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異形の者達

「(´°ᗜ°)✧ しかし潘濬(はんしゅん)、子龍が南郡城を引き受けてくれると良く判ったな?」


北斗ちゃんは改めて潘濬の才覚に感心しきりである。彼は今回の道行きの真の目的を北斗ちゃんが吐露した時に"一石二鳥"と太鼓判を与えた。


それまでに積み重ねていた情報を組み合わせて判断材料にしたのだろう。瞬時の判断は情報構築在っての事であり、劉巴は無論の事、潘濬もその辺りは常に準備を怠らない。


特に彼は元々法家であるから、理論武装はお手の物であった。それに"相談役"たる者、いつ何時、どんな問い掛けにも答えられる準備は必要なのである。


「(• ຼ"•ꐦ)趙将軍の人と(なり)、そしてその立場を考えた時に、あの御方なら引き受けるであろう事が判りました。これも一重(ひとえ)劉巴(りゅうは)殿のお陰です♪彼の人を見る目は的確と言えます!」


潘濬は、事前に情報供与を受けていた事を包み隠さず述べる事で劉巴を称えた。彼は特に奥ゆかしい訳では無い。評価されるべきは、正当に評価されるべきだと考えたに過ぎない。


彼は厳格な法の精神を尊ぶ。ゆえに自分だけが評価されるのは可笑しいと申し出たに過ぎなかったのである。


北斗ちゃんも頷く。


「ꉂꉂ(°ᗜ°*)劉巴もさっそく役立ってくれて嬉しい!そう言えば君は趙広とも顔見知りの様だったね?」


潘濬に続き太子様にも話しを振られた劉巴は、さすがに控えている訳にもいかなくなった。


「否…(o'д'o٥)若君、顔見知りという訳では!趙広殿が私をご存知だっただけの事です。私は放浪の人生でしたから人との結び付きはけして強くありません。けれども色々な人達と接する機会が多かった由縁か、その人と(なり)を観察する力が付きました…」


「…それが今回たまたま役立ったに過ぎませぬ。それに潘濬殿は趙雲様という御仁を知るために、わざわざ仕掛けを検分に行かれました。これは彼が私を信用しなかった訳では無く、むしろ話しを聞いて興味を持たれた結果だと存じます…」


「…人の話しを鵜呑みにせず、自らの行動により実施検分が出来る。さすればその中味はもはや人からの受け売りでは無くなり、自身の言葉と成りましょう。そこには確固足る自信が宿りますゆえ、説得力も生まれます…」


「…そして何よりも裏付けの取れた事実が正確に掴み取れるのです。彼は私の情報を最大限に活かしてくれました。それは私にとっては最高の賛辞なのです♪」


劉巴はそこまで述べるに止めた。彼は生真面目で切れ者のこの潘濬という男に、とても好感を抱いていた。


何もわざわざ言葉にしてくれなくても、彼は満足だったのである。だからその気持ちを言葉に乗せた。けれども彼だってひとりの人間である。


敢えて自分の名前を添えてくれた潘濬の言葉は、素直に嬉しかったに違いない。そしてその結果として自分を高く買ってくれた若君の役に立ったのならば本望だった事であろう。


「フフフッ…(ღ • ▽ • ๑ )二人の合作という訳だね♪それにしても潘濬の見込みの立て方と判断力の冴えは相変わらず素晴らしいものだが、実施の前提としての事実確認も特筆すべき点だな!構築の基準の元となる根拠がしっかりとしていれば言うに及ばずだ♪…」


「…そして劉巴の観察眼も比類無きものだね♪さらにはその分析力も相手の心理を読み取る力が背景にあるのだろう。だからこそ的確に理論を構築する事が出来るのだろうね?僕の思った通りやはり二人は良いコンビだ♡」


北斗ちゃんは込み上げる嬉しさをそう表した。その微笑ましい光景に想わず自然と口許から笑みが漏れる。


二人はその言葉に、互いの顔を見つめ合い苦笑い(しき)りである。彼らも褒められるのには余り慣れていないらしく、照れ隠しであったのだろう。


「(ღo'д'o٥)まぁいずれにしても良かったですな♪趙雲殿が南郡城に入れば、備えとしては申し分無い。そもそもこの荊州が安泰なのは、関羽総督の御名(ぎょめい)も大きいのです…」


「…そこに趙将軍が加ったと知れば、より魏・呉二国も手出し出来ますまい!若君の計画(プラン)である富国強兵には、時間はあればある程、宜しいのですから、これはしてやったりと言うべきでしょう…」


「…それに担い手を求めていた南郡城のポストも埋まり、正に一石二鳥の策です。見事ですな♪」


「やだなぁ…ꉂꉂ(°ᗜ°٥)劉巴♪君も隅に置けないね!そんなに褒め上手だとは想わなかったな!まぁでも君の言う通りだ。時間はあればある程、今の僕らには有利に働くからね♪確かに絶妙と言うべきかもね♡」


「✧(• ຼ"•ꐦ)それだけではありませんぞ!若君の才知は曹仁殿や満寵殿、それに司馬懿殿を通じて魏全体に知れ渡る事でしょう。勿論、あの魏王にも伝りましょう…」


「…さすれば、呉の孫権にも早晩認知されます。強固な布陣が整ったと知れば、そう易々と彼らもちょっかいを掛けられなくなる事でしょうからね♪…」


「…但し、これは諸刃の剣でもあります。最前線というべきこの荊州に太子様が居るのですから、一か八かの賭事(ギャンブル)に出る者も居りましょう。くれぐれも御身には気をつけるべきかと存じます!」


潘濬の言葉には、褒めと戒めが表裏一体となっていて言葉に重みを与える。北斗ちゃんも想わずゴクリと生唾を飲み込む。


そして「判っている…(⑉•̀ᴗ •́ ⑉)せいぜい気をつけるとしよう!」と言った。この問題点は丞相の文にも記されていた事だ。


その場に居た関羽と馬良からも釘を指されている。いずれ太子様付の護衛官を改めて厳選しようという話しにもなっていた。


まぁ仮にも太子であるから、そもそも仮染めの姿か身バレしようが関係無く、用心はせねば為らない。いみじくも潘濬が述べた言葉が重みを増す。


『(ꐦ* •" ຼ •)੭ ੈ率先垂範(そっせんすいはん)も程々に!これからは周りの者を育て、適材適所で腕を奮わせる事が肝要…』


とどのつまりは、"運用采配を覚えよ"という事に尽きる。前面に出ずに後方で控えていてくれれば、皆も若君を守り易くなる。


この言葉は何も護衛強化を基にしたものでは無かったが、ここに来てより一層、重みが増す事になったのである。当初は彼の股肱(ここう)の臣である、費観・費偉・弎坐が交代で付き添いを行って来た。


それも時の流れと共に替わり、彼ら三人はすでに自らの役割を与えられてその道で新たに挑んでいる。その後、付き人となった傳士仁も今や海軍総督である。


今も河川整備の名目で潘濬と劉巴が付いているに過ぎない。彼らも自分達の役割を今後担って行くためには、若君に始終引っ付いている訳にもいかなかった。


特に劉巴はまもなく許靖と合流して、交州に向かう事になるのだ。潘濬はすでに北斗ちゃんにとっては次代の臥龍と言っても過言ではない存在であるが、剣の腕が立つ訳では無い。


腕に覚えのある護衛官が必要だったのである。当面は若君が保有している近衛隊三千が彼を守る事になるが、彼らを到る所にぞろぞろと連れて歩く訳にも如何(いか)ず、今回の道中もこの二人が付き添う流れとなったのである。




彼らが森を出た後に林道を駆け抜けていると、前方の少し拓けた所に、いつの間にか見慣れない天幕が到る所に建っている。そして人が行き交い、そこにはちょっとした(にぎ)わいがあった。


来る時には静かな小高い丘に過ぎなかった筈である。先頭を走っていた北斗ちゃんは俄然興味を抱く事になった。その証拠に彼の瞳が爛々と輝く。


「あれ?(*`•o•´)੭ ੈアレ何だろう?ちと行ってみよう♪」


北斗ちゃんは二人に目配せすると、その足で速度を上げた。潘濬は想わず苦虫を噛み潰す。


「全くもう…(° ຼ"° ꐦ)今、気をつけろと言ったばかりなのに!」


彼は呆れた様にこれを追う。劉巴も呆気に取られている場合じゃないと後に続いた。


小高い丘の賑わいのもとはあの(パオ)である。江東の復興の端初に漕ぎ着けた彼らは、その言葉通りに荊州に到着していたのであった。


喬児(きょうじ)が先頭に立って、拠点造りに精を出している。部下にあれやこれやと次々に、そして的確に指示を出して行く。


彼女は手際が良い。そして彼女の部下達もその動きに無駄が一切無かった。その様子はさながら流麗で在り、見ていてとても気持ちの良いものであったのだ。


それに皆、一様にその顔が活き活きとしていて、然も愉しそうに汗を流す。


北斗ちゃんは先駆けて到着すると、彼らを邪魔しない様に気をつけながら、それはもう感心そうな顔でしばし彼らの行動を眺めていた。


潘濬も劉巴も彼らを刺激しない様に途中、下馬すると用心しながら近づいて来た。


「(ꐦ* •" ຼ •)੭ ੈ若!困りますぞ、急に先に行かれては…先程、あれほど言ったではありませんか?」


潘濬は呆れた様子を隠さない。それを劉巴がやんわりと制した。


「まぁまぁ…ღ(o'д'o٥ღ)どうやら危険は無さそうです♪あれは言わゆる(パオ)という奴ですな!北方の騎馬民族が好んで使っている移動式の家屋です…」


「…そしてあの青い服装は"青柳商団"の印ですな♪ここ荊州にあの商団の市が立つとは嬉しい限り…ちと行ってみましょう!」


劉巴は「さあ♡」と二人を手招きすると、先頭に立って歩き出す。


「へぇ~♪✧୧(๑•̀⌄ •́ ๑ ૭)あれが(パオ)って奴なんだな?初めて見たけど興味深い。この際じっくりと見れると嬉しいんだけど?」


北斗ちゃんも興味津々である。


「(ღ •" ຼ • ٥ꐦ)若は(パオ)を知ってるので?私は存在そのものを知りませなんだ…」


潘濬は異文化に遭遇した驚きを隠さない。


「あぁ…(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈ傳士仁としばらく付き合っていたからさ!彼は半分匈奴の血が流れている。(パオ)は彼の昔話から良く聞かされていた…」


「…ちょっと(あこが)れを抱いた程なんだよ!それをこんな所でお目に掛かるとは?この偶然に感謝しないといけないな…」


「あぁ…⁽⁽(o'д'o )それなら聞いてみましょう。青柳商団は気さくな連中と聞いております。きっと案内して下さる事でしょう♪」


劉巴は全くと言って良い程、警戒していない。彼は伊達に放浪して来た訳でも無く、色々な知識に造形が深かった。只、一言だけこう釘を指した。


「✧(o'д'o*)彼らは愛嬌が有り、気さくですが、自由を尊ぶ民達です。接し方は温和に願います!高圧的な態度は勿論、敵対行動は一切取らない様に♪」


劉巴は情報の重みを重要視している。


この場合、彼らの素性が判っているから接近出来るが、知らない者には異形に写る事だろう。


森林地帯に突然見た事も無い天幕が立ち並び、青色に統一した服装の連中が右往左往する様子は、初見の者には奇妙に写るに違いないのだ。




彼はかつて魏の軍船が彼らに挑み、惨々な目に合った事を聞いて知っていた。その情報源は兄と敬う許靖であり、また交州太守である士燮(ししょう)からも聞いていた。


許靖は蜀に流れた後も魏の華歆や王朗とは良好な仲であり、文通も欠かさない。『気をつけよ!』そう言った意味合いで、日々の便(よすが)のやり取りの中で得た情報だったのである。


そして士燮は海洋交易を通じて、その実力を垣間見ている事から、一目置いていたのである。


『(٥ಠдಠ)儂は青柳商団と事を構える気は無い。(おか)の上でも彼らは恐ろしいが、海の上では相手にするには(いささ)か力が違い過ぎる…』


『…儂は常日頃より彼らを尊び、交易の先駆者として礼節で報いておる。彼らが接近して来たら、先に通してやる…』


『…それを貫いておるから良好な関係が保てるのだ。彼らには海賊から一度ならず救われておる。儂の礼節に彼らも応えてくれているのだ…』


『…あの強大な江東の孫権さえ、彼らに一目置く。ゆめゆめ事を構えては成らぬ。それが御身のためぞ!』


士燮の言葉には迫力があった。実検分の為せる技なのだろう。見ているからこそ、その言葉には信憑性もあるのだ。




「判った!ღ(°ᗜ°٥ღ)(はな)から事を構える気は毛頭無いが、気をつけると約束しょう♪」


「(ꐦ* •" ຼ •)⁾⁾ 私もそう致します♪」


北斗ちゃんは無論の事、潘濬も即座にそう応えた。劉巴の情報の重みを二人は肌で感じていたので、ここでもその信頼は揺らぐ事は無かったのである。


「もし? ꉂꉂ(o'д'o*)貴方が青柳商団の采配殿ですかな?私は劉巴と申し、この荊州は江陵城の主にお仕えする者です。もし宜しければ、(パオ)を拝見させていただきたいのだが、案内頂けようか?」


喬児は少し前から、この三人の存在には気がついていた。そして、この先の森に強固な要塞が築かれている事も承知していた。


彼らの索敵能力は群を抜いており、生半可な軍隊よりも依り優秀である。商人である以上、自分達の身は自分達で守らねばならないのだから、ある意味切実であった為である。


彼女は長年の経験から危険は無いと判断した。だからこそ、わざと近くに拠点を立てたのである。ここなら江陵城にも比較的近く、行き来しやすい。


そしていざとなれば、軍隊の野営地の側に居る方が安全であり、ひょっとしたら取引も可能だからであった。


「ꉂꉂ(◍ ❛ ᗜ ❛ ◍ )✿ 私はこの商団の副采配の喬児(きょうじ)と申します。こちらこそ宜しく♪えぇ…そうですわね♡それでしたらお安い御用ですわ♪そちらのお若い方はとても熱心に観ておられましたね?劉巴様、ご紹介いただけますかしら?」


喬児はすぐに反応を示した。しかも女性らしい柔らかな物腰である。


劉巴は咄嗟に主を見つめた。


「(๑´❛ ᗜ ❛)੭ ੈあぁ…申し遅れてすみません。僕はこの荊州を預かる蜀の太子・劉禅と申します。まぁ…荊州といっても、その三分の一ですがね♪ここいら一帯なら安全を保障出来ます!…」


「…今なら我が国でも指折りと言って良い、趙雲子龍があの森に居ますからね♪何かお困りの事があれば、いつでも声を掛けて下さい。悪い用には決して致しませんよ♪」


北斗ちゃんは実に流暢(りゅうちょう)に、ペラペラと素性を明かしてしまった。


『∑(o'д'o٥)…∑(º ロ" ºꐦ)…』


これにはさすがの二人も驚いた表情を見せる。特に潘濬はぶったまげた様で、日頃見せた事も無い奇妙な顔になった。簡単に言えば、驚きと怒りと蔑みが入り交じったといった具合だろうか。


劉巴は、説明に及ぶには慎重を期す必要があると考えて、咄嗟に主を見つめたのであるが、まるで話しを振られたと錯誤したのではないかと想う程に、本当の事をすらすらと述べた若君に対して、呆気らかんとした顔で応えた。


つまりは唖然として、絶句してしまっていたのである。


すると、その冷ややかな空気にまるで反発でもする様に、北斗ちゃんは言葉を継いだのである。


「✧ ⁽⁽(•̀ •́๑)(๑•̀ •́)⁾⁾ و✧ 何が可笑しい?青柳商団は信用を置くべき相手なのだろう。劉巴、そうお前が言ったのだぞ♪お前たちも知っての通り、僕は信頼出来る相手には信頼で報いると申した筈だ!…」


「…それをよもや忘れた訳では在るまい。だから申した…否、それは正確では無いな。彼女の人と形は僕なりに見極めたと言った方が良いかな?それにだ、もはや僕はここに劉禅本人として存在している…」


「…そして接触を試みたのもこちらの方だ。(๑•̀ㅂ•́)و✧だからこれから見聞きする上で、僕が口にする言葉や態度には責任を持ちたい。まだまだ青いと言われようが、これが僕なのだ♪」


北斗ちゃんは強い決意と共にそう告げるのだった。

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