼書を剥がし、受付へ。手続きは何事も無く済み、無事依頼へと出立する。
今回の目的地はエラニアの森の奥にあるエラニリア山。木々に覆われた自然豊かな山で、エラニアの森と同じく、モンスターばかりが確認されている。そして、エラニアの森以上に、曉熊ドーアが多く生息する場所でもある。
一匹なら問題無く勝てることがわかった以上、二匹同時に相手することにさえならなければ心配はない。はず。
などと考えつつ、山へと向かうのだった。




