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はぐれ者たち

「(*´꒳`*)~♬♩♫♪」


管邈(かんばく)はご機嫌である。日々の努力を重ねる事がある。その事がこんなにも生活に張りを持たせ、人生に遣り甲斐をもたらすとは想いもしなかった。


恐らくは彼も太子に触発されたひとりなのだ。何より彼は学んだ太子の知識と経験により命を拾ったのだから、その気持ちは依り強かったかも知れない。


始めはその御恩返しにと行動を起こした管邈であったが、結果として華佗先生から医術を教わる内にのめり込んでいた。


何よりも患者さんの笑顔を観ると嬉しい…そんな些細な事が自分自身の喜びにも繋がるのだから、取り組んでいて遣り甲斐を感じない訳が無かった。


彼は本来は士人であり、斬った張った世界とは無縁な筈であった。けれども世の中、どこに落とし穴があるか分からない。


彼の場合は時代もその影響力を発揮した。黄巾の乱である。そして彼は親分肌な性格も高じて結果として任侠の世界に入って行くのである。


殺伐とした人生の中で数多くの人の死に顔を否応無く見つめる事に為った彼にとっては、人の感謝と喜びの表情がこれ程までに生き甲斐を与えてくれるとは想ってもみなかった。


彼は文字通り、命を拾った際に生まれ変わったので在ろう。だとする為らばこれは太子様から与えられた再出発の転機(チャンス)なのだと彼が想ったとしても不思議は無かった。




「ღ(`ー´ )ふぃ~♫」


田穂もご機嫌である。彼は元々山賊を生業としていたから、黄巾の乱は名を上げる転機(チャンス)であった。彼も親分肌であったから、下の者は大事にしてやり、何かにつけては助けてやっていた。


けれども長年の殺伐とした稼業ゆえに倫理感に欠けるところもあった。そんな時に出会ったのが管邈であった。互いに性格がさばさばしているから、妙に気が合って意気投合した。


しかしながら山賊が身に沁みついている田穂と違い、彼には学があり倫理感があった。田穂は事ある毎に人生について教えられた。それは命の尊さから始まった。


一番彼が感銘を受けた言葉は、『一寸の虫にも五分の魂』というもので、これは管邈の口癖でもあった。そして自分の父親の事をとても尊敬している彼の事が、田穂はとても羨ましかった。


彼の父・管寧(かんねい)は、徐州虐殺を指示した曹操を決して許さず、何度も仕官するよう促されながらも屈する事無く、隠者を貫いた。それが彼の自慢であった。


そんな彼が仲間を守るために、その節を曲げて曹操に組する事になった時に、彼は笑みを称えた。


「(*´꒳`*)仲間の命を守れて良かった♪」


彼は一言だけそう告げたのである。けれども田穂だけは彼の心の内が判るだけに、複雑な気持ちになった。恐らく彼は父の意志を曲げた自分を許す事が出来ないのだろうと。


けれども違った。彼はこう言ったのだ。


「(*´꒳`*)この世の中に人の命より大事な者など無い!そしてそれが心の通い合った仲間の命なら尚更だ!私はこれっぽっちも後悔などしていない…」


そして彼は再び笑みを浮かべた。


田穂はこの時に始めて人の命の尊さという事に真険に向き合う様になった。そしてそれは自分の友・管邈の命の瀬戸際で、彼の心に一生忘れ得ぬ重みを与えた。


まだ年端も行かぬ小僧が、懸命に消えかかろうとしている命の火を救おうとしているのだ。


そして全精力を傾向けた結果、気絶する程の執念を目の当たりにした彼は、人一人の命を救う為にはこれだけの覚悟と知識と技術が伴わなければ、為し得ないという事を肌身で感じたのだ。


そして自分の親友が命を長らえた時に、彼の心の中で何かが弾けた。彼が仲間の命を助けるために投降を選んだのは、いみじくも管邈と同じ気持ちから生じたものであったのだ。


彼はその時に友が言った『私はこれっぽっちも後悔などしていない…』その言葉の意味が理解出来たのである。そして友を助けたその小僧が、何と蜀の太子であったのだ。


彼はこれを天命だと受け留めた。そしてこの命の尊さを知る人に、自分の身を捧げようと決めたのである。彼が管邈と違う点は、自分の人生に於いてまだ、他に目標とする事が見当たらない点だった。


士人の出自から始まり、色々な状況に身を置きながら応変にその身を切り換えて来た管邈と、山賊上がりで端っこさと腕っぷしだけで世渡りをして来た田穂との決定的な違いがここにある。


けれども、田穂も管邈の前向きな姿勢や、北斗ちゃんのひたむきな努力、優しい気持ちに触れている間に、自分もひょっとしたら出来る事が見つかるかも知れないと、職務をこなしながらも合間の時間に考えるようになっていた。


これは大きな進歩と言えるだろう。特に周倉将軍と行動を共にした時に、嬉しそうに語っていた言葉が強く印象に残っている。




「ꉂꉂღ(`ー´ )へぇ~周倉殿は鍛冶屋を生業としとるのですか?」


「否、違うな! メლ(* ^ิ౪^ิ)ლ わしの務めはあくまでコイツだ♪」


周倉は(まさかり)を持ち出すと、嬉しそうに振り廻す。


「(* ^ิ౪^ิ)ლ⁾⁾ わしの命は殿のものだ。関羽殿に出会った時に、わしはビビッと心がときめいたのよ♡だからわしは例えこの身が壊れようとも、殿を守るのじゃ♪それがわしの決めた覚悟じゃからのぅ~♪」


彼はそんな恐しい事を平気で宣うが、その反面、真面目な顔をしてこうも話した。


「(ლ^ิ౪^ิ *)ここだけの話しだがのぅ~♪もし仮にじゃ!この戦が終わって、平和な世の中になったら、わしは鍛治屋を終生の仕事にするわっ♫なぁに、剣や槍を造るのだけが鍛冶屋では無い…」


「…わしはどちらかというと、農作をする為の(すき)(くわ)を造る方が好きなのじゃ!それに華佗先生のような偉大な先生に見込まれると、手術用の小刀(メス)なんかも頼まれる…」


「…これは鍛冶屋にとっては名誉な事なのじゃ!何しろ腕に覚えが無いと、そんな注文は来ないからのぅ~♪わしは自分の腕を試したいのよ!困難な挑戦であればある程に心が踊るわい♪…」


「…そしてその結果、世の中の役にも立つ。皆が喜んでくれる♪こんな職は他にあるまい!少なくともわしはそう想っているのよ♪」


将軍はそう言うと、ガッハッハと笑って酒を注いでくれる。田穂は遠慮気味に尋ねてみた。


「(`ー´ ٥)私は山賊上がりで何も他に取り柄がありません…こんな私でもそんな気持ちになれるでしょうか?私も人の役に立つ事がしたいのです!」


周倉将軍は日頃、大袈裟に笑うだけで、決して饒舌な人では無かった。けれどもこの日だけはご機嫌で、自分の夢を話してくれたのだ。


この際、自分の悩みを打ち明けてみようと想った田糖でさえ、然したる答えを期待していた訳ではなかった。


ところが周倉という人も親分肌で、頼られるのが嫌いでは無かったから、意外にも真面目な顔でまじまじと見つめると、助言を与えてくれたのである。少なくとも田穂はそう受け止める事が出来たのだ。


「(ꐦ ^ิ౪^ิ)メლ⁾⁾ 山賊がどうした?わしだって元を正せば山賊なのだ!しかもそんじょそこらの山賊じゃあ無い!一大勢力を誇った山賊の長だったのだ。それでも鍛冶屋を営んでおる…」


「…腕に職を付けたのだって、ーから始めたのだ。まぁわしの場合は単純思考だからな!自分の気に入る(まさかり)を欲しかっただけじゃ♪入口はでも皆、そんな下らん事の方が多い…」


「…それから物造りが好きになって、今に至っておる。要は好きこそ物の上手なれよ!一度切りの人生じゃ、誰に気兼ねする事がある?自分の好きな事を見つけたら、やれば良いのじゃ…」


「…まあ、わしは頭は良くないから、言えるのはそんな所だな!後はお前、自分の事なんだから、自分で考えろや♪ただこれだけは言っておく。どんな選択をしようとも決して諦めるなよ?…」


「…どの道も山あり谷ありさ!楽しい事だけじゃない。苦しみや時には悲しみも付き纏う。まぁうまく言えんが、これぞ正に人生って奴だな…ガッハッハ!」


最後は酔いも手伝って大声で笑い飛ばした周倉であった。但し、田穂にとってはこの夜の出来事が、深く心に刻まれる事になったのだった。


特に『山賊だったのが何だ…』と、開き直りにも想える物言いから、自分を制し地道な夢に突き進む彼の行動力には、頭が下がる想いを感じていた。


そして『(ღ`ー´ )…自分もひたむきに取り組める事を見つけよう♪』という気持ちに駆られる切っ掛けと為ったのである。




田穂はパチリと目を開けた。旅の疲れからか、ぐっすりと寝込んでいたらしい。直前まで見ていた夢の事も一瞬の内に頭に想い浮かんでから、直ぐに消えた。


彼はおもむろに起き上がると、遅い昼食を食べ始めた。こんなまともな食事に有り付くのも久し振りの事である。


彼はとても空腹を覚えていたので、夢中になってガツガツと饅頭にかぶりつく。するとそこにちょうど仕事を終えた管邈が戻って来た。


「田穂♪(*´꒳`*)~♬戻っていたのか?久しいな…元気にしておったか!」


「あぁ…ღ(`ー´ )管邈様♪御無沙汰しておりました!えぇ…相変わらずです!貴方が私を戻して下さったとか?良く居場所が判りましたね?」


「(*´꒳`*)お前は太子様に付いていなかったからな…となると責任感の強いお前の事だ!その身に降り掛かる火の粉を物ともせずに、呉に潜服していると踏んだ訳だ♪」


「⁽⁽(`ー´ ٥)貴方は出会ってから先、何でもお見通しだ!全く敵わないや♪」


「( *´꒳`*)✧ 否、そうでも無いぞ!君も昔とは大きく物の考え方が変わったからね♪私を助けたのも然かり、仲間の為に降伏したのも然かりさ!君も日々成長している…」


「…まぁそのお陰で、私は今も五体満足で生きていられる。君の決断の賜物だよ♪君の持論は元々、"鉄の掟は絶対"だったからね!良くぞ命を優先させたねぇ?」


「⁽⁽ღ(`ー´ ٥)あんたは私にとっては肉親の様な者ですからね♪また再び同じ事が起きようとも、私はあんたの命を優先しますよ♡それが例え情に流された結果だとしてもね♪けど安心して下さい…」


「…今度の主人(あるじ)はそれで良し!と仰有る事でしょう。私にとって人生最良の決断は、貴方の命を救った事と太子様にこの身を委ねた事ですな♪」


田穂は確信を以てそう答えた


「( *´꒳`*)あぁ…そうだな♪」


管邈はいみじくもそう答えるに止めた。互いに相手を想いやる。その心が通じ合っていたからである。その間柄に言葉はいらなかった。




けっきょくその後は一転して最近の情勢につき、田穂が管邈に教えを乞う形と為ったのである。


田穂は音信を断っていた為、魏蜀協定の事も知らなかった。そして若君が河川整備に着手する事を決めた経緯には、驚きを禁じ得なかった。


「Σ(`ー´ ٥)あの方、そんな大それた事を考えてるので?」


「( *´꒳`*)そうだ♪不思議な御方だろう?」


「ꉂꉂღ(`ー´ ٥)否、不思議過ぎでしょ?どうしたらそんな企み…もとい"閃き"が浮かぶのでしょうな?今、戦時だという自覚があるのですかね??」


「ꉂꉂ(*´꒳`* )そうだな!そう想う時点で、私も君も凡人だと言う訳だ♪あの御方が仰有るには、公共の福祉に寄与するのに戦時も、敵味方も関係無いそうだ…」


「…そして面白い事に本国も巻き込んで、官民一体で既に動き始めておる。それにな、これには二つ愉快な噂がある!」


「Σ(`ー´ ٥)へぇ~いったいそれは何です?」


「それがなぁ…ꉂꉂ(*´꒳`* )ひとつはあの曹仁将軍が、太子様と全く同じ事を考えていたらしいのだ!但し、魏の本国は協力的で無く、却下されたらしいのだがね…太子様をとても羨ましく想っておられたとか?」


「⁽⁽ღ(`ー´ ٥)それが普通の反応だと私などは想いますがね!でも貴方は愉しそうだ。どうやらこれは本当の事ですな…で!もう一つの"噂"とは何です?」


「あぁ…ꉂꉂ(*´꒳`* )太子様はその噂の出所に依れば、交州を通り南海まで抜ける運河を造り上げるとか?目的はそれを使った海洋交易にあるという♪全てが大き過ぎて、もはや我々の理解を遥かに上回っておる…」


「…愉しみでもあり、危うささえ感じる今日この頃という訳だ!お前もこれから若君と面会するなら、その辺りの事は心得ておるのが良いぞ♪」


管邈はそう言うと話しを終えた。田穂はそこまで指摘してくれた管邈に、厚く礼を述べた。


『⁽⁽(ღ`ー´ ٥)ん?ひょっとしてあの御方はこの事を既に知っていたのかしらん…だからこそ、この地に興味を持たれた??否、出来過ぎだ!まさかね♪』


田穂は運命の歯車が少しずつ動き始めた気がしていた。そして自分の持ち帰って来た呉の情報がこれからどう活かされるのか、大いに期待を抱かせるその展開に、彼は興奮して止まなかったのである。


『(ღ`ー´ ٥)そろそろ夕刻だな…あの御方が来る頃だ♪この際、管邈様には話しておいた方が良いかも知れんな…』


田穂はそう決意すると、管邈の方を改めて振り返る。そして話し始めたのだ。彼の告白を聞いた管邈は驚きの表情を見せた。ちょうどその頃、その御仁はふらりとその軒先に歩を進めていたのである。




「Σ( ꒪﹃ ꒪)ブワックション!」


「(ꐦ•" ຼ•)太子様、大丈夫ですか?風邪引いたんじゃないでしょうね?医者の不養生なんて洒落にも成りませんぞ♪」


「Σ(˶‾᷄﹃‾᷅˵)ブワックション!ありり…可笑しいなぁ♪体調は(すこぶ)る絶好調な筈なんだが?後、潘濬!都合の良い時だけ僕を医者に見立てるのは止めてくれ!僕は確かに医者でもあるが、お前達の指導者(リーダー)なのだからな♪」


「(ꐦ•" ຼ•)自覚がお有りなら、人前で急に泣き出さないで下さい!子供(ガキ)じゃないんですからね♪」


「( ๑˙﹃˙๑)否、お前…それはこんな可憐(プリティ)な僕を掴まえて!」


「(ꐦ•" ຼ•)だから都合の良い時だけ子供振るのは止めて下さい!ずるいですぞ♪」


「(⁎⁍̴̀﹃⁍̴́⁎)何と言われようが僕は可憐(プリティ)貴公子(ノーブル)なのだ♪」


まさに売り言葉に買い言葉とはこの事である。帰り道の道中くらい静かに過ごせないものかと、劉巴は傍観を決め込んでいる。彼から見ればじゃれ合う程に仲が良い。二人は案外、似た者同士なのかも知れなかった。


『( o'д'o).。oO そんなに判り合えるとは、羨ましい事だ♪』


彼はふとそんな事も感じていたが、けっきょくはこう結論付けた。


『ꉂꉂ(o'д'o )(たで)()う虫も好き好きだ♪愉しそうだから、横槍を入れるのは止めよう♡』


彼はそう決意すると、そのまま傍観を決め込みながら、後に続いた。口は真一文字に結び平静を装ってはいたが、への字に開いた口許からは笑みが(こぼ)れていた。

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