13.5話-幕間-《草原の魔人》
ニコ達が《嵐の魔女》との交戦を開始した傍ら、《嵐の魔女》に敗れた《草原の魔人》は失った魔力の補充のために静養しようと、座り直していた。そんな魔人の目の前に、1人の大柄な男が現れる。
「テメェが《草原の魔人》か?」
魔人は言葉を返さない。
「無視か?そりゃ寂しいじゃねえか。まあいい。テメェを殺せって依頼を受けてんだ。遠慮なく、やらせてもらうぜ!」
男はそう言うと、手に持った大きな斧を振り下ろす。
直後、斧が魔人に当たる前に、男はその動きを止める。男の脇腹には、毒々しい色の草が刺さっていた。
「……あ?毒か?」
それは《草原の魔人》が操り、成長させた毒草。その毒は、『取り込んだ生物の体内魔力を暴走させ、死に至らしめる毒』。当然、この世界の生物なら逃れる術はないようなもの。
「……悪ぃが、俺は『転生者』なもんでな。『能力』のお陰で毒は効かねえのさ!」
男はそう吼えると、再度斧を振り上げ、振り下ろす。魔人も剣を持ち、それを防ぐ。刃物同士が衝突する鋭い音が、辺りに響く。
――瞬間《草原の魔人》が血を吐く。ごぽ、ごぽと流れ出る血に、魔人は困惑する。しかし魔人はこの症状に覚えがある。先程の毒を冒険者に使った際、喰らった冒険者に起こった症状と同じものだった。
「効いてきたか。テメェの毒を自分で喰らう感想はどうだ?魔人。」
魔人は思考回路を全力で回転させ、何が起きたか、何をされたかを分析する。しかし、幾ら考えども、答えは出ない。
「このまま首切ったらテメェは死ぬのか?死ぬんだろうな。じゃあ最期にタネ明かしだ。俺の能力は〖毒纏〗。毒を無効化して周りに撒き散らす、迷惑な能力だ。」
《草原の魔人》は後方に跳び、体勢を整えようとする。しかし毒により、身体の動きが著しく鈍い。
「そうなったら助からねえのはテメェもよくわかってんだろ?テメェはテメェの戦い方が祟って死ぬ。じゃあな。」
膝をつき、動けなくなった魔人に向かって、男は斧を振り上げ――
「この世界にもあんのかはわからねぇが、冥途の土産に持っていけ。俺の名前は――、」
「ガラン・ドールだ。」
男の名乗りと共に《草原の魔人》の首が撥ね落とされ、ここに、一つの戦いが終結した。




