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重ね合う熱き想い

「「ご英断です♪さすが我が君♪」」

(ꐦ •" ຼ •)(*o'д'o)


劉巴は無論の事、潘濬も声を揃えてそう答える。劉巴は自分の情報を信じたがゆえに、相手にも信を置いたという主の言葉が心地好く胸に刺さって気分が高揚していた。


そして潘濬も、相手を信じたら自らの姿勢も決してぶれる事を許さない若君の、信念に基づく物言いに感じ入っていたのである。


『(ღ •" ຼ • ٥ꐦ)…どうも私は頭でっかち過ぎる様だ!相手を必ず疑って懸かる嫌いがある。まぁ…それが私なのだし、お役目の一端でもあるから仕方の無い事だが、若君は若君の信念がお有りなのだ…』


『…この場合は主が正しいのかも知れない。私は若君の良さも未熟さも理解している。劉巴の奴もそうかも知れないな!だから我らは思い切りのある若君の良さを尊重しつつも、まだまだ足りぬ未熟な点を育てて行く助言を今後はますます取らねばならぬ…』


彼はそう想い立ち、態度を鮮明にした。


「(ꐦ* •" ຼ •)੭ ੈ"人は直接会ってみなければ、その人と形は判らぬものだ!"…若君の口癖でしたな!大変失礼致しました♪」


「仰有る通り…⁽⁽(o'д'o*)私も(いささ)か慎重に過ぎましたかな?」


潘濬に続き、劉巴も神妙な態度である。


「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈ否、お前達の言葉にはいつも真険に耳を傾けている。僕は残念ながら、遅咲きの身の上だ。まだまだ到らない所もあるだろうから、これからも宜しく頼む!」


北斗ちゃんはそう答えると、相手を待たせていると知って、喬児に向き直ると陳謝した。


「⁽⁽( • ᗜ • ๑)お待たせしました♡内輪(うちわ)の話しです。お忘れ下さい♪」


喬児の前でペコペコ頭を下げるこの誠実そうな若者が、蜀の太子・劉禅君であるという。見たところ、まだ十代半ばくらいにしか見えない。にも(かか)わらずその態度も言葉そのものにも確固たる信念があった。


しかも部下想いで、その言葉一つ一つでさえも(ないがし)ろにせずに、耳を傾けられる。ここに来る道中、彼女はこの太子が蜀の民、魏の民に拘わらず、荊州一円の民を救出する活動をしたのだと民の噂話を聞いた。


実際に救われたという者もたくさん居て、とても嬉しそうに、そして誇らしげに話してくれた。それは誠実さだけに止まらない、行動力、そして決断力をも兼ね備えている事を意味する。まさに王たる資質を(うかが)わせる人物なのだった。


『それにこの二人…✿( ◍ ❛ ᗜ ❛ ◍)この人達も只者では無いわ!にも拘わらず、この二人がこの太子に心服している。個性が強過ぎる人物は、喩え優秀で在ろうとも避けられるこの御時世に、この若さで二人を完全に従えている。否…』


『…それは適当な言葉では無いわね?この人は部下というよりは、この二人を"友"と見ている節がある。その辺りがまだ青さという事になるのかな?…』


『…本人が言った"遅咲き"という意味が今ひとつ判らないけど、何かこの子見てると子供(ガキ)の頃の秦縁を彷彿(ほうふつ)とさせるわね!あいつと気が合いそうで怖いわね?あれ??ひょっとするとひょっとしちゃうのかしら…』


喬児はそう想い、クスクスっと微笑んだ。その愛らしい表情に三人とも顔を真っ赤にしている。


北斗ちゃんは勿論の事、潘濬も劉巴も独り身だから、美しい娘が笑む(さま)は十分にドキリとさせるものがあった。


「✿(◍ ❛ ᗜ ❛ ◍)これは私こそ失礼を!でも私をご覧になって信用して頂けるとは嬉く想います。太子様のお眼鏡に叶った上は、私もその信用を裏切らぬ様に相努める所存ですわ♪…」


「…我が采配もきっと貴方にお会いすれば気に入るのではないかしら?あら、嫌だ!私ったら失礼な物言いを…御免なさいね!」


喬児はそう述べると拝礼した。


「否!お気になさらず…(❛ᴗ❛ و)そうですか、采配の方は今、ご不在なのですね?そんな中、お邪魔しても良いのですか?」


「(◍ ❛ ᗜ ❛ ◍)✿ あ、えぇ勿論!私達は商人ですもの。何も隠す物など有りませんわ♪それに喩え在ったとしても、全てこれ商品ですもの!そうでしょう?」


彼女はぶっちゃけしらみ潰しに調べても何も出ない事を堂々と嗅わせている。それだけの自信があるのだと言わんばかりである。


潘濬は、それを受けて何か言いたげな素振りを見せたが、珍しくその機先を制した北斗ちゃんは、喬児に向かって快活に笑った。


「アッハッハ…ꉂꉂ(• ▽ •๑ )止しましょうよ♪探り合い等、詮無き事です。それに僕は、否…僕らは調査が目的ではありません。極々単純な好奇心ゆえの事です…」


「…貴方は知らないでしょうが、僕は(パオ)を見たのは初めてなんです。では、何で知っているのかと言えば、僕の配下に傅士仁という奴がいます…」


「…とても多芸な奴でしてね、そいつは幽州出身で半分匈奴の血が流れているって言うんですよ!だから騎馬民族の化粧を施しているし、馬も弓も(ゲキ)も得意です♪…」


「…そしてアムール川っていう川辺で魚釣りしたり、外海に船で乗り出して(クジラ)(もり)で突いたりしたそうなのです…」


「…彼がいなければ、今回の民の救出も難しかったでしょう?あっ、僕…この前の災害で民の命をたくさん救ったんです♪」


「ウフフ…✿(◍˃ᗜ˂◍)それならここに来るまでに、沢山の民の方からお聞きしましたから存じております♪まだお若いのに、とても成熟された殿方です事!…」


「…これからが益々愉しみですわね♪若様は今、色々な事に興味を惹かれるお年頃!私も余計な事を申しました…」


「…信を置いた者には相応に報いよ…でしたかしら?私もこれからはそう致しますわ♪では皆さん、こちらへどうぞ!ご案内させて頂きます♪」


喬児はとても嬉しそうに見えた。久々に血の通った言葉を耳にした気がして、彼女は高揚感に満たされていたのである。


片やの北斗ちゃんはというと、顔を真っ赤にして返事すら出来ずにいた。少しおませなのは自覚しているけれど、大人の美しい女性に褒められた事で、とても照れてしまったのだ。


"成熟された殿方"、"若様"などと彼にはまだまだ早い形容ではあるが、彼の中に存在する女性としての美しさの基準は、孫婦人なのである。


彼はあの美しい母様(ははさま)に、子供心に恋慕の情を抱いていた。彼が唯一(ゆいつ)(なつ)き、親愛の心を持てた母親でもある。


彼の名誉を守る為に、敢えて説くとするならば、彼は生みの親の甘夫人の顔も、彼の命を救ってくれた育ての親の糜婦人の顔も、当時幼な過ぎたからという極めて明快な事情により、良く覚えていなかった。


それがゆえに、彼は結局のところ、物心つく頃に彼に愛情を注いでくれた孫婦人の顔しか想い出せなかったのだ。


逆に言えば、孫婦人は劉備に嫁している間に、ちゃんと母親の役割を担っていたのだと言える。


それが証拠に、彼に"海の男に成れ!"と教えてくれたのも彼女であり、そして愛情が無ければ、彼を江東にわざわざ連れて帰ろうともしなかったであろう。


おそらく彼女は、彼を人質にする魂胆など端から無く、単に母性愛に目覚めた結果だったのでは無かろうか?人質にするため等という理由は、所詮は男の眼を通して語られる謀り事である。


現実とは案外と単純明快なものである。彼女だって絶えず彼を伴い、毎日面倒を観ていたのだから少なくともそこに情が生まれて、彼を手離し難く為ったとしても不思議は無かろう。そう信じたいところである。


彼の記憶が確かならば、この喬児という女性はどことなく彼の母・孫婦人と共通点がある様な気がしていた。それが彼の記憶の中の母様(ははさま)の言葉と交差(リンク)した事で、その面影を頭の中で想い描いただけなのかも知れないが、その時の彼には少なくともそう想えたのである。


『✿(◍˃ᗜ˂◍)ノ⁾⁾フフフッ、男の子はね…船に乗って海原に漕ぎ出して、初めて一人前の殿方なのです♡お前も必ず海の男に成れるわよ♡✿』


『(◍˃。˂◍)ノ⁾⁾まだお若いのにとても成熟された殿方です事!これからが益々愉しみですわね♪』


それが"殿方"という特別な言い回しにあるのか、はたまた口調が似ていたせいなのかは判らなかった。けれども彼はかつて彼を大事にしてくれた母親を思い出していた事は確かな様である。


『(´⸝⸝• •⸝⸝)⁾⁾ …母様♡』


彼が顔を真っ赤にしながらいつまで経っても動かないので、劉巴が気をきかせて若君に声を掛けた。


「ꉂꉂ(o'д'٥o)…若君、先方様がお待ちです!早く参りましょう♪」


それでも動かない太子の様子に不審を抱いた潘濬は、いつもの様に大声を出そうとして今度は劉巴に制された。何やら目線で合図をしている。彼は劉巴に水を向けられた先を想わず眺める。


すると彼らの前をスッと横切った影が若君の手を優しく取って先に促す。喬児であった。潘濬は劉巴の顔を振り返り、軽く溜め息を洩らす。劉巴はそれに応える様に肩を(すく)める。


そして彼らは少し間を置くと、先に歩き出した二人の後にのんびりと続いた。彼らはその微笑ましい光景を優しい瞳で眺めながら、互いに目線を合わせて苦笑いしていた。


彼女はこのウブな若者のその手を導くように(パオ)の方角へと(いざな)ってくれたのである。それはまるであの優しかった孫婦人の様であった。


彼はひとときの安らぎを感じながら、彼女の説明を終始にこやかに堪能していた。




「( ๑•▽•)۶”今日は有り難う御座いました♡お忙しい中を縫ってお付き合い下さり、感謝に堪えません。お陰様で(パオ)での暮らしや商人の方々の営みの一端に触れる事が出来た気がします♪」


北斗ちゃんは厚く礼を述べた。彼の瞳は爛々と輝きを増して、元気ないつもの彼に戻っていた。あの熱き想い出は既に胸の中に大切に仕舞い込んでいた。


「いいえ…✿(◍˃ᗜ˂◍)私も愉しかったですわ♪私ども商人の事に興味を持って貰えて嬉しゅう御座いました。また機会が在りましたら、是非お越し下さい。いつでも歓迎致しますから…」


喬児は優しさ溢れる笑顔でそう応えた。そして改めてこの若者を見つめた。采配があんなに嬉しそうに待ちわびている気持ちが判った気がしたのである。


「⁽⁽(•• ๑)ではこれでお(いとま)します♪お邪魔しました。もし何か在ればいつでも…」


北斗ちゃんがそう言い掛けると、喬児はニッコリと微笑んで合いの手を入れた。


「フフフッ…✿(◍˃ᗜ˂◍)御相談致しますわ♡お気持ちに感謝します♪まぁでもうちの采配もなかなかの伊達男ですから、何とか成りましょう!」


「そうですか…( ๑•▽•)⁾⁾ ぜひ一度お会いしたいものです。采配殿にも宜しくお伝え下さい♪」


「えぇ…✿( ◍˃ᗜ˂◍)⁾⁾ もちろんですわ♪道中お気をつけて♡」


「((ღ(◕ 0 ◕*)有り難う御座いました♪」


北斗ちゃんが頭を下げると、二人も揃って頭を下げる。この素敵な主従の間柄は観ていてとても気持ちが良かった。


喬児はほのぼのとした気分に包まれて、その口許からは自然と笑みが(こぼ)れた。去り行く彼らを見送りながら、彼女はポロリと(つぶや)く。


『ウフフッ…✿(ღ◍˃ᗜ˂◍)⁾⁾ 心配しないでもアイツから逢いに行くでしょう?!』


あの二人が出会った時に、どんな化学反応を起こすのか…彼女はそう考えると、またひとつ先の愉しみが出来たと想わず笑みを漏らした。




「ꉂꉂ(o'д'*o)なかなか良い体験が出来ましたな♪」


劉巴の問い掛けに二人も頷く。


「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈそうだね♪(パオ)というのは優れ物だな♡簡単に組み立てられるし、生活感が感じられるね♪僕はとても気に入ったなぁ♡」


北斗ちゃんは悦に入っている。


「(ღ •" ຼ • ٥ꐦ)それにしても急に顔を赤らめてどうされたのです?」


潘濬は生真面目にそう尋ねた。


劉巴は途端に慌てる素振りを見せる。そして横目で潘濬を見つめながら目配せした。


『Σ(o'д'o٥)…ド阿呆(あほう)()れるな(さわ)るな!スルーしろよ…』


『(ღꐦ•"⌓•)"…ややっ!そうなの?それはすまん…』


潘濬は生真面目に生きて来たせいか、感情の機微(きび)に関しては(いささ)(うと)い。そんなだから女性が絡むとより理解力に乏しかった。


どうやらこの分野では劉巴に一日(いちじつ)(ちょう)がある様だ。その劉巴も特に詳しい事情が判っている訳ではない。


しかしながら、太子が母親の愛に恵まれなかった過去の事は人づてに聞いていたので、優しい喬児に出会った太子が母親の事を思い出して、しばし呆けていたとしても無理からぬ事だろうと察していたのである。


「あ…(๑•̀ - •́)و✧大丈夫だよ♪でも劉巴有り難うね♪察してくれて!それに潘濬…君も心配してくれてたんだね!有り難う…」


北斗ちゃんは照れ隠しも手伝ってそれ以上は語らなかった。彼も先程の失態を思い出して恥ずかしかったに違いないのだ。


しばらく三人は無言のまま馬を走らせる。林道を伝う爽やかな風が心地好く彼らの気持ちを和らげてくれた。

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