わらしべママさんと仲間たち
とある夜の繁華街に、一軒のお店がありました。
藁で建てられた店は、オーナーママとホステスさんたちのお手製です。
藁のお店は隙間が多く、雨漏りもひどく、強い風が吹けば店ごと吹っ飛んでしまいます。
こんな店では落ち着けないと、お客さんが寄り付かないかと思いきや。
庇護欲をそそるタイプの可愛らしいママさんとホステスさんたちを心配して、毎日常連さんが通い詰めます。
店が吹っ飛んだ時には、客同士が対抗心を燃え上がらせ、街一番の高級ホテルを貸し切り、お店を再建するまでの出張所として確保してくれました。
ホテルの利用料はお客さん持ち、飲み食い全てお客さん持ち。
その間、ママさんはじめ可愛い系ホステスのお嬢さん方は、指名料とチップでウハウハです。
しかし、甘え続けて飽きられては元も子もありません。
頃合いを見計らい、また藁のお店を建てました。
そしてまた、同情心を煽って荒稼ぎし、お店が吹っ飛ぶと出張営業というサイクルを何度か繰り返しました。
ですが、可愛い系なので鮮度の見極めも大事です。
いいところで店を閉めたママさんは、ホステスの皆を引き連れて、海辺に木造のレストランを建てました。
もちろん、お化粧も衣装も接客もガラリと変えました。
夜のお店の常連さんだった方が来ても気付かないほどの変身です。
海辺の木造レストランは、ふんわりほのぼのとしたお店。
人口密集地からリゾート地への間にあります。
長距離ドライブで一休みし、腹ごしらえするには丁度いい場所。
お店は家族連れや、女性グループでいつも賑わっていました。
しかし、二十年に一度の台風が来た日。
お客様に親しまれた木造レストランは、見事に半壊してしまいました。
元ママさんとホステスさんたちは、意気消沈かと思いきや。
丁度頃合いと、店を畳み、今度は地方都市にほど近い、利便性の良い場所にレンガの大きな家を建てました。
今度の建物はお店ではありません。
皆でこれから老後を過ごすためのシェアハウスです。
丈夫で長持ちで安心なレンガの家。
今まで十分に働いて来た皆は、その後はゆっくりと人生を楽しんだのでした。