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天変の魔女  作者: 貝殻アックス
第一章-転生社畜の異世界少女生活

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11話-昇格

 ――朝、目が覚める。

 今日からは昇格試験の結果が適応されて、今までよりも危険な依頼に行けるようになる。

 でも、大丈夫。わたしはもう最初の頃よりもずっと強い。このままさくさくっと昇格していこう!

 ギルドに着いた。……?なんだかいつもと空気が違うような……

 扉を開けて中に入れば、中に居る冒険者達の視線が一斉に突き刺さる。


「おいおい見ろよ……」「あれが噂の……?」「本当にこんなガキが……?」


 そこら中から、ざわざわと困惑混じりの好奇の声が聞こえてくる。

 よくわからないままきょろきょろとしていると、受付の人から声がかかった。


「あ!ニコさんですね!ギルド支部長からお話があるそうなので、あちらの部屋に入ってください!」


 そうして示されたのは今まで入ったことのない、階段の先にある部屋。

 階段を上り二階、そこから更に上り、三階にある、支部長室。扉をコンコンと叩き、開く。


「……君がニコ・ツノイアだな?」


 そこに座っていたのは、整った髭を蓄えた、筋骨隆々なことが服越しにもわかる男性の老人。


「……はい。」

「ふ、そう強張るな。悪い話ではない。……まあ、そこに座るといい。」


 老人――支部長はそう言うと、器に香水を注ぎ、差し出してくる。


「申し遅れた。私はこの冒険者ギルド、エラン支部長のゲイン・ゴーランという者だ。」

「あ……どうも…」


 どう返していいかわからず、とりあえずぺこり、と頭を下げる。


「さて、早速本題に入ろうか。……ニコ・ツノイア。君は位階2への昇格試験で、纏狼(てんろう)を遠距離から一撃で仕留めたそうだな?」

「は、はい……」

「……君、早く上に行きたいと、そう思ったことはないか?」


 ないと言えば嘘になる。


「……あり、ます。」

「……そうか。そんな君にいい知らせがある。」

「いい、知らせ、ですか……?」

「そうだ。君は今日は位階2に上がって危険度2の依頼を受ける……そのつもりだった。そうだろう?」

「それは……はい。」

「昨日アレス……君の昇格試験を観た試験官の報告を聞いてな……『纏狼を仕留めた直後、退屈そうな目をしていた』と言っていたよ。」

「!?」


 わたし、そんな顔をしてッ――!?


「……ふ、そう焦るな。いい機会なんだ。駆け出しが初見で危なげなく纏狼を始末するなど初めて聞いた報告でな。私は、そんな君に期待して声を掛けた。……君には数名の冒険者と組んで、ある大きな依頼をこなしてきて欲しい。その依頼での、君の貢献度に応じて――試験無しで昇格させよう。」


 思わず、息をのむ。ゴクリと喉が鳴った気がした。


「依頼の内容は――【《嵐の魔女》の討伐】だ。」


 ――――《嵐の魔女》。聞いたことがある異名だ。確か、リアンさんの友達だった、って――


「受けてくれるか?」

「――受け、ます。受けさせてください。」

「……良い返事だ。」


 ゲインは、自らの前に置かれた香水を軽く煽り、言葉を続ける。


「近々、《嵐の魔女》と《草原の魔人》の戦いが始まる。これは定期的に起こるのだが……今回、君を含む4名で、この戦いで弱った《嵐の魔女》を討伐して欲しい。《草原の魔人》に関しても、同時に叩けるよう手配する。この二名が協力することはないはずだが、念の為、戦闘後、両名が一定距離まで離れた時点で攻撃を開始する。これが大まかな作戦だ。いいな?」


 こくり、と頷き、肯定の意を示す。


「こちらからは以上だが、何か質問はあるか?」


 質問……質問かぁ……


「…何もないのならそれでいいが……」

「……あ、えっ、と、その、一緒に行く人たちって先に紹介してもらえたり……」

「ああ、そうだな。……《嵐の魔女》と《草原の魔人》の接触予想日時はもう少し……7日程先だ。数日後に、共に依頼をこなす者達を顔合わせを行うように呼び出す。君もそのつもりで備えておけ。」

「ありがとうございます。」


 こうして話を終え、支部長室を出る。こうしちゃいられない!魔法を少しでも練習して、当日に備えないと!

 ギルドの受付に戻ると、声を掛けられた。


「お話は終わりましたか?こちら冒険者証、お返ししますね。」


 そう言って受付の人に冒険者証を渡される。位階はしっかりと2になっている。


「ありがとうございます!」


 冒険者証を素早く受け取り、依頼の掲示板に走って向かう。


 ――何か、魔法の練習になりそうなやつ!


 そう考えながら手に取ったのは、【《鋭牙獣(えいがじゅう)》シャンガ1匹の討伐】。

 素早く動く、纏狼よりも小柄なモンスター。これをこれから毎日!頑張るぞ!


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~


 そうして、危なげなく日課のようにシャンガを狩る日々が五日ほど続き…………


 ――《嵐の魔女》討伐作戦、決行二日前の夜――


 再び支部長室に呼び出され、向かった。


「こんばんはぁ……」


 用件は大体想像がつく。大方今度の作戦の仲間との顔合わせだろう。


「……来たか。君が最後だ。まあ座れ。」

「はい……」


 促され、円形の机に並べられた五つの椅子、その空いてる最後の一席に座る。


「さて、今回集まって貰ったのは他でもない。《嵐の魔女》討伐作戦で共に戦って貰う者達だ。……それぞれ自己紹介を頼む。」


 そう支部長が言って示したのは、わたしの真逆にいる人。順番でいくなら最後がわたしになる。


「はい!僕はアレス・ベルジュ!《陽剣(ひけん)》とも呼ばれているな!ギルドで撮影係も試験官もやってるから大体皆顔見知りだな!位階は57だ!よろしく!」


 緊張感で全然顔見れてなくて気付かなかったがアレスさんもこの作戦に参加しているらしい。心強いなぁ。


「アタシは《相克(そうこく)》のリミエラ。リミエラ・ディネス。《嵐の魔女》の討伐作戦ってんで『栄都(えいと)キリア』から遠路はるばるやって来たわ!位階は69よ!よろしくね!」


 そう名乗ったのは白金と紫紺の見事なツートンヘアーの女性。

 二色が綺麗に別れた髪色ってめずらしいなぁ……などと思いながら、ニコは迫りくる自分の番に怯える。


(われ)はバマダ・ファラガイア。冒険者位階は55。よろしく頼む。」


 立ち上がって一礼したその男性は、とても大柄でゲインさんよりもムキムキだった。

 次は、私の番……!

 ゲインさんがこちらをちら、と見た。今まで気付かなかったけど全員にこうやって合図していたんだろう。

 直前のバマダさんに倣い、立ち上がる。


「わ、わたしは、ニコ・ツノイアです!皆さんの足を引っ張らないよう、頑張ります!ぼ、冒険者位階は、2です……」


 尻すぼみに消え入りそうな声になる。アレスさんとゲインさんはわかっているからなんの反応もないものの、知らなかったであろうリミエラさんとバマダさんがすごい顔をしている。


「――――ちょ、ちょっと、今、今なんて言った?位階2って聞こえたんだけど!?」

「2です…………」


 もはやか細すぎて声になってるかすら怪しい声で呟く。


「ちょっとゲイン支部長!?アタシ聞いてないんですけど!?アンタがここに呼んだってことは一応ちゃんと実力はあるんでしょうけど大丈夫なの!?さすがにただ死にに行くだけなんて嫌なんですけど!?」

「うむ。それは吾も同意。ゲイン殿、信頼してよいのだろうな?」


 何も知らない二人が声を上げる。当然の反応だ。


「まあ、落ち着け。双方、位階2への昇格試験は覚えているか?」


 その質問に、二人はしばし思案するような仕草をし、


「……纏狼1匹の討伐でしょ。覚えてるわよ。」

「そうだ。君達は当時、どうやって突破した?」

「え~……っと……ある程度近づいて、当時はどっちも今ほど使えなかったから雷魔法で痺れさせて火魔法で仕留めたかな。」

「……吾は忍び寄り、草魔法で拘束し、槍で仕留めた。」

「そうだ。普通は一度近づくなりして、動きを止める魔法を挟んでから仕留めにかかる。彼女は、違った。」

「……?」


 2人はまだ困惑している。が、そこでゲイン支部長がすこし待てば、リミエラが何かに気付く。


「……まさか、()()()()()()()()()()()()仕留めた、って言うの……?」

「……中々鋭いな。流石は《相克》。だがあと一歩だな。……まあいい。」


「彼女――ニコ・ツノイアは、発見した位置……およそ150M(マルヴ)先から…運よく眠っていたとはいえ、気付かれることなく、魔法で仕留めた。」

「え……?」


 その言葉を聞いた瞬間、リミエラが信じられないことを聞いたと言わんばかりの困惑の声を上げた。横でバマダも呆然としている。


「これだけなら光魔法や雷魔法なら出来ないこともない。……それでも確実にそれなりの訓練が必要だが……彼女は()()()でそれをやった。」

「ちょ……ちょっと、待ちなさいよ!水魔法で!?相手が纏狼とはいえ遠距離から一撃で!?そんなの出来る冒険者なんて聞いたことないわよ!嘘とかじゃないの!?」

「嘘じゃないさ。」


 すかさず口を開いたのはアレス。


「僕がこの目で見たんだ。彼女は確実に、水魔法でそれを行った。」

「……ッ!そう。……なら、アタシはこれ以上何も言わない。」


 リミエラは「数合わせに魔力量があるだけの駆け出しを入れたんじゃないでしょうね?」という怒りをゲインにぶつけたのみで、ニコに対しては悪感情は無い。故に、証言が上がったことで大人しく引き下がった。


「全員、終わったな。各自言っておきたいこと、聞いておきたいことは無いか?」

「僕は無いかな。」

「アタシも。」

「吾も。」

「わたしもないです……」

「……では、顔合わせは終了だ。各自、二日後の作戦決行日に備え、行動を開始してくれ。」


 ゲイン支部長のその言葉で、各々が好き勝手に立ち上がり、部屋を出ていく。ニコも取り残されないよう、そそくさと部屋を出た。

 支部長室を出た直後、リミエラさんが話しかけてきた。


「ニコ、っていったわよね。アナタ、本当に水魔法で?」

「はい。」

「……そう。明日空いてる?」

「えっと……一応は……」

「そ。じゃあ一緒に纏狼討伐に行きましょ。アナタがどうやって試験を突破したのか、この目で見ておきたいの。」

「わかりました。明日はよろしくお願いします。」


 そして、この日はレアルファさんに事の経緯を説明して就寝した。レアルファさんは混乱してた。


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