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善きに計らえ

「Σ(,,ºΔº,,*)ハッ?何だって?荊州だと?太子は荊州にいるのか?どういう事だ?いつの間に?関羽を助けているって言ったのか?何で趙雲が感心するのだ!アイツは病に臥していたのでは無かったのか?おい!いったいどうなっているのだ!」


劉備は諸葛亮の有無を謂わせぬ畳み、

掛けに完全に呆気に取られており、何が何だか分からなくなっていた。


『:;((•﹏•๑)));:…正念場だ!』


諸葛亮は自らを奮い起たると、(たかぶ)りをなるべく抑えて、あくまでも落ち着いた口調で言葉を続けた。


「( ˘͈ O ˘͈ ๑)我が君…阿斗様は現在、荊州に居られます。これは太子様の意志です!太子様は長い眠りからお目覚めに為り、その叡知をこの私にお示しに成りました。そして遊びは終わりだ。仕事がしたいと仰せになったのです…」


「…ですからこの私の問い掛けに見事に答えれば、仕事を与えると申しますと、あの方は只答えたのでは無く、この私の身に立って考えを展開し、それは見事に正解を引き当てました。そして自らを鍛え直す為に荊州に行きたいと申されました…」


「ꉂꉂ(,,ºΔº,,*)何?それでそなたが許したのか!」


「( ˘͈ O ˘͈ ๑)左様です…我が君!男同士の約束ですからな♪何より叡知をお示しに成られた太子様のその意欲を私は削ぎたくは無かったのです。それに太子様はこうも申されました。私なぞ誰からも期待されて居らぬし、居ても居なくても変わらぬ…」


「…ならばここ成都に居ようが、荊州に居ようが大した違いは無かろう♪私のこの肥太った身体を鍛え直し、勉学と武術を両立させ尚且つ経験を積む事に繋がるまたと無い機会であるとね!だから私が許可致しました。非は全て私が負うつもりです!」


「ꉂꉂ(,,ºΔº,,*)ちょっと待て!幾ら何でも無茶苦茶だぞ!そんな大事な事を何でこの私に相談せぬ?阿斗は私の子なのだぞ?」


「( ˶ˆ꒳ˆ˵ ٥)陛下…その点につきましては丞相の非では無く、この私の非です!私は大傅ですからな。太子様を教育する立場で御座います!その私が敢えて申し上げるとする成らば、太子様は箸にも棒にも懸からない御方でしたがあの日変わったのです…」


「…私はそれが嬉しく涙を流しました。丞相の問い掛けにも、そう…まるで丞相その者の如く理論を構築し、堂々と説明を展開されました。あれは正に才気が立つと言うべき振る舞いでした。私なんぞは感動して高らかに手を叩く始末でした…」


「…太子様が荊州に行かれると言われた際に、私はお父上にどう説明するのかと身を挺して問い掛けました。すると太子様はにこやかに微笑まれて、こう言われました!案ずるな♪父上も子を地面に叩きつけるよりは旅に出した方が気が楽だろう…」


「…可愛い子には旅をさせよと言うではないか?虎は我が子を千尋の谷に突き落とすとも謂う。私がこの旅で己を律する事が出来れば、父上も喜んで下さるに違いない!だからしばらく黙っていてくれ♪果報(阿呆)は寝て待てと申す!そう言われました…」


董允はそう述べると、跪き頭を垂れた。その肩に丞相と糜竺は優しく手を添えて、擦ってやる。


諸葛亮はチラッと陛下の方を窺うと、劉備は顎に手をやって考え込んでしまっていた。そして諸葛亮が声を掛けようとした刹那、ガタッと突然立ち上がると、跪く董允の傍までおもむろに歩み寄り、ドサッと腰を下ろした。


これにはさすがの三人も驚いてしまい、想わず陛下の表情を見つめる。劉備は胡座(あぐら)を搔いて、その膝に肘を乗せて、手の平は顎に持っていき三人の顔をまじまじと見つめている。


跪く董允の肩に手を掛けている諸葛亮と糜竺はちょうど、片膝を附き中腰の姿勢であり、互いに正面から見つめ合う形と為っていた。


「(;◍′◡‵◍)そうか…阿斗は私が地面に叩き着けたのを知っていたのだな!凡庸で分別を知らぬと想っていたアイツがのぅ。そんな事を…で?阿斗は今どうしておるのだ!大事は無いのだな?元気なのだな?」


劉備は腰を据えた時点で腹は決まっていた様だった。否、腹を決める為に腰を据えて、三人の表情を見極めたのだと言って良い。


それが証拠に董允は勿論の事、諸葛亮の事も決して責めようとはしなかった。彼は自分が漢の再興に邁進する余り、息子は無論の事、家族すらも顧みないで来た事を自覚していた。


そしてその事を息子の残した言葉から感じ取り、自分に彼らを非難する資格があるのだろうかと自問自答していたのである。


その結果として自分の代わりに息子に寄り添い、その言葉の重みを理解してやってくれた彼らにむしろ感謝していたのであった。


おそらくその時に自分が相談を受けていたとしたら、まともに阿斗の言葉を受け止めてやれたかどうか彼には自信が無かった。"一笑に付したかも知れん"…彼はそう考えたのである。


「( ˘͈ O ˘͈ ๑)はい!お元気にされております♡それどころか逞しく成長されております♪詳しくは実際、荊州で行動を共にしていた糜竺殿が同行してくれて居りますから、彼からお聞きになられては如何でしょう?」


「(◍′◡‵◍)おぉ…糜竺!御主は阿斗と一緒だったのか?なぜ早く言わぬ…、否、言えなかったのだろうな!全ては私の不徳の致す所じゃ!御主を責められぬ、言ってくれ♪教えてくれぬか?阿斗はどうして居るのか?」


「( ω-、)陛下…滅相も無い事!御自分を責められてはいけませぬ。陛下の漢室を再興為さろうとする姿勢は尊い物です♪陛下無くして誰がそれをやれましょうか?大事を前にして、家族を顧みる顧みない等は小事と考えられても仕方無き事…」


「…陛下はたった一代でここまで事を成し遂げられました。こんな事は他の誰にも出来ぬ事ですからな…しかしながら、敢えて申し上げますと太子様は違うお考えをお持ちです!家族さえ満足に幸せにしてやれない者が、万民の事を幸せに出来ようか?そう言う気持ちの優しい御方なのです…」


「…太子様は荊州に於いて、民の幸せを第一に考えて施策を練られております!関羽総督を始め、馬良殿、伊籍殿、趙累殿、傅士仁殿、鞏志殿、皆様が太子様を仰ぎ、その命を第一として動いているのは、若君の聡明さとその行動力に感銘を受けているからだと推察致しました…」


「…搔く言うこの私も若君の大局を眺めながら、行動を起こす慎重さと、動き始めたら自ら先頭に立って手本をお示しになるその姿勢に、深く心を打たれました。そして太子様はこの私を助けて下さいました。あんなに手を焼いていた弟の糜芳の翻意を促して下さったのです…」


糜竺はそこまで説明すると嗚咽を洩らした。今度は董允が糜竺を慰める様にその肩に手を置く。諸葛亮は劉備の反応に注視していた。すると劉備は深く息を吸い込むと、溜め息交じりに吐く。


「(;◍′◡‵◍)そうか…糜芳の件を納めてくれたのも阿斗のお陰なのだな♪荊州でも皆が慕ってくれておるとは有難い事だ!あの子は本当に変わったのだな?あの関羽までが我が子に従っておるとは驚いた…」


「…だが阿斗の身はどうするのだ?荊州は魏や呉と接して危うい場所で在ろう!今の所は大事は無い様だが、この先はどうするのだ?大事無いと言い切れるのだろうか?」


「( ˘͈ O ˘͈ ๑)はい!その事については私から申し上げるべきでしょう。何せ荊州に太子様を配置したのはこの私です。その事について申し上げましょう…」


諸葛亮はこれまでの経緯(いきさつ)を説明した。それは一言で済まぬ事柄であった。劉備は相変わらず胡座を搔いて顎に手をやり耳を傾けている。


「(;◍′◡‵◍)ふむふむ…費観と費禕を付けた。何!趙雲もか!!それで奴がふむふむ、何!訓練をつけたのも趙雲か…これは驚いたな♪すると…なっ!仮病だったのか!すると趙雲は元気なのだな?道理で閉門等と謂う小細工まで…」


「…手の込んだ事を!まぁ趙雲が元気で安堵したわ♪それで…ふむふむ、何!ダイエットに成功して見違える姿に為ったというのか?あの阿斗がのぅ…それから?何!兵の士気を高める為に大会をのぅ…それは凄いな♪諜報網を組織して魏や呉の索敵まで…」


「…呉が攻めて来たが撤退した?迎撃体制まで指揮したのか?何と!驚きの連続だな…で?うんうん…何!漢江が溢れて、民を助ける手立てを組んだだとぅ、ふんふん!え?何!そればかりか魏の民も助けたぁ…Σ(,,ºΔº,,*)!!」


諸葛亮の説明に一喜一憂しながらも、だんだんと息子の才気を感じさせる手柄話の数々に嬉しそうに顔を(ほころ)ばせながら聞き入っていた劉備は度胆を抜かれた。


災害時とは言え、魏の民を助けたばかりかあの魏の重鎮・曹仁と堂々と渡り合い、関羽の命を救い、荊州限定の協定まで結んでしまった我が子にぶったまげてしまった。


本来で在れば、勝手に協定を結ぶのはやり過ぎというべきだろうが、正式に協定を結んでしまったのだから、もはや手遅れである。しかも諸葛亮は支持を表明している。


劉備は関羽の命を救った太子の機転に免じて不問に伏す事にした。それに二国が怖れるあの曹仁とにこやかに堂々と渡り合い、貸しを作ったのだ。


しかも援助に見合う返済もさせるというのだから、念が入っている。慎重で迅速な行動力。的確な方針を打ち出し、荊州を守ろうとする太子の想いが伝わって来て、劉備は目頭が熱くなる。


そして皆がそれに従い、同じ方向を向いて自分の本分を全うする為に動き、自立心を養っている。そして新たに付き従う者をその自身の目で見極め、幕下に増やしている。


おそらくではあるが、彼はもはや自分よりもカリスマ性に於いては上を行くのではなかろうか…そしてその利発さからは、近い将来丞相すらも越える存在に成り得る気がしていた。


董允の言う様に、箸にも棒にも懸からない馬鹿息子に憂いていた劉備にとっては、かつて自分が想い画いていた構想が、復活する切っ掛けとなる話であった。


自分が国を興し、息子に後を任せる。そして必ず大義を成す。それは北伐を敢行し漢室を安んじる事であった。劉備が焦っていたのは、自分の代で事を成せなければ、もはや無理だという懸念であった。


それを今、覆せる後継者が育って来たのである。嬉しく無い訳がなかった。


「(◍′◡‵◍)⁾⁾ 判った!良く話してくれた。お前たちの息子に対する忠誠と愛情には感謝したい。私の到らぬ点を親身になって果たしてくれた事には礼を言わねば成らん!有り難う…この通りだ!」


劉備は座したまま上体を折り曲げて、床に手を着く。三人は驚きの余り、恐縮してしまい、直ぐに陛下の身体を起こして差し上げる。劉備は三人の肩を順番に軽くポンポンと叩くと労いを示した。


そしてやおら皆の背を順々に押す様に、机の方に(いざな)った。


「(◍′◡‵◍)⁾⁾ 続きは座りながら聞こう♪丞相!そなたは冒頭にこう申したな♪"良くお聞き下さり、今後の御相談に臨んで下さいます様"…とね?何かこの絡みで相談が在るのだな?だからこそ、今さらながらにこの私に真相を打ち明けた?違うかね♪」


「( ˘͈ O ˘͈ ๑)はい!御明察です♪我が君♡」


諸葛亮はそう答えると、白扇(はくせん)を揺らしながら、最後に席に着いた。ようやく本筋に入る事が出来る。彼はそう想い、安堵の溜め息を漏らした。

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