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父の手紙

「ღ(。◝‿◜。٥)若君♪大変で~す☆ミ」


馬良が珍しく慌ててぶっ飛んで来る。北斗ちゃんは久し振りに関羽将軍との対局を愉しんでいた。


最近の彼は毎日の様に鞏志と潘濬、劉巴を集めては河川計画とその着手に向けての計画を練っており、相変わらず繁忙を極めていた。


今日はその合間のひとときと言う訳だ。この時代に日曜日なんて在ったとは想えぬが、人間たまには完全休養も必要なのである。


根を積め過ぎては、より良い"閃き"も降臨する事は無いのだ。ある意味頭を休める事、身体を休める事は意外に大事なのである。


馬良の慌て様に、想わず関羽も手を止めて振り向く。彼は久し振りの対局に勝つ気満々であったが、緊急事態ならばやむを得ないと、遠慮気味に溜め息を洩らした。


「(´°ᗜ°)✧ なぁに?軍師、どうかしたのかい…」


北斗ちゃんは然り気無くパチンと自分の白石を打ち終えると、おもむろに馬良の方を振り返る。すると息急(いきせ)()って馬良は二通の文を差し出した。


「ღ(。◝‿◜。٥)若君…丞相と、もう一通は我が君からで御座います☆彡」


「=͟͟͞͞(꒪ᗜ꒪ ‧̣̥̇)何だってぇ!!」


「Σ(`艸´٥)兄者からだとぉ~!」


確かにそれは二人とも驚くに違いない。丞相からは返書が来るにしても、劉備からここに文が来ると言う事は、太子の居どころが発覚した事を意味している。そりゃあ皆、驚くだろう。冷静沈着な馬良が慌てふためいても当然で在った。


『(๑º ㅿº)…バレた チーン!!』


北斗ちゃんも動揺は隠せない。彼もいずれバレる事は判っていた。頭では判っていたが、さすがにまだしばらくは大丈夫だろうと踏んでいたので、その時が突然訪れた事に頭が真っ白になってしまったのだ。


予め次の一手を打っておいて正解だったかも知れない…まぁこの対局が成立すればの話ではあるのだが…。


「(*`艸´)おぃ!若♪若♪しっかりせい!」


「ღ(。◝‿◜。٥)若君♪そうですよ!まだ悪い知らせかどうか何て判りません。ひとまず中身を確認致しましょう♪」


二人も一蓮托生ではあるのだから、動揺はしているものの、バレるならそろそろかと想っていたので本人よりは落ち着いていた。


関羽は曹仁との交渉の中で、身許がバレた責任を痛感しているので、その辺りから漏れたと誤解している。


そして馬良はさすがに本質を衝いており、『こりゃあ金だな…(。◝‿◜。٥)』と的を絞っていた。河川整備には資金の先行投資がいるので丞相がやむを得ず相談したのだと踏んでいたのだ。


「Σ(,,ºΔº,,*)ハッ!そうだね…そうしよう♪」


彼は想わず二通を見比べる。そして問い掛ける様に二人の顔を交互に見た。二人には彼の動揺が痛い程に伝わっていたから、その考えは手に取る様に理解出来た。


「(*`艸´)若♪若らしく在りませんぞ!どちらでも同じ事です、どうせ両方とも読むんですから…」


こういう時の関羽はさすがに胆が太い。


「ღ(。◝‿◜。٥)若君♪当座の資金の事かも?それで丞相が相談されたのでしょう!だとすると悪いようにはしない筈、何たってやる事やってるんですから大丈夫ですよ♪」


馬良はさすがに叡知の人。結論をまず先に、そしてやんわりと説く。これは同じタイプの太子様には説得力が在るだろう。


北斗ちゃんもそれを聞いて「⁽⁽(•• ๑)あぁ…」てなもんである。直ぐに納得した。


さて…どちらを先に開けるかだが、こうなるとやはり丞相の文を先に開けておきたい。馬良の見込みが正しいなら、それに見合う内容の筈だ。


『(٥ •ᗜ•)南無三(なむさん)…』


北斗ちゃんは丞相の文を開ける。


するとそこには次のような内容が記されていた。


「(˘͈O˘͈*)若君、貴方の方針は本国で承認されました。但し、二つの問題点から、やむを得ず我が君に真実をお話しする事に致しました。御了承下さい…」


「…一つは貴方の命の問題です。魏との交渉で正体がバレた以上、これから貴方の身は危うい。いつの間にか死んでたりすると不味いですからね。今後はより一層、用心為されますように!当面は今まで通りの体制で構いませんが、無茶は為されますな。貴方も隠れ蓑が無くなり、太子としての立場が露出した事を十分に自覚されますように…」


「…二つ目は当座の資金繰りです。河川整備は無論の事、南海まで運河を通すとなると、莫大な先行投資が必要となります。貴方はまだまだ財政的根拠が甘過ぎるようですね?ですがこちらでも知恵を絞り、様々な方策を打ち出し、支援致します…」


「…貴方も周りの若い才能を上手く活用して資金繰りを考えて下さい。近々、私もそちらへ行く予定ですから、その時に詳しくはご相談致しましょう。 ※追伸 我が君の文を同封致します。」


北斗ちゃんは読み終えるなり、少し安堵していた。文面は簡潔ではあるが、その内容は想定内に納っている。彼はフゥ~と大きく吐息を尽くと、一旦顔を上げた。


するといつの間にか、関羽も馬良も心配そうに彼の姿をまじまじと見つめている。


「(`艸´*)おい!どうした?大丈夫なのか??」


「( ๑•▽•)۶ ええ、大丈夫ですよ!やはり馬良殿の読み通りです♪近々、丞相がおいでになるとか?詳しくはその時にと書いてあります!」


「(*`艸´)✧どれ、見せてみろ!」


北斗ちゃんはひとまず関羽将軍に文を渡した。


関羽はすぐに文に目を落とす。そしてブツブツ言いながら読み進める。馬良も関羽の背後に立ち、一緒に目を通していた。


北斗ちゃんはそれを横目に眺めながら、父親の文に目を落とした。


「(◍′◡‵◍)公嗣(こうし)、元気にしておるか?話しは聞いた…」


まさに定番の始まりである。しかもどっかで聞いた様な言い草であった。


「(◍′◡‵◍)やる気になったそうで安心しておる。そもそも私の血が入っておるのだから、阿呆では無いと想ったが、目覚めた後は立派にやっているようだのぅ♪やはり長らく使ってなかったゆえ経年劣化してないのだろうなぁ…ハッハッハ♪」


『( ¯ࡇ¯ ٥)…』


どこぞの坊やが一時期、得意満面と宣わっていた言葉である。正に血は争えないという所で在ろうか?その事を父親の劉備が知っている筈は無いのだから、この親にしてこの子ありと言うべきだろう。北斗ちゃんは、なぜか変な汗が吹き出して来るのを感じていた。


「(◍′◡‵◍)孔明から色々と聞いておるぞ♪へちゃむくれのプニプニ小僧が、どんなに逞しく成長したのか、せいぜい会うのを愉しみにしておるから、頑張ってみろ♡」


今度は心無しか喧嘩腰である。舌鋒宜しく始まっているが、最後は励ましと取れなくも無い。要は息子に初めて書く文だから、小っ恥しいので在ろう。


それにしても、もう少し書き様もあると思うのだが、疎遠に為っていた手前、素直に表現が出来なかったに違いない。


「(◍′◡‵◍)お前、あの曹仁と渡り合ったそうだな!関羽の命も救ってくれたと聞いておる。良くやった♪褒めて取らすぞ!荊州の民の事も救出してくれたのだな…さすがは我が息子じゃ♪」


今度は褒め殺しである。調子に乗って胴上げされた日には、天高く舞い上がった瞬間に、その補助を外され兼ねない。正に良きにつけ悪きにつけて、王足(おうた)る資質を兼ね備えた人と言えるだろう。


北斗ちゃんは、喜び半分、苦笑い半分である。彼としては、もっと素直に褒めてくれた方が嬉しい。何しろ彼は未だ子供に毛の生えた程度の若者なのである。


母親を三度失くし、忙しい父親には殆ど会えない。そんな子供が、良くぞここまでぐれないで素直に成長した者だ。けれども、彼の中には悲しい思い出と共に嬉しい想い出も少なからず在ったのだ。


生みの親・甘夫人は、気丈な女性であったが、優しい人だったと聞いている。彼がお腹の中にいる時に、北斗七星の夢を見た御方である。


そして糜婦人である。彼女にとって阿斗は自分の腹を痛めた子では無かったが、結局彼を庇って井戸に身を投げた。彼女だってどんなにか阿斗と共に生きていたかっただろうか。


二人と死別し、三人目となった孫婦人も、勇ましい中にも優しさの溢れた御方だった。彼に"海の男に成れ"と励してくれたのは彼女である。国同士のいざこざさえ無ければ、今も一緒に居てくれた事だろう。


彼にはこうして、ささやかながらも母親達の愛情の断片が心の中に残っていたからこそ、真っすぐに育って来れたのではなかろうか?


彼は現在の義母である呉婦人とは残念ながら疎遠である。それは彼が、凡庸に迷走していた時期に父親の劉備が貰った後添えだった事が原因と言えるだろう。彼には特段、他意は無かったのである。


因みに呉婦人とは蜀の古参の将軍・呉懿(ごい)の妹さんである。呉懿は益州の太守劉璋の父の代から結び付きが強かった人格者であったから、蜀を平定した劉備にとっては蜀との結びつきを強化する為に必要不可欠だったのでは在るまいか。


父親の駄文を読み進むにつけ、北斗ちゃんは少々辟易して来た。けれども初めて父が自分に対して書いてくれた文である。


ある意味、自分と向き合おうとしてくれた、父親としての初めての試みと読み解く事も出来た。だから彼は子供心に最後まで読みたいと感じたのだろう。


彼は再び文に目を落とす。そしてもう少しの辛抱だと自分を一生懸命励し続けながら、読み続けたのである。


「(◍′◡‵◍)公嗣、よく聞け!私には夢がある。それは国を興し、その国をお前に残してやるという夢だった。だが、お前はそれに応えられない体たらく振りだったのだ。だから一度は諦めた…」


「…しかしながら、今回本当の事を聞いて、心の中では安心したし、嬉しかった。良くぞ立ち直ってくれたと我が心中は喜びで溢れておる。有り難うな♪私は父親としては残念ながら、お前に人並みな事はしてやれなかった…」


「…けれどもその替わりとして、お前に国は残してやれる。そして我が優秀な配下達も、いずれはお前が束ねる事になるのだ。良いか公嗣よ♪良く聞きなさい。お前は今後共、自身が信じられる仲間をどんどん増やしなさい…」


「…そして皆を大事に為さい。そうすれば、必ず皆がお前を助けてくれる。この世の中、戦続きで皆苦しい。どうしても利に聡い輩も居るだろうが、まずはお前が手本となるのだ…」


「…そして堂々と自分が決めた道を突き進むが良いぞ♪今のお前ならば、もう言わなくても判っていようが、良き事はどんな小さな事でも行いなさい。悪しき事はどんな小さな事でもしては成らない…」


「…これを我が劉家の家訓として末長く忘れないでくれれば嬉しい。私はお前を心から愛しておる♡」


そう文は締め括られていた。


北斗ちゃんは想わず感情移入してしまい、目頭が熱くなっていた。そんな彼の事を関羽と馬良は温かく見守っている。


そしてそっと彼の手の甲に二人共、その手を添えて強く握り締めてくれたのである。彼は感動して想わず「(´⸝⸝• •⸝⸝)੭⁾⁾有り難う♪」と言った。


するとその瞬間…三人の目の前で、文の中から一枚の羊皮紙がハラりと落ちる。馬良が機転を効かせてそれを拾い、北斗ちゃんに渡してくれる。


「”(•• ๑)何だこれ?ふむふむ…」


北斗ちゃんは不思議そうな顔で二人を交互に眺めると、羊皮紙を開いて目で文字を追って行く。二人も成り行き上、両袖に立って覗き込む。


「ハッ…‼(º ロ º )何だってぇ~!!」


「(٥`艸´)…」


「…(。◝‿◜。٥)」


そこにはこう書かれていたのである。


「(◍′◡‵◍)この度わしは二つの施策を指示した。ひとつ!"教育"の充実じゃ♪荊州でも若者達が活躍しとるじゃろう!これを本国でも拡充して、見込みのある者を召し抱えて実践する。その責任者は董允と糜竺じゃ…」


「…ふたつ!"健康管理の徹底"じゃ♪これもお前が既に荊州で実践している健康診断(精密検査)や健康相談なのだが、この度本国の者にも受けさせる事にした。我が国にも老齢化の波は押し寄せて来とる…」


「…依って益州一円の人材の身体検査も荊州にて行わせる事とする。それに並行してここ成都からも医師団を学びに行かせる。お前は研修体制と健康診断の実施予定を早急に組み、そちらに到着次第どんどんこなす様に…」


「…忙しければ、責任者を指名してやらせても良いが、齟齬(そご)を来さぬ様に努めてくれたまえ!なぁに、河川工事に多額の先行投資をしてやるんだから、そのくらいはサクサクっと頼むよ…」


「…まずは第一陣として、馬超・黄忠・諸葛亮・魏延をそちらに向かわせるから、宜しく頼む!わしも追々伺うからのぅ…肉親の(よしみ)で痛くない様に頼むね(◍;′◡‵◍)後、これわしのアイデアだからくれぐれも面目を潰さない様に♡」


「( ꒪⌓꒪)ハッ??…」


あの感動的な文末の続きとしては甚だ高圧的である。せっかく感動に浸っていた北斗ちゃんも、一気に現実に引き戻されてしまった。


しかも自分のアイデアだと執拗(しつよう)に強調してはいるが、実際は北斗ちゃんが実践して来た事の完全なパクりである。彼が絶句してもやむを得ない事だろう。


また彼が知らぬ間に、事は急に決まってしまい実際には既に動いている。それが証拠に間もなく第一陣が来ると云うのだ。滅茶苦茶である。


要は組まれた予定に沿って、こちらの予定を早急に組めという事に為るから、誰だって驚くに違いない。


その考えも尊い事なのは判る。確かに老齢化の波を覆す為には、健康管理は重要なのだ。だからその本質が正しい事は彼にも理解出来た。


けれどもその動きが早急過ぎた事でもう時間の猶予も余り無かった。


「(٥`艸´)無茶苦茶ですな…さすが兄者だ!走り出したら止まらないのは、こりゃ遺伝ですな♪」


「( ¯ࡇ¯ ٥)ハハハ…冗談言ってる場合じゃないぞ爺ぃ~こりゃあ急がにゃ為らんにゃ!」


「ღ(。◝‿◜。٥)しかし…どうするんです?若はそんな時間無いでしょうに?」


「( ¯ࡇ¯ ٥)…確かにね。でもこの調子じゃ第一陣が本国を発つのも時間の問題だ!否、もう発っているかも知れんのだ。今さら伝書鳩で文を届けても手遅れだろうなぁ…」


「…それが証拠に丞相の文に近々こちらに伺うと書いてあっただろう?それってこの文の内容と符号するもんね!」


「(*`艸´)確かにそうですな♪」


「(。◝‿◜。٥)えぇ…しかもこうやる気満々だと断り辛いですし、何より遠い道程をわざわざ御歴々の方々が来ますからね?いざ押し掛けられて、"出来ません"とも言えませんからなぁ…」


「( ¯ࡇ¯ ٥)だよなぁ…」


三人はホトホト困ってしまった。しばらくは静寂が流れる。皆、急な事で頭が着いて行かないのである。


けれども、そこは前向きな北斗ちゃんであった。彼は立ち止まる事が問題解決にならない事を、これまでの経験から学んでいた。


やらねば成らない以上準備に入るしか道は無いのだ。この際、父の顔を潰す潰さないなど小事に過ぎない。そんなもの、豚に喰わしてしまえば良いくらいにしか思っていない。


まぁこの時代…果たして豚が居たかどうかには疑問が残るが、猪くらいは居ただろう。要は遠路遥々来る羽目になった、丞相を初めとする御一行の為にはやらねばならなかったのだ。


しかも考えように依っては、確かに健康管理は大事なのだ。このタイミングを逃せば、長らえた命を削る者も出て来よう。


これは蛇足に為るが、実際この時代…蜀の重鎮と言われた人々は向こう一年の間にバタバタと倒れて行く。まさにそう言った意味では、劉備の決断は正しかったと言えるだろう。


今この時を於いてしか覆す事は出来なかったのである。


「(๑•̀ - •́)و✧ ならばやるしか無い!否、やろう♪どうせ河川工事には年月が掛かる。これも人々の為では在るから推し進めねば成らないが、今困っている人の命の方が殊は大事だろう♡」


「(*`艸´)若!よくぞ申された♪その決断は尊いですぞ!」


「(。◝‿◜。*)えぇ…その通りですよ♪やりましょう♡」


「(๑•̀ - •́)و✧ 決まりだな!良し♪早速、先生や弎坐と計画を練る!忙しく為るぞ!」


こうして事は決まった。北斗ちゃんはチラッと最後に碁盤を見つめる。関羽将軍との決着はまた先に成りそうだった。

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