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弛まぬ心

彼らは遂に騎乗しながらの行軍に入り、先行している費観将軍の部隊に肉薄しつつ在った。


「( ̄^ ̄)ふむ♪これならギり荊州に入る前に合流出来そうだな!配下を先行させて連絡を取り、州に入る前に合流致しましょう♪私も趙広と合流しなければ…」


「趙雲将軍!本当にお力添え頂き有り難う御座います。この数ヶ月の取り組みのお陰で身体が見違える様に軽くなり、動くように成りました!これも一重(ひとえ)に根気よく将軍が付き合って下された賜物(~▽~@)♪感謝しております!」


「( ̄^ ̄)いやいや…貴方は御自身で努力されたのです♪私はその背中を少しばかり押したに過ぎません!あなたはとても育て甲斐のある生徒でしたよ!お前もそう想うだろう?費禕(ひい)よ♪」


「そうですな…将軍の仰有る通りかと!私もこれほど教え甲斐のある弟子は初めてかと!」


「まぁ…そういう事ですな!ですから太子様は胸を張って宜しい!」


「こうか?」


劉禅は文字通り胸を張った。そこには明らかに鍛えられた胸が突き出ていた。


「(~▽~@)お~♪♪自分の胸が判るぅ~♪将軍確かに胸があります!」


「( ̄^ ̄;)否、そういう意味ではなかったんだが…」


「(;^ O^)…北斗ちゃ~ん」


彼はここの所、毎日の様に身体を確認しては感動しているので、やむを得ない。それだけの成果があったという事で在ろう。


『( ̄^ ̄)少しばかり変わった感性の御方だが、素直で飲み込みも早い…当初は直ぐにへばるかと思ったが、目的意識を与えてやると伸びるタイプだな!私も久し振りに初心に戻れた気がした。自分のためにも取り組んで良かったかも知れぬ…』


趙雲も素直にそう感じていた。


「北斗ちゃん、城を囲む場合の兵力の数は?」


「せんせ、城方の10倍でしょう?」


「はい!正解です♪でもそれはあくまで常道というだけで、何か策が在ればその限りに非ずだからね、覚えておく様に!」


「(`◇´)ゞ了解でっす♪」


「次に…」


「それは…」


二人は馬上の道行きの中で問答を繰り広げている。この光景もしばらく前から板に着いて来た。それを横目で眺めながら、趙雲は微笑ましく聞いていた。




「「ええ~!!」」


伝令を受けて出向えた費観(ひかん)弎坐(さんざ)は驚きの声を挙げた。まず太子様が馬に騎乗している事に驚き、その身体の変化に驚き、その声すら変わってしまっている事にも驚いてしまった。


しかも馬に完全に慣れて、乗りこなしてしまっている。馬から颯爽(さっそう)と降り立った彼は、そのまま地を蹴り、跳ねて、驚く二人の前に着地した。身体が柔らかいせいか、ピョンピョンと跳躍にも切れがある。


「は~い(~▽~@)♪♪♪10点満点♪」


彼はその喜びを鮮やかな動作で表したのである。


「それにしても見違えましたな…努力されたのですな!」と費観。


「北斗ちゃん、別人みたい…(゜_゜;)!」


弎坐は驚きの余り、それ以上言葉が出てこない。完全に目が点になってしまっていた。


「( -_・)趙雲将軍のご指導の賜物さ!お前もやってみるか?弎坐!」


「(-ω-;)否、滅相も無い…」


彼にもその過酷な努力の後が判るのだろう、慌てるように拒否している。北斗ちゃんは久し振りに皆が揃って嬉しいのか、そんな弎坐をからかう様にじゃれていた。


「御苦労様!」


愉しそうな二人を横目で見ながら、趙雲は費観にも労いの言葉を掛けた。


「否、私は自分の職務を全うしたに過ぎません。将軍こそ結果でお示しに成られた。なかなか出来る事では在りませぬ。この費観、感服致しました!」


「いやなに…( ̄^ ̄)全ては太子様の信念がそこに在ったから…だろうな!私はそのお手伝いをしたに過ぎん♪」


趙雲は心底そう感じていた。それは…信ずる心、迷わぬ心、そして抗う心であった。目的意識とは…将来、自分がこう在りたいと想う、心の写し鏡だ。この先、太子様がどう在りたいのかは、趙雲にさえ判らない。


けれども、その鏡を見た者には、薄っすらとその先の未来が見えていて、手を延ばせば届きそうなその景色を目指して、歩みを止めずに只ひたすらに進んで行く。それこそが努力するという事なのだろうと趙雲は想う。


彼は若かりし頃、将来を夢見て突き進んで来た自分自身の事と重ね合わせて、太子様の熱い気持ちを感じ取っていたのかも知れない。


感慨深けな趙雲の横顔を眺めていた費観は、自分の信念に突き動かされて、個々の信ずる道を歩んでいるこの二人の男の矜持に触れて、彼自身の心も熱く燃えていた。


「信念か…言葉に出せばたった二文字、けれどもその境地に辿り着くまでの何と困難な事よ…」


彼は我が身を振り返り、その心の内に、果たして信念が存在するのか疑問を感じていた。


「まあ、良い!先は長いのだ。ゆっくりと焦らず、考えるとしよう…」


彼はせっかくのこの機会を、大事にしようと心に決めていた。


それは費禕(ひい)も同様である。彼は実際この二人と寝食を共にし、その苛烈なまでの目的意識に度胆を抜かれていた。正直、彼は太子様の事を当初は完全に舐め切っていた。ところがどうだ?このメキメキとした成長具合、そしてあんなに苦しい表情をしながらも、諦めずに趙雲将軍についていく強い気持ち。


彼は、自分の目の前で繰り広げられてきた事実でさえも、未だ受け入れかねている自分に気づいていた。費禕には将来の夢がある。それは、この国の根幹を担う、政治を主導する事である。


けれども、彼の目の前で燦然(さんぜん)と輝く太陽が、大きく偉大過ぎて、彼は自身の信ずる道に迷いが生じていたのだった。その太陽とは、言わずもがなの、あの諸葛亮である。


ところが、今回の道行きでこの二人の男を真近に見て来た彼は、人それぞれに信ずる道は異なる事を知った。否、異なっていて当たり前なのだと、知る所となったのである。そして、自分の信じる道を貫いた先にこそ、目的地は在るのだと、思い知らされたのだった。


『(*´-`)来て良かった…』


そう彼は思っていた。そしてもう、けして迷わないと心に誓っていたのである。


諸葛亮が、彼の迷いを知っていたかどうかは判らない。けれども、彼を今回抜擢したのは、他ならぬ諸葛亮である。


もしかしたら、彼の中に光輝くものを見つけた最初の人物が諸葛亮で在ったかも知れない。果たしてそう断言しても、けして穿(うが)った見方とは言えないのではなかろうか?




趙雲は無事に合流を果たすと、太子様と費禕を解放して、改めて費観に委ねた。


「( ̄^ ̄)…趙広はどうしている?」


「ああ…趙広殿は、将軍の言いつけを守って、離れたあの森の中程に兵を隠し、自身も身を隠しておいでになります…」


「そうか…( ̄^ ̄)判った!では私もこれで行くとしよう。何しろ私は只今、病床に臥せっている身の上だからな…ここいらで身を隠させて貰う事にしよう!」


「(^。^;)難儀な事ですな…しかし普通、病の方は訓練三昧など致しませんがね…でもお陰様で助かりました。個人的にも学ばせて頂きました!」


「それは幸いだったな…( ̄^ ̄)お前もこれからだ、頑張れよ!」


費観は趙雲に拝手した。


「将軍!私も今回、ご一緒出来て本当に感謝しております。有り難う御座いました!お陰様で私も失いかけたものを取り戻せそうな気持ちに成りました…」


永く同行していた費禕は少し寂しげな表情をしている。趙雲は、その両肩に手を置いて優しく語り掛けた。


「費禕よ、( ̄^ ̄)お主は立派な(おとこ)よ!太子様の成長は、お前無しには考えられなかった。初見のお主は自信が少々欠けていた様だったが、この旅でその顔つきが変って来た。その表情から、迷いが無くなっていたのは既に感じていた。お前を抜擢した丞相に感謝する事だな!」


「そ、それではやはり( 。゜Д゜。)…」


「さあな…( ̄^ ̄)私は何も知らぬよ!ふとそう想っただけさ!」


趙雲はそう言うと快活に笑った。


「それに…個人的にも礼を言わねばな!お前に見て貰ったお陰で、我が騎馬隊は戦術行動にも磨きが掛かった。あれは使えるぞ…董允や丞相にお返しするのが返す返すも残念でならないぞ!」


これ以上は無い褒め言葉である。


「有り難う御座いましたo(;д;o)!」


費禕は少しばかり感無量となって、その瞳は潤んでいた。そして拝手しながら、深々と頭を下げた。


趙雲は改めて、喜びを発散させている太子様に頭を下げた。


「太子様、( ̄^ ̄)趙雲これにてお(いとま)致します!何分、目立つ行動は出来ませぬゆえ、しばらく消えて居りますが、帰郷の際は、また参りますので御心配無き様に!」


「( -_・)趙雲、世話になったな!真の忠臣とは貴方の事を言うのだ♪それが今回良く判った。貴方は代えの効かない武将(もののふ)である。私が王と成った暁には、是非貴方にそれを祝って欲しいものだ!そして私に仕えて貰いたいと思っている。私を助けた時から、貴方は私とずっと固い絆で繋がっている。今回それが改めて判ったのだ。有り難う趙雲!また帰郷の時を愉しみにしているよ♪」


「勿体無きお言葉!( ̄^ ̄;)この趙雲、感無量に御座います…」


「(~▽~@)貴方はそれだけの(おとこ)なのだ!」


北斗ちゃんは完全に趙雲の言葉をパクっていた。


「ではこれにて( ̄^ ̄)…」


彼が下がろうとすると、北斗ちゃんは、「趙雲、少し相談がある…」と言って引き止めた。それを見ていた弎坐はズッコケている。


「お~い…(-ω-;)それを先に言わんと…」


仰有る通りなのであるが急に想い出したのだから仕方無い。趙雲は不思議そうな顔をしているが、今の太子様が言う言葉であれば、必ず何かあると想い、「何なりと!」と応えた。


「趙雲、お前も聞いた事があるかも知れないが、前にまだ頭に蜘蛛の巣が張っていた頃、こんな事を丞相から聞いた事があるのだ!」


「何で御座いましょうか?」


「ちと言い出し難いのだが、叔父上が関羽将軍と不仲であるという(まこと)しやかな噂があるのだ!お前さんはそれをどう思うか?」


「太子様の叔父上と申しますと糜竺(びじく)殿、糜芳(びほう)殿ですかね( ̄^ ̄)?」


「糜竺叔父は良い!あの方は誠実な方だからな…」


「となると糜芳殿ですな…フム…しかしながら、あの方は陛下の古参の武将で、尚且つ陛下の姻戚ですからな…」


「だから困っておる。母上(糜婦人)は私を守り、古囲戸に身を投げた御方…糜竺叔父もとても良くしてくれる。だが、糜芳叔父は何かにつけて意趣返しをしなければ、矜持を守れぬ御方なのだ。そこを僕は心配している…」


「成る程…( ̄^ ̄)ハハ~ン♪読めましたぞ!本来ここに居ない筈の私だからこそ自由に動きが取れる…しいては、彼の内偵をして欲しい…そう言う事ですな?」


「Σ(゜Д゜ υ)さすがは趙雲、一を聞いて十を知るとは貴方の事だな!」


(おだ)てには乗りませんぞ!しかしながら難儀な事ですな…お察し申し上げます。そうだな…もしかすると、精鋭に育て上げた我が兵達が、さっそくお役に立つかも知れません!宜しい、訓練の成果を実践で試すのも一興です。喜んでお役に立ちましょう♪」


「宜しく頼む!但し、穏便にな…けれども、仮に問題行動が発覚したとしたら、容赦はするな!」


「まさか、敵と内通しているとか?嫌いなだけで、そこまでしますかね?」


「それがあの方の(ごう)なのだ!」


「判りました。お任せを!慎重に進めます…」


こうして趙雲は静々と、南下して行く。目指すは荊州南郡である。

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